画像: 著者   :浅井 浩一 出版社  :ダイヤモンド社 出版年月日:2019/12/12

著者   :浅井 浩一
出版社  :ダイヤモンド社
出版年月日:2019/12/12

“職場再建のプロ”が悩めるリーダーに贈る一冊

本書は、“職場再建のプロ”として、1万人を超える組織のリーダーを指導してきた著者が、その経験・体験を一冊に凝縮させた指南書である。

著者の浅井浩一氏は、新卒で入社した日本たばこ産業(JT)で、次々と任された組織を活性化させ、歴代最年少の支店長に抜擢され、31支店中25位より上位の成績をとったことがなく、閉塞感に陥っていた支店を2年連続で日本一に導くことに成功した人物だ。2001年からは、JTの現場でマネジメントを行いながら、公益財団法人日本生産性本部・経営アカデミーなどのビジネススクールで、数多くの企業幹部・管理職・リーダーを指導してきた。現在は、「お互いを信頼し、助け合える組織作り」を信条として掲げながら、リーダーの育成を支援する一般社団法人日本マネジメントケアリスト協会で理事長を務めるほか、日本生産性本部や一般社団法人経営研究所でも講師として活躍している。

本書は、そんな筆者が出会い、指導してきたリーダーたちの“よくある”悩み事を、50件の相談事に集約し、それぞれの解決方法を示すという一問一答形式で全体が構成されている。チーム作りで苦労しているリーダーに向けたFAQ集だと思えば理解は早い。

50の相談事と解決方法のペアは、著者の言う「これからのリーダーがすべき5つのこと」に基づくかたちで5つの章に区分けされ、『部下を見守る(第1章)』『自分を磨く(第2章)』『チームをつくる(第3章)』『結果を出す(第4章)』『組織を変える(第5章)』の順番で展開されている。

こうした章の立て方も、一問一答の記述形式も、とてもシンプルなので読みやすく、通読するのにそれほどの時間はかからない。また、あとから読み返したい情報を探すのも比較的簡単だ。さらに、現場でチームを率いるリーダーであれば、50の相談事のどれかで悩んだ経験がある(あるいま、いまも悩んでいる)はずである。その意味で、組織のリーダーにとって、本書は実用性の高い一冊と言える。

究極のゴールはチームの業績向上

上述した著者の経歴からも分かるとおり、著者は、企業経営のトップとして成功を収めた人ではなく、いわゆる“中間管理職者(ミドルマネジャー)”として数々の実績を上げてきた人である。“職場再建のプロ”としてのスペシャリティも、ミドルマネジャーの悩みを解消することにあり、本書で言うところの“リーダー”も、基本的には、ミドルマネジャーのことを指している。

著者によれば、ミドルマネジャーは、会社から課せられた自分のチームの業績目標を達成することが使命であり、悩みの根本には、その使命から受けるプレッシャーがあるという。ゆえに、ミドルマネジャーが自分の悩みを抜本的に解消するには、チームの業績を向上させることが不可欠であり、それをチームづくりのゴールとすべきであると著者は言い切る。

とはいえ、“業績”を狭義にとらえ、売上目標の達成や収益の向上など、数値上のゴールの達成だけを追求していると、部下が疲弊し、離職者が相次ぐような事態を招きかねない。言うまでもなく、人材難が深刻化しつつある今日においては、そのようなチーム作りは会社に不利益をもたらすものでしかない。したがって、これからのミドルマネジャーが追求すべき業績とは、『部下の離職率を抑え、メンタルを病む人を“ゼロ”にし、なおかつ、目標を継続的に達成し続ける組織をつくる』ということにほかならないと、著者は唱える。

当然のことながら、本書の記述は、全てがこの考え方に基づいている。言い換えれば、部下の離職率を抑え、メンタルを病む人を“ゼロ”にし、なおかつ、目標を継続的に達成し続けるチームを作り上げるための具体的な方法、あるいはアドバイスが、上述した『部下を見守る』『自分を磨く』『チームをつくる』『結果を出す』『組織を変える』というテーマ(章)に分けて示されているというわけだ。その各章において、筆者が読者に伝えたいことは、以下のようなかたちサマライズされている。

  • 部下を見守る(第1章):リーダーは、部下を業績達成のための“道具”としてとらえず、ともに働く“仲間”として尊重し、一人の人間として誠実な関心を持ち、成長を支援しなければならない。
  • 自分を磨く(第2章):部下に頼り、甘えるのではなく、自ら日々の仕事に打ち込み、汗をかき、成長し、努力し続けなければならない。
  • チームをつくる(第3章):部下たちがバラバラに目標を追いかけるのではなく、お互いを信頼し、想いやり、助け合える組織を作り上げなければならない。
  • 結果を出す(第4章):結果につながるプロセスを正しく認識し、それを遂行しなければならない。
  • 組織を変える(第5章):組織に変革の必要性を感じたときには、「うちの会社はどうせダメだ」と諦めるのではなく、知恵を絞り、周囲を巻き込み、自ら変革を働きかけなければならない。

「なぜ(Why)」の追求

繰り返すようだが、本書におけるチームづくりの最終的なゴールは、“目標を継続的に達成し続ける組織”を作り上げることにある。ゆえに、部下に対する理解を深めるにしても、個々人を人間として尊重するにしても、さらには、チーム内での“つながり”を強めるにしても、チームづくりに関する本書のアドバイスは、一貫して、ビジネス上の目標達成というゴールに向けられている。要するに、個々人に対する理解や尊重は、部下に対する単なる迎合を意味するものではなく、また、チームのつながり強化も、“仲良しクラブ”を作るためのものではなく、全ては目標達成に向けたリーダーの取り組みとしてまとめられている。その点で、目標数値に日々追われているミドルマネジャーにとっても、本書の記述は納得感が得やすい内容になっていると言える。

そうした本書において、比較的多く使われている手法が、「なぜ(Why)」の追求である。例えば、業績が一向に上げられないチームを率いることになった場合には、リーダーはまず、なぜ、業績が上げられないのか、業績を上げられない要因がなぜ生まれ、それが排除できないのはなぜなのかを突き詰めていく必要があるという。同様に、業績が一向に上げられない部下がいた場合にも、なぜ、そうなのかの理由をしっかりと見定め、成績を上げるための具体的な道筋を示すことが必要であるとする。

確かに、全てのモノゴトには理由があるので、「なぜ(Why)」を追求していくことは、問題の根本原因を突き止めるための理にかなった方法と言える。また、「なぜ(Why)」の追求によって、これまで必要と考えていた仕事が実は不必要であることに気づいたり、不可能と思い込んでいたことが、実はそうではないことが判明したりする可能性もある。著者は、数多くの職場再建に携わる中で、そうした「なぜ(Why)」の追求の有効性に気づき、チームを立て直したり、成績の芳しくない個人を引き上げたりするための手法の一つとして位置づけているようだ。

さらに、「なぜ(Why)」を明確にすることは、仕事に対する部下の理解を深めたり、モチベーションを高めたりするうえでも有効であるという。例えば、ミドルマネジャーは、チームの数値目標が大きく引き上げられ、それに対する部下たちの不満を真正面から受け止めなければならないことがある。このようなときには、会社がなぜ自分たちの目標を大きく引き上げなければならないのかをしっかりと説明し、自分たちが目標を達成することが、会社にとって、あるいは、自分たちの周囲にいる全ての同僚たちにとって、どれだけ重要なことかを理解してもらう努力が必要であるという。同様に、部下に仕事を割り振る際には、その仕事がなぜ必要なのか、なぜ、その部下に当該の仕事を割り振る必要があるのかを明確に示し、理解を求めることが大切であるとしている。

失敗への不寛容さに立ち向かうすべも紹介

一方、本書を読み進めていくと、指摘されているチームづくりの要点が、米国の成長企業や有力企業が掲げるチームづくりの要点と、さまざまな点で一致していることにも気づくはずである。

例えば、チームのリーダーに継続的な成長や自己研鑽を求めている点はその一つだが、チーム内に相互信頼と協働の文化を醸成したり、失敗を許容する風土を築き上げ、チームメンバーの心理的安全性を確保したりすることの重要性を唱えている点も、著者の考え方は、チームのパフォーマンスが高いとされる米国企業のそれと一致している。

ちなみに、著者によれば、日本の会社組織に蔓延(まんえん)している「失敗を許さない風潮」は、グローバル競争における日本企業の弱さを生んできた元凶であるという。というのも、失敗に対する不寛容さが組織に蔓延していると、ミドルマネジャーの多くが失敗をおそれるようになり、現場での意思決定のスピードが鈍くなるためだ。それが結果として、日本企業のビジネススピードを鈍化させ、グローバル競争でのアクションが、海外企業の後手に回るケースが多く見受けられてきたと、著者は指摘している。

著者が本書で指摘しているとおり、日本企業の間では、ミドルマネジャーに対して、「キミに任せた」と言いながら、そのリーダーにチームを託した責任は誰も背負おうとせず、かつ、失敗の許容範囲を定義したり、失敗時のセーフティネットを張ったりすることなく、全ての責任をミドルマネジャーに背負わせようとする傾向が散見されてきた。これでは、ミドルマネジャーがモノゴトに慎重になるのは、当然と言える。本書では、この問題への具体的な解決法も示されているので、ご興味のある方は、一読されたい。

このほか、本書には、価値観や行動が理解しにくい若い世代の部下とどう付き合うのが正解か、年上の部下を戦力として機能させるにはどうすべきか、頭ごなしに部下を叱りつけることがなぜ無意味なのか、サボり癖のある部下を正すにはどうすべきかなど、ミドルマネジャーとして知っておいたほうがよいと思われるアドバイスが数多く記されている。チームづくりで悩みを抱えているミドルマネジャーはもとより、自分のチームマネジメントは正しいと考えているリーダーも、一度は本書に目を通すことをお勧めしたい。

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