アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのシャイナ・ローゼン(Shaina Rozen)が、AIを「単なる効率化ツール」ではなく「チームのパートナー」として活用することで、チーム全体の価値創出やイノベーションを加速させるためのマインドセットと実践法を解説する。

本稿の要約を10秒で

  • 多くのチームはAIの利用頻度こそ増えているものの、その価値を十分に引き出せていない。その原因は、導入率や認知度ではなく、「マインドセット」にある。
  • AIを「個人の生産性ツール」ではなく「チームで共有するパートナー」として扱うことで、ナレッジの可視化と連携、仕事の調整とアラインメント、より良い意思決定、新たな価値創出といった面でROIを高められる。
  • 次の4つのマインドセットシフトと具体的なアイデアを試し、AIをチームのワークフローに組み込むことで、「個々のタスクを速くこなす」段階から、「チーム全体で質とイノベーションを高める」段階へと進もう。

AIはあらゆる場面で目にするようになったが、その価値はまだはっきりとは見えていない。

MicrosoftのWork Trend Indexレポート*1によると、すでに75%のビジネスパーソンが仕事で生成AIを使っており、その利用率はわずか6ヶ月でほぼ2倍になっている。世界中の5,000人のナレッジワーカーを対象にしたアトラシアンのAIコラボレーションインデックス*2では、AIによって生産性が33%向上し、1日あたり約105分を節約できている、つまり週に「丸1営業日」以上の時間が生み出されているという結果が出ている。

しかし、AIの導入が倍増している一方で、多くの組織はいまだに、全社レベルでAIの投資対効果(ROI)を示す具体的な指標を示すことに苦戦している。

ギャップの正体はマインドセット

「AIを、自分がやりたくない仕事を片付ける道具だと考える人もいる。
一方で、トップパフォーマーは、AIをずっとやりたかった仕事を実現するための手段だと考えている。」ー AIコラボレーションレポート

仕事の質やイノベーションを高めるうえで重要なのは、導入率そのものではなく、AIに対する姿勢である。AIを「一人作業の近道」ではなく「チームで共有する一人のメンバー」として扱っているチームは、次のような傾向が見られる。

  • 基本的な利用者に比べて、AIへの取り組みで2倍の投資対効果(ROI)を得ている
  • 生まれた時間を新しいスキル習得やアイデア創出に再投資する可能性が大幅に高い
  • AIによって「組織全体の業務効率が大きく変わった」と答える割合が1.8倍高い

これは、AIを単なる個人の生産性向上ツールではなく、チームのパートナーとして扱うことの力を示している。AIは、単に自分の仕事を速くするだけではない。チーム全体が、より意味のある、革新的な仕事を一緒に進められるようにしてくれるのだ。

個人の道具ではなく、チームで共有する力へ

AIが個人のプライベートチャットや個々人のワークフローの中だけにとどまっていると、たしかに一人ひとりの仕事は速くなるかもしれない。しかし同時に、仕事全体はより分断され、個々の取り組みが共通のゴールにどうつながっているのかが見えにくくなりがちである。

一方で、AIへの投資からより大きなリターンを得ている組織は、まったく別のことをしている*3。アトラシアンのTeamwork Labの責任者であるMolly Sandsはこう語っている。

「次の価値の波は、AIを使ってナレッジをつなぎ、仕事を調整し、チームの足並みをそろえるところから生まれる。つまり、組織のサイロを橋渡しし、共通のゴールに向けて行動を促していくことにこそ、AIの真価があるのだ。」

これらのチームは、「AIを使う」段階から「AIと組む」段階へと進んでいる。つまり、チームが計画を立て、仕事を調整し、学習していくプロセスの中で、AIにどんな役割を担わせるのかを明確にし、その貢献が、プロンプトを入力した本人だけでなく、チーム全員から見えるようにするということである。

AIと「チームメイト」になるための4つのヒント:
マインドセットと使い方を変える始めの一歩

アトラシアンの調査と日々の業務からわかっているのは、最高の成果を出している人たちは、AIを「共通の仕事の中に組み込まれた、専門家チームのような助言者」として扱い、「より大きな価値を生み出すこと」に焦点を当てているということだ。

ここで紹介する4つのヒントを試しながら、「AIをチームメイトとしてどう考え、どう一緒に働くか」という発想とやり方を変え始めてほしい。

シフト1:単発のプロンプトから、継続的な対話とコラボレーションへ

▶︎丸投げではなく、対話で磨く。追加の質問を重ね、AIの答えにツッコミを入れよう。自分の思考を研ぎ澄ますために使いこなし、「考えること」を手放さないことが大切である。

AIを単なる「道具」と見なしている人は、とりあえず質問を投げて、出てきた結果をざっと読み、たとえ求めていたものと違っていてもそのまま先へ進んでしまう。一方、AIを「思考のパートナー」として扱う人は、AIとのあいだでやり取りを重ね、情報を補足しながら結果を洗練させていく。

それは、最初の回答をそのまま受け入れるのではなく、追い質問や追加プロンプトを重ねるといったシンプルなやり方でもよいし、目標や想定読者、条件などの大量の情報を渡し、「文章」だけでなく自分の「考え方」そのものを一緒に整理してもらうといった複雑な使い方でもよい。

いずれにしても、履歴や背景、文脈を積み重ね、共同作業の度合いを高めていくことで、AIは「一度きりの道具」を超え、「これまでの試行錯誤を覚えていて、細部を踏まえたうえで、より的確な答えを返してくれるチームメイト」のように振る舞うようになるのである。

すぐに試せるプロンプト例:

1.

最初のプロンプト:「このドキュメントにまとめた私たちのチームの戦略を要約したメールを書いてください。[リンク]」
次のプロンプト:「今度は、そのメールを、30秒で要点と重要な詳細だけを把握したい経営層向けに書き直してください。」

2.

最初のプロンプト:「この提案に異論を唱えてください。見落としているリスクは何ですか?」
次のプロンプト:「そのリスクに対応するために、どんな次のアクションを勧めますか?」

3.

最初のプロンプト:「あなたは新しいキャンペーンのアイデアをブレストするプロダクトマーケターです。ターゲットは[ターゲット]、このキャンペーンの目標は[目標]です。これが直近で実施したターゲット調査です:[リンク]。過去に成果を上げたキャンペーン例もいくつか挙げます:[リンク][リンク][リンク]。今考えているアイデアは[アイデア]です。ここまでの情報をもとに、このアイデアを評価し、他に有効そうなアイデアを3つ提案してください。始める前に、必要な確認事項があれば質問してください。」
次のプロンプト:「あなたの質問と提案を踏まえて、私の元のアイデアと、あなたが挙げた上位2つのアイデアを、それぞれより明確で具体的に、かつ互いに差別化できるようにブラッシュアップしてください。そのうえで、それぞれのコンセプトを素早く検証する方法を1〜2案ずつ提案してください。」

さらに深く知りたい方へ:

より質が高く、役立つAIの回答を引き出すプロンプトの書き方*4を学んでみよう。

シフト2:速さ優先から、認識の共有へ

▶︎AIは、作業を速くこなすためだけでなく、「見える化」と認識のズレ解消、より良い意思決定のために使う。

AIの価値を語るとき、多くの議論はまず「スピード」に集中しがちである。どれだけ時間を削減できるか。どれだけ多くの作業を自動化できるか。どれだけ会議を減らせるか。

こうした問いかけ自体はもっともだが、AI活用の可能性のごく一部にしか触れていない。アトラシアンの調査*5によると、AIの主な成果を「個人の生産性向上」に置いている組織は、イノベーション面で大きな成果を得られる確率が16%低いことがわかった。スピードだけでは、より良いアイデアは生まれない。ときには「やり直しのスピード」だけが上がってしまうこともあるのだ。

チームとしてのAI活用をもう一段引き上げるには、次のような点の改善にAIを使うとよい。

  • 目標の明確さ:進行中の仕事を戦略上の優先事項にひも付けて可視化し、どの戦略にもきちんと結びついていないプロジェクトにフラグを立てる
  • 「誰が・何を・なぜやっているか」の見える化:複数のツールに散らばった情報を1つの共有ビューにまとめる
  • 意思決定の質:意思決定の前に、選択肢ごとのトレードオフやリスク、代替案を見える化し、チーム全体で検討できるようにする

すぐに試せるプロンプト例:

目標の明確さ:
「自分のチームのJiraエピックのうち、どの会社OKRにも紐づいていないものを教えてください。」

誰が・何を・なぜやっているかの見える化:
「Jiraボード、Confluenceのプロジェクトドキュメント、最近のステータス更新を横断的にスキャンして、チーム間の依存関係を洗い出してください。関係するチーム、関連する作業へのリンク、なぜ依存しているのか、依存が調整されない場合のリスクやブロッカーもリストアップしてください。」

意思決定の質:
「次に優先すべき機能を決める必要があります。前提情報は以下の通りです:[プロダクトの目標、ターゲットユーザー、成功指標、タイムライン、技術的制約、収益や戦略上のコミットメントなど]。この情報をもとに、検討すべき上位3〜5案とその理由を教えてください。また、間違っているかもしれない前提や、意思決定前に追加で考慮すべきデータ・インプットも指摘してください。」

シフト3:導入のためのトレーニングから、変革のためのイネーブルメントへ

▶︎トレーニングは出発点にすぎない。そこから先は、チームの働き方そのものにAIを組み込むための「仕組み」「習慣」「役割」をデザインしていくことが重要になる。

多くの組織は、まず「AIツールの使い方トレーニング」からAI活用を始める。トレーニングを実施し、AIリソースセンターを立ち上げ、ログイン数やプロンプト数を追いかける——こうした取り組み自体は不可欠だが、「AI活用で本当に動かしたい指標」を確実に改善してくれるとは限らない。

実際に行動が変わるのは、「一度きりの研修」ではなく、現場の仕事の流れの中で、チャンピオンやチームがAIを試行錯誤し続けるときである。日々のプロジェクトやコラボレーションの場にAIを持ち込み、「どう使えばもっと価値が出るか」を一緒に探っていくことで、ようやく本当の変化が生まれてくる。

AIを「変革」のために使えるようにしていくには、アプローチもまったく変わってくる。ここで重心を置くべきなのは、スキルだけではなく、「仕組み」「習慣」「役割」である。私たちの調査では、AI投資のリターンが最も大きい企業は、次のような取り組みを行っていることがわかった。

  • 会社全体でつながったナレッジベースを構築する
  • AIを活用したコーディネーション(調整)の仕組みを整える
  • AIをチームの一員として組み込む

これには時間も労力もリソースも必要だが、その分インパクトも大きい。「ボタンの押し方を教えて時短させる」だけでなく、こうした方法を通じて、人とAIがどう協働すればより良い成果を生み出せるのか ー そのコラボレーションの仕方を学べるようになるのである。

3つの実践アイデア:

チームでAI作業合意*6を作る
 なぜ・いつ・どのようにAIを使うのかを話し合い、合意を文書化することで、AIをチームのワークフローの中にある「信頼できる前提条件」として組み込んでいく。

マネージャーにAI活用を率先してもらう
 リーダーがAIの使い方を実際に見せることで、メンバーが戦略的なAIコラボレーターになる確率が3倍*7に高まることがわかっている。まずは1つユースケースや習慣を決め、「この場では必ずAIを使ってみる」とコミットしてみよう。
 例:「今後4週間、毎週のスタンドアップを録画し、AIに要約ページの自動作成、アクションアイテムのタスク化、他チームに影響しそうな会話や決定のフラグ付けを任せてみる。」

AIワークショップ*8やAIイノベーションデー*9を開催する
 チームでまとまった時間を取り、AIを使って時間を節約し、ナレッジを構築し、そして何より新しい価値を生み出す方法の基本を学べる場を作る。

シフト4:「AIが何とかしてくれる」から、「AIで働き方そのものが変わる」へ

▶︎AIを「万能薬」にせず、根本的な課題そのものに向き合う。

AIは、壊れたプロセスやシステム、チームの関係性そのものを修復してくれるわけではありませんが、今あるものをそのまま増幅します。

目標があいまいなままなら、AIは間違った方向性のバリエーションを増やすだけかもしれません。
ナレッジが分散していれば、AIは誤った情報を提示したり、本当に必要なデータを見つけられないこともあります。
信頼が不足していれば、人はアイデアや学びを共有すること自体をためらってしまいます。

Gartner*10は、生成AIが「日常的なやり取りの副産物を、構造化されたナレッジ資産へと変換できる」と指摘しています。これは非常に強力ですが、そのためにはチームがやり取りをきちんと共有し、AIが提示した内容に基づいて行動する意思が必要です。

だからこそ、AIをうまく活用しているチームは、明確なドキュメントや意思決定ログに投資し、ツールやチームをまたいで仕事を見える化し、健全な懐疑心を持つことを大切にしています。AIを「強力なファーストドラフト」として活用しつつも、「最終決定者」とは見なさず、どこが課題なのか、どう改善するかについても率直な議論を続けています。

AIをパートナーとして活用することで、チームは優先事項や衝突、フィードバックをより早く集めて理解できるだけでなく、その先に進むための賢い道筋を描くことができるのです。

このシフトを始めるための3つのステップ:

  1. フィードバックに耳を傾けて実際に反映すること、弱さや失敗もオープンに共有すること、成功だけでなく学びも称賛すること、チームの代弁者となること、犯人探しを避けること、大胆な目標を掲げることなどを通じて、信頼と心理的安全性を育む*11
  2. AIを使って行った仕事をチームに見える形で共有する。たとえば、AIが生成した要約やアイデア、ユースケース、コツなどをチームと共有する。
  3. AIのROIを測るための簡易アセスメント*12を実施し、その価値を証明して予算やリソースを確保し、取り組みの勢いを継続させる。

チームでAIに挑むとき

これからの働き方は、「人間 vs. AI」ではなく、「人間 with AI」だ。AIを「ただのツール」から「チームメイト」として扱うようになってはじめて、私たちは自分たちだけでは見つけられなかったものを見つけ、理解し、判断し、つくり出せるようになる。

AIがそばにいることで、私たちはもっと鋭い問いを立て、より大胆(ただし計算された)な賭けに出て、より大きな価値をより早く届けられるようになるだろう。こうしたシフトをやり遂げたチームは、単に「今の仕事についていく」だけではなく、「これからの仕事がどうあるべきか」を形づくっていく存在になる。

This article is a sponsored article by
''.