アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのジュヌヴィエーヴ・マイケルズ(Genevieve Michaels)が、仕事の生産性を低下させる「フリクション(摩擦)」について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 米国スタンフォード大学のハギー・ラオ(Huggy Rao)教授によれば、私たちの生産性を低下させる大きな要因として、仕事への集中ややる気を妨げる「摩擦(フリクション)」があるという。
  • 悪性のフリクションを生む要因は、職場のさまざまな場所に潜んでおり、それによって生産性を妨げられる人は多い。
  • ここでは、ラオ教授の共著書「The Friction Project」などを参考に、悪性のフリクションを引き起こす7つの要因と対処法を示す。

大事な仕事への集中を妨げる「フリクション」

行うべきことが山ほどあるのに、仕事が一向にはかどらない。あるいは、仕事に没入できる「フロー状態」にあるときとは対照的に、ストレスホルモン「コルチゾール」の血中濃度が急上昇しているのを感じながら仕事と向き合っている。そして、1日の終わりには、すっかり消耗した気分になる。

このような感覚に襲われる理由は、あなたが「怠(なま)け者」であったり、仕事への「不適合者」であったりするからではない。米国スタンフォード大学のハギー・ラオ(Huggy Rao)教授の論に従っていえば、このような状態に陥るのは、間違った何かが、あなたの時間と注意を過剰に搾取しているためかもしれない。ラオ教授は、このように仕事への集中、あるいは意欲を阻害し、人間の生産性や充実感を損なわせるものを「フリクション」と呼んでいる。

ラオ教授は、ロバート・I・サットン氏(Robert I. Sutton)氏との共著「The Friction Project」(英語)の中で、この種のフリクションがどこから来るのか、それがどのように私たちの仕事の足を引っ張るのか、さらには、それにどう対抗すれば良いのかについて記している。

フリクションの基礎知識

ラオ教授によれば、上述したような悪性のフリクション(以下、悪性フリクション)は、仕事中の私たちに不要なプレッシャーを与え、ときに激怒させ、活力を失わせるという。またそれは、私たちが好奇心旺盛で物事に寛容なプロフェッショナルになることを阻むものでもあるようだ。

こうした悪性フリクションの典型例の1つは「メールの簡単なやり取りで済んだはずの無駄な会議」である。

ただし、無駄な会議のように、存在にすぐに気づける悪性フリクションは稀だ。悪性フリクションを生む要因は「(人の)話し方」から「使用するソフトウェア」に至るまで、職場のさまざまな場所に潜んでいる。ゆえに、悪性フリクションの犠牲者は多い。

私がインタビューした、ある女性はこう言っていました。『自分はとるに足らない仕事ばかりをしていて、それが大きな負担になっているんです。残業をしていないにもかかわらず、仕事を終えて自宅に戻るころにはもうクタクタ。家族のためには『紙くず同然の私』しか残っていないんです』と。とても印象的でした。(ラオ教授)

一方、フリクションがプラスに作用することもあるらしい。というのも、仕事に集中してペースを上げ過ぎると、仕事の品質が低下してしまうからだ。つまり、適度なフリクションは、仕事のペースにブレーキをかけ、それが結果的により良い成果へとつながる可能性があるのである。

悪性フリクションを引き起こす7つの要因

これは意外なことかもしれないが、悪性フリクションを引き起こす物事の多くは、私たちの生活を楽にするために存在する。ただし、それがときとして仕事の生産性にマイナスの影響を及ぼす悪性フリクションを生むのである。

以下、「The Friction Project」やラオ教授の話を参考にしながら、悪性フリクションを引き起こす7つの要因と対処法を紹介しよう。

要因①上司に対する過度の気遣い

ビジネスパーソンの多くは、自分の上司から頼りにされたいと願っている。ゆえに、上司から見て「頑張り屋で、自己啓発的な人物であらねばならない」という重圧を常に感じている。上司の一言一句に敏感に反応し、すぐに行動に移したくなるのはそのためだ。

ラオ教授は、この種の重圧を「エグゼクティブ マグニフィケーション(エグゼクティブ拡大像)」と呼び、それが私たちのリソース(時間や気力、体力)の多くを無駄に消費させる(悪性フリクションの)元凶であると指摘している。

エグゼクティブ マグニフィケーション: 従業員が上司の指示を過度に追求したり、明確な確認なしに上司が特定のことを望んでいると拡大解釈したりすることを指す。

「The Friction Project」では、エグゼクティブ マグニフィケーションが引き起こした悪性フリクションの実例として、某大手コンビニエンスストア(コンビニ)チェーンの例が紹介されている。

同コンビニチェーンのCEOはある日、社内会議の場で「先日、うちの店に立ち寄ったら、自分に対して無礼な態度をとった店員がいたよ」と発言した。それをきっかけに同社では、レジ係の応対を改善すべく、数百万ドルをかけた大規模なキャンペーンを始動させたという。

実のところ、CEOの発言は会議における単なる「ガス抜き」に過ぎず、彼は「(コンビニにおいては)店員の過剰な礼儀正しさよりも迅速なサービスのほうが重要である」と考えていた。また、同社による消費者調査も、CEOの考え方の正しさを裏づける結果となった。しかし、ときはすでに遅く、CEOの発言に性急に対応するかたちでスタートしたキャンペーンは、多額の資金を含む多くのリソースを無駄に消費することになったのである。

【対処法】

この悪性フリクションを回避する方法はシンプルだ。それは、上司の発言や指示を正確に理解したうえで行動を起こすことである。逆にそれを行わないと、早合点による間違った行動に多くの時間を費やすリスクが高まる。

また、エグゼクティブ マグニフィケーションは、日常的なワークフローを歪めてしまうこともある。例えば、就業時間外における上司からのチャットメッセージにあわてて返信しようとする人は多い。ただしそれは、エグゼクティブ マグニフィケーションに起因した行動だ。就業時間外に送られてきた上司からのメッセージに対し、即座に返答する必要は本来的にはない。

とはいえ、上司があえて就業時間外にメッセージを送ってくるからには、緊急性の高い事案である可能性もある。ゆえに、メッセージをまったく無視するのも気が引けるだろう。仮にそうならば、上司に電話などで連絡をとり、どういったタイミングで返事が欲しいかを尋ねてみるのも良策といえる。

要因②意思決定に対する2重、3重、4重のチェック

企業の経営者やミドルマネージャーの多くは、ビジネス現場で働くチームの意思決定を幾度も評価し直そうとする。この習性をラオ教授は「意思決定健忘症(ディシジョン アムネシア)」と呼んでいる。

意思決定健忘症:他者が熟慮と入念な検討をもとに下した意思決定に対して、再度の検討を求めたり、覆そうとしたりする病的な習性

意思決定健忘症による行動は、自分たちの時間とエネルギーを浪費するだけでなく、組織の上層部に対する現場からの信頼を損ない、上層部と現場との人間関係も悪化させる。なぜそうなるかといえば、現場が懸命になって下した意思決定に幾度もやり直しを求めることは、上層部が現場を信頼していないことの証明であり、それを示された現場の士気や上層部への信頼は自ずと下がっていくからだ。

意思決定健忘症に起因した悪性フリクションは、現場のチーム内でも起こりうる。ゆえに、チームが最終的な決断を下して前進することに常に苦労しているようであれば、相互信頼の文化をチーム内に醸成することに力を注ぐべきである。

【対処法】

「意思決定健忘症に打ち勝つための有効な一手は、決定を再検討する際のルールを設定することです」とラオ教授は指摘する。そのルールとは、例えば「チームが一度決断を下した場合には、あらかじめ定めておいた条件を満たさない限り2カ月間は再検討を行わない」といったものだ。

また、「The Friction Project」では、意思決定健忘症への対処法として米国ネットフリックスの元CTO(Chief TalentOfficer:最高人材責任者)、パティ・マッコード(Patty McCord)氏の戦術が紹介されている。その戦術とは、幹部会議を終えるたびに「今日、ここで何らかの最終決定を下しましたか。仮にそうならば、それを社内にどう伝えますか」と参加者全員に尋ねることだ。こうすることで、会議に参加した幹部の全員が、会議での結論を最終的な決定と認識し、再検討を避けるようになるという。

This article is a sponsored article by
''.