博報堂生活総合研究所の調査で、「世代や年齢による意識や価値観、嗜好の違いが年々小さくなりつつある」ことが分かってきた。こうした「消齢化」現象が進むことで、世代を超えた共感共創社会の必要性はますます加速していくに違いない。この流れをいち早く上手に捕まえることは、あらゆる企業にとって大きな追い風につながるだろう。消齢化時代のチームづくりやリーダーのあり方について、アトラシアン日本法人のエバンジェリスト、野崎馨一郎と、「トップ5%社員」の行動を分析した著書シリーズで知られるクロスリバー代表取締役社長の越川慎司氏が考察する。

株式会社クロスリバー
代表取締役社長
越川 慎司 氏

国内外通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年マイクロソフトに入社。PowerPointやExcel, Microsoft Teamsなどを担当する業務執行役員に就任。2017年に株式会社クロスリバーを設立し、世界各地に分散したメンバー全員が週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。働き方デザイナーとして民間企業や公的団体のアドバイザーを務める。世界的ベストセラー『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』はじめ著書多数。最新刊は『仕事は初速が9割』(クロスメディア・パブリッシング)

アトラシアン株式会社
エバンジェリスト
野崎 馨一郎

米系通信事業者やIT企業でPM、プロダクト マーケティング、アジア14カ国担当エバンジェリスト、異文化D&Iチームのグローバル共同議長を経験。LinkedIn ジャパンによるLinkedIn「クリエイター・オブ・ザ・イヤー 2021」に選出。日経新聞社「日経ビジネススクール オンデマンド」講師。アトラシアンの「あらゆるチームの可能性を解き放つ」ミッション実現のため、広くメッセージと考え方を啓発する役割を担う。

消齢化時代のチームづくりに必要なのは共感力

野崎:変化に強い柔軟な組織づくりには、現場の自律性が重要です。それには組織がフラットな構造であることが大前提となります。構造変革の突破口となりそうなのが、最近話題の「消齢化」現象です。今日はこの消齢化という現象を起点に、これからの働き方やチームづくりについて考察していきたいと思います。まずは、越川さんのお仕事についてご紹介いただけますか。

越川氏(以下、敬称略):2017年にクロスリバーを設立し、国内外延べ815社17万人の方々の行動変革を支援してきました。私たち自身も新しい働き方を実践するため、全メンバーが完全リモートワークで週休3日、そして副業を持つというルールを徹底しています。我々が試行錯誤して得た知見をもとに、お客様と一緒によりよい働き方を模索しながら、「事業成長」と「働きがい向上」の両立を目指しています。

野崎:7年も前から先進的な取り組みを通じてノウハウを貯められているんですね。国内外のお客様を支援される中で、越川さんは多くの日本企業がベースとしている階層型で集団主義な組織と、欧米の企業に浸透している個人主義のどちらの組織がいいと思いますか。

越川:組織には個人主義も階層型も両方必要だと私は考えています。組織が果たすべき役割は、「規律」と「創造」の2つ。仕事の97%が共同作業で成り立つので、組織において「遅刻しない」とか「会議に出る」といった規律は重要です。でも新しいものを創造する局面では、自分で考えて動く個人主義や分散型自律組織が力を発揮します。日本は規律においては優秀だけど創造は学んできませんでしたし、欧米はその逆といえるでしょう。

野崎:お互いに得意不得意があり、学ぶべきところも多いということですね。

越川:ダーウィンの言う通り、結局生き残れるのは「変化に対応できるもの」だけです。だから私たちは規律と創造の間を行き来しながら変化し続けなければいけません。その点、明治維新や戦後の歴史を大きく変えてきた日本人は、実は変化にとても強い国民だと思っています。

野崎:その変化の1つに、消齢化現象があります。かつての「Z世代は○○」「氷河期世代は××だ」といった世代論は、もはや通用しなくなっている。これは氷河期世代の僕自身も痛感しているところです。この消齢化によって、チームや組織の構造も変わっていくのでしょうか。

越川:多様な世代で組織を構成するという構造自体は変わりませんが、役割が大きく異なってくると思います。かつては業務遂行能力の高い40~50代が必死に働き、20代は仕事を覚えること、30代はリーダーを目指すことが仕事でした。でも生産年齢人口が減った今は、60代を含めた全世代が活躍しなければ会社が回りません。

野崎:つまり、世代や年代、性別を超えてメンバーを巻き込むチーム力が必要になってくると。

越川:おっしゃる通りです。昔は若い人の言うことを聴かなくて良かったかもしれませんが、今はどの世代とも共感し合わなければいけない。共感を生み出すのは、相手への興味関心です。消齢化が進む中でのチームづくりには、世代を超えた共通項を見つけていく作業が必要となります。共通点が2つ以上ある相手とは、心理的安全性が高まりやすいというデータもあります。

野崎:共通点はどうやって探っていけばいいのでしょう。

越川:最も効果的なのは、相手との共通点を見つけるコミュニケーション術である「雑談」です。雑談の定番トピックスには、天気とニュース、家族、飲食の4つですが、おすすめは飲食です。年代性別を超えて誰もがやっていることですし、話題も広がりやすい。消齢化時代のリーダーに求められるのは、会議より会話を増やして、感情を共有すること。こうした共感コミュニケーションをとれるチームは、強くなります。

野崎:状況の変化に対して柔軟かつ素早く対応できる、いわゆる「アジャイル」なチームを実現するには共感力が求められるということですね。

越川:最近ではチームの枠を超えて、より大きな単位で協力し合うことが重要になっています。18の企業にご協力いただいて、社内のイノベーションがどこで起きたか、突出した営業利益を上げたのはどこかを調査したところ、2012年には営業部門に50人を配置して50億円を売り上げるといったように、1つの部門の人数を増やすことでイノベーションが起きていました。それが2019年ごろから1つの部門だけではお客様の複雑な課題を解決するのが難しくなり、他部門を巻き込まないとイノベーションを起こせなくなりました。例えば、営業のプロジェクトに総務や人事部、さらには海外在住の社員がいるなど、多様性に富んだアジャイルなアベンジャーズチームを作ることでイノベーションが発生します。その後、さらに社内だけでは無理となり、社外のパートナーを巻き込んでいこうと変わってきています。自分の部門だけで処理する、他部門と協力し合う、社外のパートナーと組む、と共創(Co-Creation)のフェーズが変わっていくなかで共感力がますます重要となります。

リーダーが抱える3つの課題。鍵は2方向への巻き込み

野崎:「チームの教科書」の読者にはチームリーダー的役割の方も多いのですが、今の中間管理職やリーダーが抱える課題について、越川さんはどのようにお考えでしょうか。

越川:815社の中間管理職2万4000人へのアンケート調査で、3つの課題が浮かび上がりました。1つは、労働時間の問題です。2019年の改正労基法により、一般社員の労働時間は14%減ったものの、中間管理職は逆に17%も増えているのです。

野崎:部下の仕事を上司が肩代わりした結果、そうなってしまったのでしょうね。

越川:そうなんです。だから今一番忙しいのが、中間管理職の方たちです。もはや一般社員の7割は、管理職になりたくないと回答しています。そこで生じるのが、2つ目の後継者問題です。そして3つ目が、プレイングマネージャーの職責評価課題。日本では97%の管理職が、日中はプレイヤーとして働き、夜間土日はマネージャーとして役割を果たしています。にもかかわらず、プレイヤーとしての成果が評価されていません。

野崎:役割や仕事量が増えたうえに後継者もいないから、中間管理職はますます疲弊していく。こうした問題とはどう向き合っていけばいいのでしょうか。

越川:実はこの環境下でも、成果を出し続けているチームはあります。815社を調べると12%ほどの組織です。彼らを分析してみると、2方向の巻き込みをしていることが分かりました。部下と幹部への働きかけです。部下に対しては、「学び方改革」を徹底する。無駄な会議やメールを排除し、生み出された時間を学習の時間にあてているのです。すると学んだ若手は成果を上げ、リーダーになる後進も育っていきます。

野崎:スキルアップを目指す若手には、働き方改革よりも学び方改革のほうが有効だというのはうなずけます。もう一方の、幹部に対してはどのような働きかけがありますか。

越川:上への巻き込みには、行動実験が効果的です。例えば、会議のやり方を変えてみるのもその1つ。60分の会議を45分に短縮したり、参加人数を7人以下にしたりするといった小さな実験を繰り返し、成果の出たものを報告するのです。そうすると上の意識も変わり、会議改革も実現します。

野崎:60分の会議が45分になれば、時間を25%削減できますね。時間を再配分することで、働き方や学び方にも余裕が生まれる。そこが評価されてくると、中間管理職も報われるかもしれません。

越川:人事や経営陣が評価制度の見直しをすることで、救われる中間管理職は多いでしょう。もっと言えば、経営陣にはお金と決定権を現場に渡してほしいと考えています。中間管理職に自由と責任を持たせないと、現場は動けないからです。我々の調査では、成功する企業の8割が、経営会議では「撤退条件」だけを決め、あとは現場に任せています。

野崎:Goは現場に委ね、経営陣はNo goだけを決める。これは覚悟のいる挑戦ですね。

越川:はい。ですが挑戦と考えずに、まずはできる範囲で実験してみることです。働き方にしてもIT導入にしても、一気に変えるのではなく、行動実験を積み重ねていくことが大事。試してみてよかったら続ける、ダメだったらやめればいいのです。実験には成功も失敗もないのだから、臆せずどんどんやってみるべきです。

「伝える」を「伝わる」に変えるコミュニケーションを

野崎:無駄な会議やメールを廃止するという行動実験は、コミュニケーションの手法を変えることで実現できそうです。アトラシアンには、それをサポートするConfluenceというコラボレーションツールがあります。様々なプロジェクトやアイデアに関する情報をオープンにすることで、すべての部門やチームメンバーがナレッジを共有し、コミュニケーションの生産性を上げていくというものです。

越川:御社でもやっぱり社内会議は少ないですか。

野崎:そうですね。グローバル企業なので、時差を調整して会議をするより、Confluence上で非同期コミュニケーションをとることが多いですね。そうした使い方を意識したテンプレートも用意されており、お客様にも非常に好評です。

越川:なるほど。私たちのお客様にも御社の製品を活用されている方は多くいらっしゃいます。でも、こうしたITツールを導入しても、社員への定着浸透がむずかしいというお声も多く聞きます。それは多くの組織でメリットが伝わっていないし、見えていないからでしょう。コミュニケーションで大切なのは、「伝える」ではなく「伝わる」、「見える化」ではなく「見せる化」、さらに言えば「魅せる化」だと考えています。

野崎:ただ可視化して分かりやすく説明するだけじゃダメで、相手がきちんとそれを見て、真意や価値が伝わったかまで見届ける必要があるということですね。

越川:まさしく、そうです。コミュニケーションの本質的なゴールは、相手の感情を動かし、行動を変えることにあります。その際、主役となるのはあくまでも相手です。自分が主役だと「伝える」になりますが、相手の側に立てば「伝わる」が正解。そういう相手主体のコミュニケーションやITツールこそが、最終的にはチーム全体を活性化させていくのだと思います。

野崎:「伝える」を「伝わる」に変えるテクニックはありますか。

越川:3つあります。1つ目は、「伝達に感情を乗せる」こと。自分が本気で思っていないと、伝達だけでは相手に伝わりません。2つ目は、「理解を納得に変える」。これには数字が有効です。「優秀なリーダー」よりも「トップ5%の優秀なリーダー」のほうが説得力は増しますよね。そして3つ目が、「相手の行動をデザインする」です。

野崎:相手をどう動かしたいのかを決めてから話す、ということですか。

越川:その通りです。私は「事後行動デザイン」と呼んでいますが、これをせずに説明を始める人が多い。例えば、商談のあとに「ぜひ検討してください」と言っても相手は動きませんよね。でも、「来週の金曜日までにご決断ください」だったら、どうでしょう。

野崎:「検討」だと相手は考えるだけでOKですが、「決断」を迫られたら、YesかNoかを答えなければならなくなる。たとえNoでも、回答がもらえれば次の行動に移れるわけだから、やはり明確なアクションを求めるのは大事ですね。

越川:優秀なリーダーほど感情豊かに数字で喋るし、相手を動かす術も知っています。それは決してむずかしいことではありません。我々の調査でも、この3つのテクニックを駆使することで、「伝える」から「伝わる」に変わったと答えた中間管理職は61%いました。「伝える」を「伝わる」に、「見える化」を「見せる化」「魅せる化」にすることは、お客様に対しても社内に向けてもすごく重要なことだと考えます。

優秀なリーダーは部下に弱みを見せていく

野崎:アジャイルに欠かせない要素として「見せる化」があります。まずタスクを可視化してから分解・整理し、オープンに共有し合うことでチームの生産性を高めていく。もともとは開発部門やエンジニア向けの手法とされていますが、今の中間管理職やチームが抱えている課題を解決するうえでも、参考になる部分は多いと考えています。

越川:問題はどう採り入れていくかですね。中間管理職がやるべき仕事は、大きく2つ。過去を管理するマネージャーと、チームを未来に導くリーダーの役割です。かつては週報を作るといった過去管理だけやっていれば合格だったのですが、今は自分たちで新しいイノベーションを起こし、成果を出し続けなければなりません。それに合わせて、部下の指導方法も変わっています。

以前は性悪説で何かあったらマイナスという評価方法でしたが、現場でイノベーションを起こすためにはプラスにする働きを評価する形に変えなければいけません。そのためにはまず、いいところを誉めることが重要です。次に、これをやればもっといいという「もっとポイント」を伝えます。最初に誉めることで相手も聞く姿勢になり、これまでのようなダメ出しではないので、部下のモチベーションも向上します。そうした性善説の指導が可能な形に現場へ権限が委譲されているか、このジレンマに苦しんでいる中間管理職は多いと思います。

野崎:アジャイルの世界でいうと、過去の管理は「レトロスペクティブ(ふりかえり)」、未来への導きは「NSM(North Star Metric:北極星指標)」に置き換えられますね。

越川:まさに共通していると思います。未来に向けて新しいことを始めるために、リーダーはまず「やめること」を決める必要があります。それを決めるのに有効なのが、「ふりかえり」です。ふりかえれば、無駄が見えてくるからです。トップ5%の優秀なリーダーは、1週間のうち15分をふりかえりにあて、無駄な作業を13%減らしています。そうして生み出された時間を、未来のための仕事にあてていく。この再配置を行えるリーダーこそが、チームを未来へ導いていくのです。

野崎:未来の時間を捻出するという点では、ふりかえりにつながる過去の管理も重要な仕事ですね。ポイントは、その時間をうまく再配置できるかどうか。ここが今のリーダーに大きく求められているところだと思います。

越川:はい。また、優秀なリーダーは時間だけでなく、人材の再配置にも長けています。メンバーを適材適所に配置するためには、それぞれの強みと弱みを知る必要がありますよね。それを引き出すために、自ら進んで弱みを見せていくのがトップ5%リーダーの特徴なのです。リーダーが腹を割って話すからこそ、メンバーも安心して弱みを明らかにしてくれる。これを「返報性の原理」といいます。

野崎:ある意味、弱みの見せる化ですね。メンバー全員の強み弱みを把握して、それぞれに得意な仕事を割り振れば最大パフォーマンスを発揮でき、チームの目標達成率も上がりそうです。

越川:さらに弱みが分かれば育成方針も見えてくるので、チームにとってもこれは重要な仕事です。ただ、性悪説のマネジメントだと弱みはマイナス評価につながってしまうため、なかなか引き出すことができない。組織をアジャイルにしていくには、この性悪説から性善説へのシフトチェンジが必要となってくるでしょう。

野崎:性悪説から性善説へ、そして「やめることを決める」や「弱みを見せる」など、リーダーにとっては勇気のいることばかりですが、やってみる価値は大いにありそうですね。

越川:39企業の約4000人に、この「弱みを見せる」実験をしたところ、97%のリーダーが「意外とよかった」と回答しています。だから意識を変える前にまずは行動を起こし、その結果に自分で気づくことが大切。やってみてよかったら、意識も変わります。こうした行動実験をたくさん積み重ね、よかったものをたくさん蓄えておけば、チームの成長にもつながります。この記事を読まれているみなさんには、今回ご紹介したアクションのうち、どれか1つでもいいので、ぜひ実験していただきたいですね。

野崎:私もさっそく試してみたいと思います。今日はありがとうございました。

画像: 優秀なリーダーは部下に弱みを見せていく

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