アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。Teamwork Lab責任者のモリー・サンズ(Molly Sands, PhD)が、AIをめぐる不安や混乱を乗り越え、チームでAI活用の合意事項を共創することで、自信と明確さを育みながら、協働的かつ責任あるAI導入を進めるための実践的なステップを説く。
本稿の要約を10秒で
- AIは不安の源泉でありつつ、チームの働き方を変える力を持つ。
- 混乱や個人プレーから抜け出す鍵は、チームで合意事項を共創すること。
- 合意事項の共創プロセスを通じて、チームのAI活用への自信と明確さを育てることができる。
「とにかくAIを使ってみて!」
いまの職場ではよく聞く指示である。しかし、それはあなたのチームにとって本当は何を意味しているのか。実際のところ、どう「やればいい」のか。
すべてのメンバーが、AIに対して同じだけの安心感や経験値を持っているわけではない。積極的に試したい早期導入派もいれば、まだ基本を学んでいる途中の人や、「自分の仕事にどんな影響が出るのか」と不安を感じている人もいる。
チーム全員でAI活用の合意事項*1を作ることで、スキルギャップに先回りして向き合い、AIをどう使うかについて共通のルールを定め、誰もが取り残されず、自信を持ってAIを活用できるようにすることができる。
Teamwork Labは最近、チームが責任ある効果的なAI活用のための、明確で実行可能なガイドラインを共創できるようにするためのワーキング実験を行った。これにより、メンバー全員が貢献し、学び、成長できるようにすることを目指した。
- 参加者の82%が、このAI活用の合意事項によって、AIを活用して仕事を前進させる方法についてチームの認識がそろったと回答した。
- 参加者の75%が、このエクササイズを通じて新たなAIのユースケースを学んだと回答した。
チームが、目標や認識合わせのないまま新しいテクノロジーを導入するのは、ぐらついた土台の上に家を建てるようなものだ。しっかりとしたチームの合意があれば、あなたのチームは大きく成長するための強固な基盤を手に入れることができる。
なぜチームにAI活用の合意事項が必要なのか
従来型のチームの合意*2は、効果的なチームワークの鍵として実証されてきた。これらの土台となる合意は、チームがどのようにコラボレーションするのかについて、明確に文書化されたトーンを設定する役割を果たす。多くのリサーチが、チームの合意には次のような効果があることを繰り返し示している。
- 会議の回数を減らし、より目的のはっきりしたミーティングを実現する
- 明確なコミュニケーションを促進する
- チームのパフォーマンスを向上させる
- コンフリクト(対立)の解消を改善する
- 心理的安全性を高める
この重要なツールを作るのに必要なのは、わずか約60分である。それだけで、あなたのチームとその将来の成功に向けた、自信・明確さ・一体感を育むことができる。
この実験から見えてきたこと
このTeamwork Labの実験から、いくつかの重要な示唆が見えてきた。
- 認識合わせはゲームチェンジャーである: 参加者の82%が、AI活用に関するチームの認識が、合意事項を共創したことでそろったと回答した。
- 対話が生まれると、新しいアイデアも生まれる: 参加チームの75%が、このエクササイズを通じて少なくとも1つの新しいAIのユースケースを発見した。オープンな対話によって、眠っていた可能性が引き出されることの証左である。
- 明確さが自信を生む: 期待値やAI活用の境界線が明確になることで、チームはAIに対する不安が和らぎ、より自信を持てるようになったと報告した。
- 「万能の正解」は存在しない: 各チームのAIに対する出発点はそれぞれ異なる。最も効果的だったのは、チームごとのニーズやワークフロー、AIへの慣れ具合に合わせてカスタマイズされた合意事項であった。
- チームの合意は「生きたドキュメント」である: 定期的な見直しとアップデートを続けるとコミットしたチームほど、AI活用の進捗と関与度合いが長期的に高まった。
AI活用の合意事項を構成する要素
チームがAIツールを一貫して効果的に使うことは、しばしば難しい。AI不安*3は、まさに現実のものだ。AIをどう使うのが最善なのかについて躊躇や戸惑いを感じているメンバーにとって、明確さの欠如は、恐怖や忌避感へと変わりかねない。
この課題に向き合うため、Teamwork Labは「AI活用の合意事項」エクササイズを作成し、チームが責任ある、インパクトの大きい、そして足並みのそろったAI活用について認識を合わせられるようにした。
実験の主な要素:
- 準備: ファシリテーターが、簡単な事前アンケートを通じて文脈と期待値を設定した。
- 共同ワークショップ: チームはAIの機会とリスクを議論し、現在および将来のユースケースを特定し、責任ある効果的なAI活用のための基準を共創した。
- 合意事項の作成: チームは、自分たちの合意を文書化し、責任ある利用、データプライバシー、ワークフローへの統合、継続的な学習といった観点を盛り込んだ。
- フォローアップ: チームは合意内容を共有して可視化し、定期的な見直しとアップデートを行うことを約束した。また、実験後アンケートにも回答した。
こうした土台となる要素がそろっていれば、どのチームでも、ランチ休憩と同じくらいの時間でAI活用の合意事項を共創することができる。
ステップ1:準備
今こそチームとしてどんな価値と目的を目指すのかを、ここでいったんはっきりさせるときである。チームのために少なくとも1時間を確保し、カレンダー招待にその目的を簡潔に記載する。
ステップ2:場を整える
AI活用の合意事項を作るうえで、ここは最も重要なステップと言ってよい。チームと一緒に手を動かし、探求し、実験してみるための場だと考える。
このステップでは、情報を集め、お互いの躊躇や不安を言葉にし、AIがあなたのチームにもたらしうる可能性についてブレインストーミングを始めることになる。
安全でオープンなコラボレーションのためのガイドライン
- 耳を傾ける: 先入観を持たずに人の話を聞く。
- 促す: 創造的な思考と建設的なフィードバックを歓迎する。
- 共有する: 自分が心地よいと感じる範囲で構わないので、経験を共有する。誰の経験も等しく価値がある。
- 正直である: 起こりうる課題やリスク、チャンスについて率直に話す。
- 集中する: 責任追及ではなく、改善に焦点を当てる。
- 忘れない: 私たちのゴールは、AIを責任あるかたちで、協力しながら、チーム全員のために機能させることである。
短いディスカッションから始める
チームに、仕事でAIを使うことのチャンスとリスクの両方についてオープンに話してもらうことで、心理的安全性を高める。
- AIが具体的にどのような場面で役に立てるか、実例を共有する。
- チームが既にAIを使っている(あるいは使いたいと思っている)方法をリストアップする。
- こうして出てきた内容をもとに、AI活用の合意事項を実際のニーズに即したものに調整する。
ステップ3:AI活用の合意事項を作る
ここまでで、チームはAIのユースケース候補をたっぷり洗い出しているはずである。このステップでは、「どのように」使うのかという具体的な部分を形にしていく。
次のような問いかけを使って、チームの議論を導く。
- 責任ある利用の基準をどこに置くのか。(例:AIの出力は必ず人が確認する/機密データは決して入力しない/判断に迷う結果は必ず共有して確認する)
- ワークフローのどこで、どのようにAIを使うのか。(例:ブレインストーミング、ドキュメント作成、リサーチ、ミーティングの要約など)
- 学びをどのように共有するのか。(例:定期的なふりかえり、Tipsの共有、合意事項のアップデートなど)
ステップ4:文書化し、コミットする
このステップは、チームで出した学びや意見をひとつの共有ドキュメントにまとめるための「後片付け」の段階である。
- チームの決定事項をConfluenceページやSlack投稿に要約してまとめる。
- すぐ参照できるように、ピン留めやブックマークをしておく。
- ツールやニーズの変化に合わせて合意事項を見直し、更新するためのリマインダーを四半期ごとに設定する。
こうして準備が整えば、チームはAI活用に向けて認識がそろい、主体的かつ協力的に、AI導入を成功に導くことができる。
ステップ5:自分たちのチームに合わせてカスタマイズする
AIがチームとともに進化していくなかで、合意事項にも調整や改善が必ず発生する。これは望ましいことである。
AI活用の合意事項は「生きたドキュメント」として扱う。手入れされたつる植物のように、継続的な実験と改善を通じて、より大きなインパクトを持つように育てていく。
- 非同期でコラボレーションする: テンプレートをチームに共有し、短時間の同期セッションの前に、非同期でインプットを集める。
- 小さく始める: まずは1つのプロジェクトチームでこのプレイを試し、その後、より大きなチームへと広げていく。
- マネージャーレビューをスケジュールする: マネージャーは四半期ごとの定期レビューを設定し、自ら合意事項に沿った行動を示しつつ、チームのチャネルで合意事項を見える状態に保つ。
- 常に見える・最新の状態に保つ: 合意事項は四半期ごと(または必要に応じて)見直して更新し、SlackやConfluenceでピン留めして、チーム全員がすぐアクセスできるようにする。
AI活用の合意事項:自信と明確さを共に育む
AIは、単なる新しいツール群ではない。チームとしての新しい協働のかたちだ。
本当のマジックが起こるのは、チームが「混乱」から「明確さ」へ、個々のバラバラな実験から、共有された合意へと進んだときである。チームでAI活用の合意事項を共創することは、単に時代に追いつくためではない。チームがどうやって成果を出し、成長していくか、そのあり方を自ら形づくる行為である。
アトラシアンは、最高のソリューションは「共に学び、共に成長するチーム」から生まれると信じている。Teamwork Labは、そのための実験と適応、そして次の時代のためのプレイブックづくりを支援する場である。
出典・参考文書
*1: AI作業合意
*2: 作業合意
*3: Kene Anoliefo on turning AI anxiety into AI fluency

