アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのケリ・マリア・コルダッキ(Kelli María Korducki)が、人間とAIの協働に関する最新のインサイトと、それをチームで活かすための実践法をひもとく。
本稿の要約を10秒で
- AIは「個人の時短ツール」より「チームの調整役」として使うと効果が大きい
- 実務のワークフローやコラボ基盤にAIを組み込み、コンテキストを貯めることが重要
- 個人の知見をドキュメント化し、チーム全体の「共有記憶」に変える仕組みづくりが鍵
- ステータス共有や引き継ぎなど、足並みを揃える場面でAIを活用するとROIが高まる
2026年の主役は「チームの一員として働くAIエージェント」
企業は今、コラボレーションを強化することこそが、AIの投資対効果を最大化するカギだと理解しつつある。
全体像:企業向けAIツールは「チームワーク重視」へと舵を切った
米国だけを見ても、生成AIは、PCや商用インターネットといった、これまで同様に世の中を大きく変えてきた技術と比べても、平均的な18〜64歳の生活に入り込むスピードがきわめて速い*1ことがわかっている。しかし、こうしたAIへの熱狂的な受け入れは、必ずしも意味のあるビジネス成果には結び付いていない。アトラシアンによる調査*2によれば、AIの投資対効果(ROI)を実感していると答えた企業は、わずか4%にすぎない。
この結果は、同じ結論に至った最近の他の調査とも合致している。つまり、個々のAIユーザーは「AIツールのおかげで自分の生産性は上がっている」と感じている一方で、その雇用主である企業側では、組織全体の変革にはつながっていないと見ているのである。
AIのメリットを最大限に引き出している4%の企業は、他とは違うことをしている。個々人の生産性向上がそのまま企業全体の成果に結び付くことを期待するのではなく、AIの活用の軸足をチームワークの促進へと移しているのだ。個人が持つナレッジを組織全体の記憶へと変換するワークフローを構築し、AIがチーム間の仕事を調整できる仕組みを整え、AIを「ただのツール」ではなく能動的に協働する存在として位置づけている。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)が発表した新たなレポート*3も、アトラシアンの知見を裏付けている。このレポートは、エンタープライズAIツールの導入において、「セミオートノマスなコラボレーション(半自律的な協働)」こそが転換点であり、本当の価値創出の出発点であると指摘している。
AIを最大限に活かすカギ:企業向けAIツールを「協働を促す存在」として扱う
個々人の生産性ではなく、AIによる調整機能の強化に焦点を当てている企業は、自社の業務効率がAIによって大きく変革されたと答える割合がほぼ2倍に達している。最大の成果が得られるのは、AIを、組織がナレッジを共有し、意思決定の戦略を立て、共通の目標に足並みを揃えるプロセスそのものに組み込んだときである。言い換えれば、AIがチームの中核メンバーとして機能するときにこそ、真価を発揮するのだ。
ワークフローに溶け込むAI
企業の業務インフラとしてのAIは、すでに本格稼働の時代に入っている。
全体像:AIツールからAIシステムへのシフト
新たに「AIをチームメイトとみなす」パラダイムのもとで、企業向けのAIエージェントは、単なるスタンドアロンのアシスタントから、すでにチームが使っているプラットフォームやワークフローに組み込まれた統合システムへと進化しつつある。これにより、仕事が進行するあいだ、AIがチーム間をまたいでコンテキストを引き継げるようになり、これまでAIの成果を平凡なものにとどめてきた元凶としてMITの研究者が指摘している*6、データのサイロ化や学習機会の空白といった問題を是正できるようになっている。
アトラシアンのRovoも、まさにこのアプローチの最前線に立っている。プロジェクトトラッカーやリポジトリ、サードパーティ製アプリからデータを引き出すだけでなく、高度な検索やチャット機能、そして各チームが日頃使っているツールの中でチームに代わって動くカスタマイズ可能なエージェントまで提供しているのだ。こうした動きに、いま他社もようやく追いつき始めている。
AIを最大限に活かすポイント:日々のワークフローの中核となるコラボレーション基盤に組み込むことが、最も大きな成果につながる
組織が本当に変革を遂げられるのは、AIがチームの仕事の進め方そのもの(プロセスやパイプライン)に組み込まれたときだけだ。
チームで試したいこと
- 既存の主要システムに優先的にAIを組み込む。プロジェクトトラッキング、チームコミュニケーション、レビューのワークフローなど、実際に仕事が行われているシステムにAIを統合し、個別のプロンプトや手入力に頼るのではなく、日々の実務から継続的にコンテキストを取り込めるようにする。
- コンテキストが自動的に蓄積されるワークフローを設計する。プロジェクト、議論、意思決定が常にリンクされ、更新され、責任の所在が明確になるようにし、AIがチームをまたいだ動きを追いかけやすく、毎回ゼロから状況把握をしなくてもコンテキストを引き継いでいけるようにする。
- AIはスピードアップだけでなく「調整役」にも使う。ステータスレビュー、チーム間の受け渡し、優先順位付け、フォローアップなど、足並みを揃える場面にAIを投入する。これにより、重複作業を減らし、依存関係を洗い出すと同時に、共通の目標を明確にする*7ことにもつなげられる。
出典・参考文書
*1: The State of Generative AI Adoption in 2025
*2: AIコラボレーションインデックス
*3: The AI Adoption Puzzle: Why Usage Is Up But Impact Is Not
*4: All brains on deck: 10 best practices for knowledge-sharing
*5: How to make work visible and improve alignment (with or without AI)
*6: State of AI in Business
*7: Clarity is key: how to align your team on their goals

