アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのケリー・マリア・コルダッキー(Kelli María Korducki)が、AIを有効活用するためのアイデアを紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 米国マサチューセッツ工科大学のリサーチにより、生成AIへの過度の依存は人間の思考力を鈍らせることが証明された。
  • 生成AIに人間にしかできない創造的な仕事を任せ切ることは難しく、また、そうすべきではない。
  • 昨今話題のAIエージェントも人間による統率・管理が必要とされ、その作業を支援するシステムが多くのIT企業から提供され始めている。

「ChatGPT」は人間の思考力を鈍らせるのか?

ビジネスの現場では「ChatGPT」に代表される生成AIツールの使用が日常化しつつある。そんななか、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)における最近のリサーチ(参考文書(英語))によって「原稿の作成において生成AIツールに過度に依存すると、私たちの思考力に悪影響が及ぼされる」との可能性が指摘された。果たして、生成AIのツールは本当に人間の思考を鈍らせるのだろうか。

「創造的作業のアウトソーシング」と「認知的負債」

上記のリサーチにおいて、MITの研究者らはリサーチに参加した学生54人に4ヶ月間にわたってエッセイを書かせ、それぞれの脳活動をモニタリングした。その際、54人の学生たちは以下の3つのグループに分けられた。
①エッセイの執筆にChatGPTを使用する
②エッセイの執筆にインターネット検索を使用する
③エッセイの執筆に何のツールも使用しない

これら3つのグループにおける脳活動の違いは顕著だった。それは次のとおりである。
・グループ「①」の学生たちは、グループ「③」の学生たちよりも脳活動が大きく低下していた。
・グループ「②」の学生たちの脳活動は、グループ「①」と「②」の中間的な位置にあった。

これらの結果が示すパターンは明快だ。ChatGPT、つまりは、生成AIツールによる支援を受ければ受けるほど、脳活動が低下するということだ。これを言い換えれば、執筆というタスクをこなすうえで生成AIへの依存度を増せば増すほど、タスクに対する脳の関与度が低くなるのである。

しかも、同リサーチによると、この影響は持続的でもあったという。MITでは、4カ月間にわたる最初の実験のさらに4ヶ月後に、グループ①の学生たち(ChatGPTを使用してエッセイを執筆した人たち)を集めて彼らの脳の働きを点検した。その結果、彼らの記憶を呼び起こす能力や脳活動がリサーチ以前に比べて明らかに弱まっていたという。また、彼らに対し、ChatGPTを使わずに自力でエッセイを執筆させたところ、そのタスクにそれぞれの脳は適切に関与できず「まるで自分で深く考える方法を忘れたかのように機能した」という。MITの研究者らは、この現象を「AIへの創造的作業のアウトソーシングによる『認知的債務』の増大」と表現している。

MITのリサーチから得られる教訓

MITのリサーチ結果は、あくまでもエッセイの執筆というタスクを学生らに行わせた結果である。この結果が、他の状況にも同様に当てはまるかどうかはわからず、それを判断するにはさらなる研究が必要とされるだろう。とはいえ、MITのリサーチ結果は、生成AIの活用を巡り、私たちが認識してきたことと一致している。それは、AIはチーム力を強化するツールとしてはきわめて効果的だが、人間の代替として、人間にしか創造できないアイデアは想起できず、かつ、そのためのツールとして使ってはならないというものだ。

この点に関して、米国ペンシルバニア大学ウォートン校のイーサン・モリック(Ethan Mollick)教授は、AIを複雑な学習を支援するためのツールとして活用する際には、それをチューター(指導員)として扱うべきと主張している。同教授はX(旧Twitter)におけるポスト(参考文書(英語))の中で、「AIをチューターとして使わずに仕事で使っていると、学習効果は低下します」と述べている。

AIエージェントも人による管理が必須

昨今では、生成AI技術を用いたエージェントにも注目が集まっている。

エージェント型のAI(以下、AIエージェント)は、一般的な生成AIツールのように、人からの指示にもとづいて行動し、結果を返すものではない。自律性をもった判断のもとで複雑なタスクをこなすことを可能としている。ちなみに、アトラシアンでは、新入社員の研修プロセスをスピードアップさせる仕組み(参考文書(英語))としてAIエージェントを使用している。

AIエージェントは、人間の代わりに面倒な仕事をこなしてくれる優れたアシスタントといえる。ただし、それらに最高のパフォーマンスを発揮させるうえでは、人間の場合と同じように人による管理や指導が必須となる。

続々と登場するAIエージェントの管理システム

エージェント型AIは、自律性をもって動けるとはいえ、それに対するIT業界の認識は「完全自律型のアシスタント」ではなく、人間による管理の必要な「デジタルワークフォースのメンバー」(参考文書(英語))へと変化し始めている。

実際、ここ最近になって、複数のIT企業から、エージェント型AIに対する管理やエージェント同士の適切なコミュニケーション、コラボレーションを容易にする 「AIエージェント管理システム」が発表されている。例えば「ServiceNow AI Control Tower」(参考文書(英語))や「Workday Agent System of Record」(参考文書(英語))、Google の「Agent2Agent Protocol」(参考文書(英語))、「Microsoft Copilot Studio」(参考文書(英語))、さらには「Atlassian Rovo」(参考文書(英語)) などがそうである。これらの仕組みを活用することで、企業で働くチームのリーダーやメンバーは、AIエージェント間の調整を行ったり、エージェントの行動を管理したりすることが簡単になる。

結論:エージェント管理のソリューションは普及する

米国スタンフォード大学名誉教授であるヨアフ・ショハム(Yoav Shoham)氏によれば、今日におけるAIエージェントのベースである大規模言語モデル(LLM)は強力な技術ではあるものの、100%正しいアウトプットや行動は期待できないという(参考文書(英語))。そのため、AIエージェントと外部のツールや他のAIエージェントとを連携させ、多段の処理を実行する場合には、ミスが発生しやすくなる。こうしたことから、ジョハム教授は、複数のAIエージェントを連携させて処理の信頼性や有用性、セキュリティを担保するうえでは、LLMを統一し、語彙や文脈の共通化を必要があるとしている。

また、これと同様の見解を示すAIの専門家は多い。したがって、そうした環境を実現するAtlassian Rovo のようなプラットフォームが、これからますます必要とされる可能性は大きいといえる。

なお、Atlassian Rovoは、エージェント機能のみならず、検索、チャット、制作などの機能を包括的に提供するAIソリューションだ。

Rovoについてさらに詳しく知りたい方はこちら

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