アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が、組織で働くプロフェッショナルとして「能力開発目標」をどう活用すれば良いかについて解説する。

本稿の要約を10秒で

  • ここでいう「能力開発目標」とは、プロフェッショナルのキャリアに何らかの利益をもたらしたり、キャリアアップを実現したりするために設定する目標を指す。
  • 能力開発目標の設定は、プロフェッショナルとしての自分の仕事に行き詰まりを感じた際に、状況を打破するための有効な手だてとなりうる。
  • 本稿では、能力開発目標を適切に設定するためのTIPSと目標設定の例を紹介する。

「能力開発目標」とは何か、なぜ重要なのか

ある調査によれば、組織で働くプロフェッショナルの実に10人に9人が、仕事に行き詰まりを感じているという(参考文書(英語))。これにはさまざまな要因が考えられるが、この問題を解決する有効な手だての1つは、プロフェッショナルとしての「能力開発目標」を設定することだ。

ここでいう能力開発目標とは、プロフェッショナルとしてのキャリアに何らかの利益をもたらしたり、キャリアアップを実現したりするために設定する目標を意味している。

仕事上の目標というとすぐに「昇進」を思い浮かべるかもしれない。ただしそれは能力開発目標の一部でしかない。プロフェッショナルとしての能力開発目標には、次のようなものが含まれる。

  • キャリアアップや自身の成長に焦点を当てた将来展望
  • スキルと知識の向上
  • 自分の欲する知識、スキルを持つ人たちとのネットワークの構築
  • 仕事における生産性と効率性の向上
  • プライベートライフのさらなる充実
  • 幸福感の向上

上では個人が設定する目標に焦点を絞っているが、自分のチームのマネージャーや同僚たちと協力しながら、人材開発計画(参考文書(英語))の一部として能力開発目標を設定することもできる。

アトラシアンにおける分散ワークのアプローチ 「Team Anywhere」 のシニアプログラムマネージャーを務めるリッチ・ハーレイ(Rich Hurley/(参考文書(英語))は以前、アトラシアン社員の成長プロファイルを社内に展開するチームの一員だった。

この成長プロファイルには「キャリアコンピテンシー(=特定の職務において特に評価されるスキル、知識、行動)」が含まれており、それらの項目は将来的な社員のキャリアアップにもリンクしている。また、成長プロファイルは四半期ごとに実施される社員の業績評価プロセスで使用され、社内のすべてのチームのマネージャーと社員は、各人のキャリアを評価して振り返り、議論する責任を背負っている。

「私にとって最も影響力の大きなマネージャーとは、私の現在の職務にとらわれることなく、1年後、3年後、5年後に自分がどうなっていたいかを一緒に考えてくれる人です」と、ハーレイは明かす。

能力開発目標のような仕事上の目標を設定する作業は形式的なもので、それほど気分の良いエクササイズではない。とはいえ、能力開発目標の設定は、社員の働く意欲や、会社・チームに対する貢献意欲、キャリアに対する満足度に大きな影響を与える。実際、適切な目標を設定することで、人の爽快感や満足感に関係する神経伝達物質「ドーパミン」の分泌が促されることが分かっている(参考文書(英語))。つまり、能力開発目標を適切に設定するだけで、ドーパミンが分泌され、人は潜在的な報酬に向かって突き進もうとするのである。

適切な能力開発目標を立てるための4つのTIPS

では、会社組織で働くプロフェッショナルが、適切な能力開発目標を立てるにはどうすれば良いのだろうか。

おそらく、あなたの頭の中には、いくつかの目標がぼんやりとあるはずだ。それを構造化することで、ぼんやりとした目標を明確な行動計画に変えることができる。その点を踏まえながら、以下では、適切で意義ある能力開発目標を設定するための4つのTIPSを紹介する。

TIPS① 自分の価値観を優先させる

プロフェッショナルとしての能力開発目標は、仕事上の業績だけを追い求めるようなものであってはならない。そうした目標を達成したところで、その結果が自身の価値観(人生における優先事項や原則、野心など)に合致していなければ満足できないからだ。

「プロフェッショナルにとって自分への投資は不可欠です。ただ、その投資を会社に認めてもらうまでに相当の時間がかかることが多くあります。ゆえに、自分にとって重要なスキルの開発に可能な限り多くの時間と労力、そして自身の金銭的なリソースを費やすことをお勧めします。自己実現のための学習や能力開発を現在の職場や仕事から切り離すことは、各人の自由な判断に委ねられています」(ハーレイ)

一方で、昇進には自分の肩書きやプロフィールの見栄えを良くするという効果がある。昇進によって、おそらく報酬もアップするだろう。ただし仮に、あなたがワークライフバランスの改善や新たな道への再出発を求めているのであれば、昇進によってより大きな責任を背負うというのは、回り道のように感じられるかもしれない。

一方で、なかには自分のコアの価値観(コアバリュー)を見定める方法(参考文書(英語))がわからない人もいるだろう。そうした方には、アトラシアンが提供している「コアバリュー探しのカード」(英語版PDF)をダウンロードして印刷し、以下の3つの山に分類していただきたい。

  1. 自分にとって非常に重要(Very important to me)
  2. 自分にとって重要(Important to me)
  3. 自分とって重要ではない(Not important to me)

こうして、あなたにとって「非常に重要」な項目のカードを集めたら、それをさらに10枚に絞る。そうすれば、自分のコアバリューが明確に把握できるはずだ。

ハーレイは、このコアバリューに関連して、自身の体験談を次のように明かす。

「大学院でのインターンシップの面接で『あなたは何者ですか?』『何を目指しているのですか?』『なぜ、それを目指しているのですか?』という3つの質問をされました。これら3つの問いかけは、答えるのが非常に難しいものですが、人が『自分自身をどう見ているのか』『どんな願望を持っているのか』、そして『なぜ、その願望がその人にとって重要なのか』を知るうえで非常に有効な質問です。私は、誰もがこれらの質問に答えられるようにしておくことを勧めています。それが、自分にとって本当に大切なことを発見する内省的な手段だからです」

TIPS② 目標設定のための「SMARTゴール」フレームワークを使う

「SMARTゴール」(参考記事)は、「具体的(Specific)」「測定可能(Measurable)」「達成可能(Achievable)」「(経営目標などに)関連した(Related)」「期限付き(Time-bound)」という5つの特性を有する目標を定めるためのフレームワークだ。

このフレームワークを使うことで、漠然とした能力開発の目標を自身のモチベーションアップに資する詳細で具体的な目標へと落とし込むことができる(また、目標達成の進捗状況も把握しやすくなる)。

ここで仮に、あなたの能力開発目標の1つが「人前で話すスキルを向上させる」ことであるとしよう。この目標にSMARTゴールを適用すると最終的な目標は次のようになる。

【SMARTゴールの設定例】

人前で話すトレーニングコースを受講し、今年中に少なくとも3回、全社的なイベントのスピーカーとして演壇に立ち、人前で話すスキルと社内での知名度を向上させる。

TIPS③ 目標達成のために行動計画を設定する

ここで上記の目標例を改めてお読みいただきたい。その記述には「人前で話すスキルを向上させる」という大目標を達成するための具体的なアクション(行動計画)が明記されている。これを能力開発の目標と行動計画に分解すると以下のようになる。

◾️能力開発目標:人前で話すスキルを向上させる
 ◻️目標達成のための行動計画:
 ・人前で話すトレーニングコースを受講する
 ・会社のイベントで少なくとも年内に3回、スピーカーとして演壇に立つ

長期目標か短期目標かによらず、上記のように大目標を小さなタスクやマイルストーンに分割することで目標が達成しやすくなる。また、達成のプロセスも楽しくできる。例えば、タスクやマイルストーンをクリアするごとに、それを小さな勝利として祝うといったかたちだ(参考文書(英語))。

TIPS④ 「バディ」システムを使う

ハーレイによれば、能力開発目標を達成するうえでは、その「成長の旅路」に付き合ってくれるパートナー(=バディ)を持つことも重要であるという。

「組織で働くプロフェッショナルとして学び、成長することはチームスポーツです。チームの協力によって、新たな知識を取り入れたり、ワークショップを催したり、能力開発と自分の人生との関連性を考えたりすることが容易になります。また、能力開発のバディを持つことで、自分が見逃していたことに気づかされることがよくあります。つまり、志(こころざし)を同じくする同僚や友人は、自分の枠を超えたさまざまな視点、示唆をもたらしてくれるのです」(ハーレイ)

プロフェッショナルを奮い立たせる能力開発目標の5つの設定例

能力開発目標の良い点は、自分にとって最も有意義で最適な目標を柔軟に設定できることだ。その目標設定に当たり、着想に役立つ情報が欲しいと考えるならば、是非、以下に示す能力開発目標の設定例を参照されたい。

① 新規スキルの獲得/スキルアップのための目標設定例
■能力開発目標:2025年末までにSQLプログラミングの習熟度を高める。
 ◻️目標達成のための行動計画:
 ・2024年第4四半期中に「Microsoft SQL Server認定資格」を取得する。
 ・2025年5月までにSQLを使ったCRMデータベースを完成させる。

② ワークライフバランス改善のための目標設定例
■能力開発目標:今後6カ月間でワークライフバランスを改善し、仕事上のストレスレベルを下げる。
 ◻️目標達成のための行動計画:
 ・週の3日間は午後5時に仕事を切り上げることを周囲の誰かと約束する。
 ・週に1度、趣味やセルフケアのための活動を予定して継続する。

③ 昇進に向けた目標設定例
■能力開発目標:向こう2年以内にマネージャー職に昇進する。
 ◻️目標達成のための行動計画:
 ・今月末までに上司と詳細なキャリアパス、あるいは能力開発計画を作成する。
 ・今後6カ月間で3つの大きなチームプロジェクトのリーダーを志願する。
 ・3カ月に1度、他チームのメンバーやマネージャーとコーヒーを飲むか、チャットをして情報を交換する。

④ 仕事上のネットワークを築くための目標設定例
■能力開発目標:業界のトレンドやキャリア上のチャンスに常につながっているために、プロフェッショナルとしてのネットワークを広げる。
 ◻️目標達成のための行動計画
 ・四半期に1回、業界のネットワーキングイベントに参加する。
 ・年末までに専門分野に特化した組織、あるいは団体に加入する。

⑤ 業界知識を広げるための目標設定例
■能力開発目標:業界内での専門知識、信頼性、知名度を高める。
 ◻️目標達成のための行動計画
 ・毎月1回、業界のWebセミナーに登録して聴講する。
 ・最低でも四半期に1冊、業界関連の書籍を読む。

仕事上の目標は、威圧的ではなく刺激的であるべきだ。自分に勢いをつけるために簡単な目標が必要なら、プレッシャーが少なく、すぐに達成できる以下のような目標を試してみると良いだろう。

  • LinkedInのプロフィールを見直し、最近のスキルや実績、経験を更新する。
  • 関連記事を読んだり、ポッドキャストを聞いたり、Webセミナーを視聴したりするなど、一週間のうち30分程度を学習と能力開発に充てる。
  • 新しい タイムマネジメント(時間管理)の戦略を1つ試してみる(参考文書(英語))。
  • 同僚や人脈のある人に連絡を取り、役に立つリソースを共有したりする。

自分の望みを知り実現する

繰り返すようだが、プロフェッショナルとしての自分の仕事やキャリアに行き詰まりや停滞感を感じているなら、能力開発目標を設定し、それに向かって努力することが有効だ。上記のTIPSや目標設定例を活用しながら、目標づくりを実践すれば、日々の雑務から解放され、自分にとって最も重要な目標に向かって前進することが可能になる。

「自分の進むべき道と、そこに到達する方法を自分のものにすることは、プロフェッショナルとして有意義な日々を送るうえで必要不可欠な取り組みです。そして、この取り組みを始めるベストなタイミングは、常に今であると考えるべきです」(ハーレイ)

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