アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアン「Team Anywhere Lab」
のヘッド、モリー・サンズ(Molly Sands)博士が最近の研究に基づきながら、会議を有意義にする方法について考察する。

本稿の要約を10秒で

  • アトラシアンの最近の調査により、多くのナレッジワーカーが非生産的な会議に頻繁に出席していることが明らかになった。
  • アトラシアンで働く多くのチームは「ページ主導型会議」という手法を採用し、会議でのディスカッションの効率性や生産性を高めている。
  • アトラシアン「Team Anywhere Lab」ではページ主導型会議の有効性を、実験を通じて検証。この会議の手法にディスカッションを有意義なものにする効果があることを証明した。

ほんどの会議が時間の無駄遣い!?

アトラシアンでは先ごろ、5,000人のナレッジワーカーを対象に調査を実施した(参考文書(英語)
)。その調査では会議を巡り以下のような残念な結果が出ている。

  • 回答者の77%が、次のフォローアップ会議の日程を決めるだけで終わる無駄な会議に頻繁に出席している。
  • 回答者の54%が「プロジェクトの次のステップ」や「誰がどのタスクを担当するか」が明確につかめないまま会議を終えることが頻繁にある。

このように明確な成果もなく終わる会議は非生産的であるばかりか、参加者の働くモチベーションを減退させ、かつ、重要なタスクに回せるはずの貴重な時間を浪費させる。言うまでもなく、そうした会議はそろそろ止めたほうが無難である。

私がヘッドを務めているアトラシアン「Team Anywhere Lab」(以下、TAL)は、現代のチームに最適な働き方を設計・検証する行動科学者のグループだ。当グループでは最近、チームがより生産的でフラストレーションの少ない会議を行うための方法を探り当てるべく、ある実験を実施した。以下、その実験結果に基づいたかたちで会議を有意義にする方法について紹介する。

従来型の会議が有効に機能しない理由とは

伝統的な会議は、プレゼンテーション資料(以下、スライド)や会議を主催する数人に頼ったかたちで「なぜ当該の会議が行われたのか」「ここで何を決定する必要があるのか」といった背景が説明される。実のところ、このような会議運営はうまくいかないことが多い。その理由は以下のとおりだ。

  • 会議がなかなか本題に入らない:会議の時間の多くが「舞台づくり」に費やされる。参加者は、具体的な会議の目標や、自分の参加に何が必要かを理解するのに時間がかかる。いったん議論が始まると、参加者は時間を急かされることが多い。
  • プレゼンターと参加者が同じページにいない:参加者は、プレゼンターがスライドを前に進めると前の情報を参照できなくなったり、プレゼンターが話している間に手元のPCでスライドをクリックしたりすることに気を取られたりする。
  • 会議で決定されたことが文書化されない:従来型の会議では、その場にいなかった人のために会議の議事録が残されることはほとんどない。誰かがメモを取ったり、対話を録音したりしていたとしても、そのデータは、その人のPCの中に他者と共有されることなく埋もれてしまうことが多い。そして大抵の場合、会議で下された最終的な結論になぜ至ったかの経緯は失われ、参加者の曖昧な記憶としてしか残らなくなる。

アトラシアン流「ページ主導型会議」の効果を検証

アトラシアンでは現在、多くのチームが「ページ主導型会議」 と呼ばれる手法を採用している。これはページ(文書)を使って会議を運用し、ディスカッションの効果や効率性、生産性を高める手法だ。

ページ主導型会議における「ページ」とは、会議開催の背景やゴール、重要な決定事項などを記した文書を指している。アトラシアンの多くのチームは、その文書(=ページ)を使って会議の効率性や生産性を高めている。

そこでTALでは、ページ主導型会議の有効性について実験を通じて確かめることにした。

実験では、社員を含むアトラシアン関係者30余人を組織横断のかたちで集め、彼らを2つのグループに分けて行った。2つのグループのうち1つ(「コントロールグループ」)は、彼らが日常的に行っている方式で会議を運営してもらった。また、もう一方のグループには、ページ主導型会議に関する講習を受けてもらい、そのうえで、会議のファシリテーター役を担う参加者に対して、講習で学んだことを使ってページを作成し、そのページを使って会議を運営するよう要請した。

ちなみに以下は、ページ主導型会議の講習がカバーする事柄である。

画像1: アトラシアン流「ページ主導型会議」の効果を検証

以下、上記英文の日本訳

①会議参加者(オーディエンス)を最優先に考えてページを記述する方法: 講習の参加者は、オーディエンスの視点に立って会議の内容について考察し、以下の質問に対する答えをページに記述する必要がある。

  • 会議の際にオーディエンスに何をして欲しいのか?
  • 会議の目標を達成するために、どのようにオーディエンスのサポートを引き出すのか?
  • オーディエンスがどういった知識を持ち、何を知りたいかについてどう見積もっているか?
  • オーディエンスはどのような疑問、関心事を持って会議に臨もうとしているか?

②文章の明快さの最大化に向けて文章の構造とフォーマットを整える方法: 講習の参加者は、オーディエンスの理解しやすいフォーマットでページを整える方法についてコーチしてもらえる。

③ページを使って効果的な会議をファシリテートするための方法: 講習の参加者は、会議のゴールとカギとなるディスカッションのテーマを明確にする文書の作成方法について学ぶ。会議の際、講習の参加者たちはページをオーディエンスに読ませ、それに対するコメントをモニタリングすることになる。

④会議の成果を文書化し、共有する方法: 講習の参加者は、会議のオーディエンスによる意思決定を支援するためにページをどのようにデザインすべきかについて学ぶ。

2つのグループに分けた会議の終了後、TALのチームは、実験の参加者(実験は複数回実施され、合計で104名のアトラシアン関係者が参加)に対してアンケート調査を実施した。また、ページ主導型会議の進行に使われたページの分析も併せて行っている。

そのアンケートとページ分析の結果として、ページ主導型会議には以下のような効果があることが明らかになった。

  • 会議参加者のイライラを抑えて活力を与える。
  • 会議の参加者から時間を有効に使えると評価される。
  • チームの目標を達成しやすくなる。
  • 会議における摩擦を減らしながら目標を達成できる。

実際、実験の参加者に対するアンケートの結果を見ると、ページ主導型会議に参加したアトラシアン社員は、コントロールグループの社員に比べて、ミーティング後に活力を感じる割合が29%高く、不満を感じる割合は23%低かった(下図参照)。

画像2: アトラシアン流「ページ主導型会議」の効果を検証

この結果は、ページを活用することで会議がよりポジティブな体験となり、参加者が混乱したり、フラストレーションを感じたり、やる気をなくしたりときに起こる参加者間の摩擦も回避できる可能性が高いことを示唆している。

また、ページ主導型会議には、参加者のエネルギーを高めてフラストレーションを低く抑えることで、目標の達成率を高める効果もあるようだ。実際、アンケート調査の結果からは、ページ主導型会議の85%が会議の目標を達成していることが分かった(コントロールグループにおける会議の目標達成率は69%)。

「構造化されたページがあったおかげで、アイデアが参加者に浸透している状態で会議を始めることができました。その結果、効率的で生産的なディスカッションが行われ、会議の結論を実行可能なアイデアへと転換する時間が増えました」

── アンキータ・N(AnkithaN.) アトラシアン 人材オペレーション担当

明快なページで会議参加者を引き込む

先に触れたアンケート調査の結果を見ると、ページ主導型会議への参加者たちは総じて、コントロールグループの会議への参加者に比べて時間をより有効に使えたと感じているようだ。
また、ページ主導型会議を実践したグループでは、ページの適切な作り方の講習を受けたこともあり、ファシリテーターが作成したページに対する参加者の読了時間(平均3分)が、講習を受けなかったもののページを使用することを選択したコントロールグループの参加者の読了時間(平均5.7分)よりも短かった(下図参照)。

画像: 会議参加によるページの読了時間の比較 ~コントロールグループ vs. データ主導型会議の講習を受けたグループ

会議参加によるページの読了時間の比較 ~コントロールグループ vs. データ主導型会議の講習を受けたグループ

「ページ主導会議のフレームワークは、大人数のグループには特に効果的でした」

──マックスB(Max B)、アトラシアンの個人パートナー

この結果は、ページ主導型会議の講習が、会議の参加者とファシリテーターの双方にとって価値があることを示している。実際、今回の実験でページ主導型会議のファシリテーター役を担った合計16人中14人が、講習で学んだアプローチを同僚に勧めたいとしている。

「今回の実験のおかげで、会議の計画を立てること、明確、かつシンプルに会議の背景や目標を伝えることの重要性を理解することができました。これからもページ主導会議のアプローチを活用していきたいと考えます」

──ジェシカ・C(Jessica C)、アトラシアン シニア・マネージャー

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