アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのケイティ・テイラー(Katie Taylor)が変更管理(チェンジマネジメント)の実践手法について説く。

変化を阻害する従業員の「スローウォーク」

組織・チームのリーダーにとって厄介なのは、現場で働く従業員たちは基本的に変化を強制されることを嫌うということだ。特に、リーダーのエゴや気まぐれ、あるいは最新の流行に感化されただけと思われる変化には必ず抵抗する。

また、従業員たちによる抵抗になかなか気づけない場合も少なくない。

「政治の世界には『スローウォーク』という言葉があります。これは、政治的な力のない人たちや政党が、何らかの取り組みに反対する際にとる戦術です。実は、それと同様の戦術を、変化に抵抗する従業員たちがとることがあります。また、それは変革に失敗した組織でよく見受けられる現象なのです」(パーキンス氏)

言うまでもなくスローウォーク戦術をとる従業員たちの考えの根底には「変化への取り組みは一過性の流行で、少し辛抱すればすぐに過ぎ去る」という意識がある。こうした考えを持つ従業員たちは、取り組みに口では協力するものの、実際に取り組むまでには至らない。

したがって、過去に変革に失敗した経験を多く有する組織・チームのリーダーは、こうした従業員の抵抗に対処・対応するための術(すべ)を考え抜いたうえで、従業員たちの「変化疲れ」に配慮しながら、組織のニューノーマルづくりに取り組まなければならない。

また、リーダー自身の意志の弱さも、変革を停滞させる原因となる。

例えば、組織文化の変革を引き起こそうとした場合、その道のりは長く、かつ、従業員の全員が乗り気になることはまずない。ゆえに、変革に適応しようとしない従業員については、たとえその従業員が組織に長くいて相応の実績を上げてきた人であっても、組織を去ってもらうしかない。

それを断行するには相当の覚悟が必要であり、リーダーにとっては苦渋の決断となる。ただし、それを行わなければ、周囲は「自分たちのリーダーは変革に本気ではない」と判断し、自分たちも変革に真剣に取り組もうとしなくなる。結果として、変革の試みは失敗に終わることになるとパーキンス氏は指摘し、こう続ける。

「リーダーにとってすべての従業員が大切な存在です。ですので、変化に適応できないからといって従業員を辞めさせるのは非常につらい選択です。ただし、それを行う覚悟がないならば、自分には組織文化を変える準備ができていないと認識すべきです」

変更管理でさらに知っておくべき4つのこと

変更管理に取り組むうえでは、上述した以外にも知っておくべき事柄がある。それは変革に関する以下の4つの原則だ。

  • 原則1:すべての人を喜ばせることはできない
    パーキンス氏によれば、組織におけるいかなる変化も、すべての従業員に喜ばれ、歓迎されることはないという。ゆえに、それを主導するうえでは、抵抗勢力に意識を向けるのではなく、支持者が誰であり、なぜ、その人たちは支持しているかに気を配る必要があると、パーキンスは説く。
  • 原則2:時間がかかる
    変革を主導するリーダーは、従業員たちに向けてその必要性を幾度も説く必要がある。感覚的には、自分自身で「もうこの話はしたくない」と感じるまで説明を繰り返すのが適切であると、パーキンス氏は説く。つまり、変革を成し遂げるうえでは、時間をかけた啓発の積み重ねが必要であり、それを通じて従業員たちは、初めて変革の全容とそれがもたらすベネフィットについて理解することができるというわけだ。
  • 原則3:取り組みの可視化が必須である
    ある調査によれば、従業員の80%は変革について「実施しても、しなくても構わない」と考えているとパーキンス氏は明かす。こうした従業員は、自分の周囲が変革に取り組んでいると実感できなければ、自身がそれに取り組むことはない。ゆえに、変革を推し進めるうえでは、実際に取り組んでいる従業員の姿を可視化することが大切であるという。
  • 原則4:変革のリーダーシップはトップから生まれる
    組織のトップが変革に自ら取り組む姿勢を見せなければ、変革は成しえないと、パーキンス氏は指摘する。言い換えれば、従業員は経営陣が守ろうとしない新しいルールに従おうとはせず、それを強要すれば、反発を生むことになるというわけだ。

チームの努力が成功のカギを握る

パーキンス氏によると、組織全体の変革は、個々のチームの努力によって支えられるという。そのため、チームリーダーは、メンバーの賛同を得るためのプロセスを作り上げなければならない。

組織におけるどのような変革にも、さまざまな人がかかわります。ですので、チームの各人が意見を出し、実行し、自らの意識を変えていかなければなりません。したがって、あるソフトウェアから別のソフトウェアに変更するといった単純な変化であっても、チーム単位での取り組みが必要です。変革を推進するための社内ルールを定めたとしても、決して成しえないのです。