アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、「週4日」の働き方を巡る世界の動向をレポートする。

スペイン ── 現在平均値:週36時間労働

■現状
2021年3月、スペイン政府は2021年末、ないしは2022年初めから実施する労働時間短縮の3カ年プロジェクトの概要について発表した。急進左派のマスパイス党が提案したこのプロジェクトでは、約200人の就業者が週4日制に移行する。この移行に際しては、生産性を維持するために追加の労働者の雇用や新技術の導入などのコストがかかる。そこで政府は、EUの「Covid Recovery Fund」から5,000万ユーロを拠出して雇用主に支払うという。

一方、Software Delsol社は先ごろ、スペインの企業として初めて週4日制を導入した。結果として、欠勤が減り、従業員の幸福度と生産性がともに向上したと同社は報告している。また、通信会社のTelefonica社も3カ月間のトライアルとして週4日制の導入を検討しており、従業員は15%の減給と引き換えに週4日制に移行することができる。このプログラムへの参加・不参加は任意であり、かつ、特定職務の従業員にのみ適用されるという。

■支持派の動き
スペインでの労働時間短縮には、マスパイス党が大きな役割を果たしている。

スペインと労働時間のミニ知識
スペインは西欧諸国の中で最も早い1919年に1日8時間労働制を導入した国である。この動きのきっかけは、主要な電気会社の労働者たちが始めた44日間のストライキだった。このストライキはのちに、カタルーニャ地方全土を巻き込んだゼネストへと発展している。

スウェーデン ── 現在平均値:週休2日・週36時間労働

■現状
スウェーデンの場合、現時点では週4日制を巡る目立った動きは見られていない。ただし数年前は労働時間の短縮はきわめてホットな話題だった。

2015年には「1日6時間労働」の実証実験がいくつか行われた。ただし、それらの実験の結果は、1日6時間労働は“良い面もあれば、悪い面もある”という非常に曖昧なもので、どうするのが適切かの結論が出ぬまま終わっている。

例えば、ヨーテボリ市は70人の看護師が2年間1日6時間労働を試した。結果として、看護師たちは1日6時間労働を気に入り、また、患者たちも看護師らが十分に休息をとり、仕事への集中力を増したことでさまざまな恩恵を受けたという。ただし、ヨーテボリ市はこの実験のために130万ドルのコストをかけて看護師を増員しなければならず、同市は最終的に看護師の1日6時間労働を市全体に適用するのは財政的に厳しいとの判断を下した。

また、新興企業で行われた同様の実験はわずか1カ月で終了している。理由は、従業員からのクレームである。彼らは、1日6時間労働では猛烈なスピードで仕事をこなすか、仕事のスケジュールを遅らせるかのどちらかを選ばなければならず、自分たちには耐えられないとのクレームが上ったという。

ちなみに現在、ストックホルムのほとんどの企業はコアタイム有りのフレックスタイム制を採用しており、午前9時から午後4時の間にオフィスにいること(または自宅からオンラインで仕事をすること)を条件としている。

■支持派の動き
スウェーデンにおいて、政策として週4日制の推進を掲げているのは左翼党だけである。しかも彼らはマイナーな政党で2017年の選挙における得票率は6%でしかなかった。

米国 ── 現在平均値:週 39時間労働

■現状
米国に住み、ニュースメディアの報道に多少なりとも関心のある人であれば、カリフォルニア州選出の下院議員、マーク・タカノ氏が提出した「週4日制」の法案についてはご存じのはずである。

この法案は時給制労働者が週40時間ではなく32時間労働になった場合に残業代を政府が支給するというものだ。ただし、この法案の対象にはフリーランサーやギグエコノミーの労働者、一部の労働者は含まれていない。また、正規雇用の給与所得者の労働時間についても週32時間に統一されるべきとの言及はない。

一方で、米国では小規模なテクノロジーカンパニーを中心に週4日制の導入に乗り出すところが増えている。Kickstarter社とBuffer社は2021年に週4日制の試験的な運用を始動させた。ソフトウェア会社のPalmetto社とWildbit社はすでに週4日制を正式に採用している。また、Metro Plastics Technologies社では、1990年代から人材確保を主眼に1日6時間労働制を採用しているが、人手不足の解消を目的に今日も同制度を続けている。

■支持派の動き
元大統領候補のアンドリュー・ヤン氏は長年にわたり週4日制を支持している。教育関連企業のCEOを務めていた彼は、大抵の金曜日には社員の早めの帰宅を促していたという。もっとも彼は、もし週4日しか選挙活動ができなかったら、満足のゆく選挙活動は展開できなかったとも述べている。

このほか、作家のカル・ニューポート氏をはじめ、非営利シンクタンクのEconomic Policy Institute、Service Employees International Union(サービス従業員国際組合)、National Employment Law Project(労働者団体NELP)、United Food and Commercial Workers Union(全米食品商業労働組合)、そして米国最大の労働組合連合であるAFL-CIOなどが、週4日制を提唱している。