アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのジェネヴィブ・ミカエル(Genevieve Michaels)が、従業員の自己肯定感を高める方策について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 人間は常に「他者にとって重要な存在」であろうとする。
  • 職場において「自分は重要な存在である」と感じると、働く意欲、ないしは組織・チームへの貢献意欲が高められる。
  • リーダーは、自らが率いる組織・チームのメンバーに「自分は重要である」と感じさせなければならない。

「自分は重要」と感じることの意義

社会の生き物である人間にとって「他者にとって重要な存在」であることは、衣食住と同じく生存に不可欠な要素だ。書籍「The Power of Mattering: How Leaders Can Create a Culture of Significance」(参考文書(英語))の著者であるザック・メルキュリオ(Zach Mercurio)博士によると、他者にとって重要な存在であろうとすることは人間の生存本能であり、その本能は現代でも失われていないという。

また人間は「自分は重要である」と認識すると、周囲の人たちにとっても自分は意義ある存在であると感じることができる。こうした自己肯定感は、2つの要素から成る。1つは、他者から自分の価値を認められることだ。もう1つは、自分の存在が他者の人生に価値をもたらしていることを知ることである。

そして職場においては「自分の仕事に意味がある」と感じることが、ともに働く人々にとっても「自分は重要である」と感じることにつながる。

もっとも、私たちは一般的に、職場での自分の存在意義は、周囲への貢献を通じて得るべきものと考えている。言い換えれば、自分の中で最高の仕事をすることを職場での自分の存在意義を高める前提条件としてとらえていないのである。

この点について、メルキュリオ氏は次のように指摘している。

「職場における私たちは『他者に価値を提供することで、初めて自分の価値が認められる』と考えがちです。ただし実際には、自分が自身の価値と能力を信じなければ、他者に価値を提供する自信は生まれないのです」

加えて、メルキュリオ氏はこうも続ける。

「仮に、従業員たちが『自分は職場の中で重要な役割を担っている』と感じられなければ、仕事に対する彼らの責任感は薄れ、自ずとミスも多くなります。また、人材の流動性も高まり、組織は慢性的な労働力不足に悩まされるようになります。従業員の業績や革新性、エンゲージメント、生産性といったアウトプットは、あくまでも彼らの自信、あるいは自己肯定感によってもたらされるものです」

従業員に自身の重要性を感じさせるには

職場において「自分が重要である」と感じられるかどうかは、仕事上の人間関係によるところが大きい。つまり、職場での人間関係がもたらす相互作用によって、従業員各人が自分は重要であると感じられるかどうかが大きく左右されるわけだ。

その点を踏まえつつ、メルキュリオ氏は前出の著書の中で、自身の重要性を感じる要素を以下の3つに分解している。

①気づくこと: 職場での上司や同僚の言動から、自分の価値が理解され、評価されていると気づく

②肯定されること: 自分のユニークな才能が仕事にプラスの影響を与えていると肯定される。

③必要とされること: 周囲に頼りにされ、仕事に不可欠な存在として必要とされる。

職場での人間関係がもたらす相互作用は、これらの要素を従業員各人に与えうるものだ。メルキュリオ氏は「従業員らに、それぞれの重要性を気づかせ、肯定し、必要とされていることを示すうえでは、特別なプログラムを展開したり、彼らのエンゲージメント(組織への貢献意欲)レベルを調査したりする必要はありません。彼らがすでに保持している人間関係を最適化するだけで良いのです」と説いている。

重要性に対する自己認識の危機

従業員に対して「あなたは重要な役割を担っている」というのは簡単である。ただし、彼らに自身の重要性を感じさせるのはなかなか難しい。

この点に関して、メルキュリオ氏は「近年では、労働者の30%が『職場の中で自分は見えない存在である』と感じていて、39%が『自分の職場には自分を人間として気遣ってくれる人がいない』としています。こうした状況は、組織・チームのパフォーマンスを低下させるものです」と指摘し、こう続ける。

「組織・チームのリーダーは、自分たちがメンバーに期待をかけ、かつ、彼らを必要としていることを明確に示さなければなりません。それには、従業員たちと真摯に向き合い、彼らを理解し、寄り添っていかなければなりません」

危険な兆候と対処の方法

職場において、従業員が「自分は重要ではない」と感じていると、その兆候がさまざまに現れる。以下、それらの兆候と対処法を紹介する。

兆候① 従業員が自分の中に引きこもる

従業員が「(職場において)自分は重要な存在ではない」と感じると、自分の中に引きこもり、次のような行動を示すようになる。

  • 自分の意見やアイデアを周囲と共有しようとしなくなる。
  • 情報を隠すようになり、マネージャーではなく、特定の同僚のみにフィードバックを返そうとする。
  • 組織・チームの中で孤立し、協力を避けるようになる。
  • 欠勤、遅刻、会議での欠席を繰り返すようになる。

組織・チームのリーダーはよく、これらの行動の原因を、当該従業員の性格的な問題に帰着させようとする。そして、当該の人員を他者と入れ替えればすべてが解決されると思い込む。ただし、それは間違った判断である可能性が大きい。その可能性について、メルキュリオ氏は次のように指摘する。

「働く各人が自分の重要性を感じられないような文化の組織・チームは、人員の入れ替えをいくら行っても、問題の抜本解決にはつながりません。例えば、従業員が自分を『組織・チームを構成する歯車の1つに過ぎず、いつでも他者との交換ができる』と感じているとしましょう。そう感じている従業員は、働く意欲を減退させ、組織・チームに貢献したり、リーダーの期待を超えるような成果を出そうとしたりしなくなるのです」

◾️対処法:成果の確認と感謝を習慣化する

メルキュリオ氏によれば、組織・チームのメンバーに引きこもりの兆候が見られるのであれば、その人は辞職の意思を固めている可能性が高いという。ゆえに、引きこもりの兆候を発見した際には、リーダーは「当該の人員と最後に言葉を交わしたのはいつだったのか」「その人の成果を評価して、感謝の言葉を伝えたのはいつだったか」を振り返るようにすべきだ。メルキュリオ氏は「組織・チームのリーダーは常に『誰かの働きを見過ごしていないか』『チーム全員に働きをしっかりと評価し、感謝の言葉を伝えているか』を自問し、継続的な改善を図ることが大切です」と述べている。

実際、ある研究によると、高いパフォーマンスを発揮していた従業員が退職する半数のケースにおいて、その上司は彼らが退職を考えていたことを知らなかったという。

このような事態を避けるためにも、組織・チームのリーダーはメンバーとのコミュニケーションのあり方を点検し、必要に応じて改善を図ることが大切だ。以下は、そのための手順例である。

STEP① 週間における自分と組織・チームのメンバーとのコミュニケーションを振り返り、自己評価する

職場におけるリーダーとメンバーとのコミュニケーションは、業務上の情報を交換するための「トランザクショナルコミュニケーション」と、個人的なつながりを深めるための「リレーショナルコミュニケーション」の2つに大別できる(以下参照)。

  • トランザクショナルコミュニケーションの例:業務の進捗確認、タスクの割り当て業務上の指示・伝達、など。
  • リレーショナルコミュニケーションの例:心身の健康状態の確認、組織・チーム内での軋轢・衝突の解決、組織・チームにおけるエネルギーレベルの確認、など。

リーダーは、1週間ごとにメンバーたちとのコミュニケーションを振り返り、トランザクショナルとリレーショナルのコミュニケーションがそれぞれ何件あるかを確認し、リレーショナルコミュニケーションを増やすように心がけるべきである。

STEP② 成果の確認と感謝を体系化する

メルキュリオ氏によれば、組織・チームのリーダーたちは、メンバーに感謝を伝えることの意義を過小評価しがちであるという。

感謝の言葉は、従業員たちに自身の重要性を認識させ、それぞれの働く意欲を高めるうえで非常に大きな意味がある。したがって、従業員の成果を常に確認し、必要に応じて感謝を伝えるタスクをToDoリストやカレンダーに追加し、習慣化することが大切である。「重要なのは、メンバーに感謝を伝えるという行動を、日常的な実践へと昇華させることです」と、メルキュリオ氏は付け加える。

兆候② 陰口やネガティブなうわさ話が横行する

従業員たちが「自分はあまり重要ではない」と感じていると、組織・チームにおいて陰口やネガティブなうわさ話が横行するようになる。例えば、リーダーのいないところで「不平不満を漏らす」「失敗を他者のせいにする」「自分の待遇に対してクレームをいう」といったかたちだ。

この点について、メルキュリオ氏は「職場での陰口やネガティブなうわさ話の最大の要因は『心理的契約違反』です」と指摘する。

心理的契約違反とは要するに『職場で公平に扱ってもらえるという期待が裏切られた心理状態』を指す。「従業員たちがそうした心理状態にあると、陰口やネガティブなうわさ話が多くなるのです」と、メルキュリオ氏はいう。

◾️対処法:従業員の行動への理解を深める

メルキュリオ氏は「リーダーから『最も扱いにくい』と評された従業員たちは、大抵の場合、『最も見過ごされ、評価されていない従業員』です」とする。加えて、同氏はこう説明する。

「仮に、あなたが部下の行動を『ネガティブなもの』とラベルづけしたとします。このラベリングによって、あなたの脳は部下の分類を終えたと認識してしまいます。そして、当該の部下の行動をより深く理解するために多くのエネルギーを使おうとしなくなるのです」

したがって、組織・チームのリーダーは、メンバーの誰かを「扱いにくい人」とラベリングするのではなく、その行動の原因を探ってみることが重要となる。

「従業員のすべての行動は環境の産物であるとの認識が大切です」と、メルキュリオ氏は続ける。

もう1つ、従業員の誰かが「自分は重要ではない」と感じていると、組織・チームにおけるメンバー同士の衝突も多くなる。

こうした「人と人との衝突」(参考文書(英語))に対処するのは簡単ではない。だが、組織・チームを率い、適切にマネージしなければならないリーダーにとってそれは不可避のミッションでもある。「ゆえに、リーダーは、他者と衝突しているメンバーの行動要因を徹底的に突き止め、理解し、必要な支援を提供しなければなりません。そうすることで、彼らは自分が重要であると感じ、不要な衝突を避けるようになるのです」と、メルキュリオ氏は説明する。

兆候③ メンバーたちとの対話で「焦り」や「注意力の散漫さ」を感じる

仮にあなたが組織・チームのリーダーであるとして、メンバーとの1 on 1ミーティングをキャンセルしたり、先延ばしにしたりしていないだろうか。また、メンバーの誰かがアイデアを述べたり、直面している課題を説明したりしているときに、他のことに気を取られたりしていないだろうか。

このようなリーダーの行動は、メンバーに「自分は軽んじられている」と感じさせるものだ。

21世紀の現代は、働く誰もが時間に追われている。ただし、それでも組織・チームのリーダーは、メンバーとのコミュニケーションを大切にし、じっくりと腰を据えて彼らの言葉に耳を傾けなければならない。仮にそれを怠れば、彼らは「自分たちは重要ではない」と感じるようになる。

メルキュリオ氏は「リーダーの犯しやすい間違いは、メンバーに仕事をこなさせることに力を注ぎ、人としてのメンバーへの配慮を疎かにすることです。こうしたリーダーの行動によって、メンバーたちはリーダーへの信頼を低下させ、かつ、自分はあまり必要とされていないと感じるようになるのです」としている。

◾️対処法:コミュニケーションの質を向上させる

メンバーとの信頼関係を深めるうえで大切なのは、コミュニケーションの量ではなく質である。例えば、組織・チーム内における週次のミーティングにおいて、いきなり本題に入るのではなく、メンバー全員の「エネルギーレベル」を「緑」「黄色」「赤」で表現してもらうようにしていただきたい。こうすることで、週次ミーティングにおけるコミュニケーションが深みを増すことになる。

また、メルキュリオ氏は以前、国立公園局で働いていたが、そのとき、あるチームの士気が特に高いことに気がついた。その理由は、当該チームのリーダーが、毎週金曜日の朝に、メンバー各人が修理した道や橋などの写真をメールに添付して送っていたからだ。

「これは作業報告のメールの過ぎないといえますが、それによってチームのメンバー各人は自分の仕事の大切さを毎週実感し、働く意欲を高く保っていたのです」と、メルキュリオ氏は説明を加える。

兆候④ テクノロジーを効率化のためだけに使っている

メルキュリオ氏によれば、テクノロジーを業務の効率化のためだけに使っていると、従業員が孤立し、職場における自分の必要性、重要性をあまり感じられなくなるという。

例えば、リモートワーク中心型の働き方に対する批判として、働き手の孤立や孤独感、組織・チームへの帰属意識の低下を助長するというものがある。メルキュリオ氏は、これらの問題の原因は、リモートワークという働き方ではなく、業務の効率化のためだけにテクノロジーを使おうとする姿勢にあるとする。

「リモートワーク中心型か、オフィスワーク中心型かによらず、現代のナレッジワーカーは、テクノロジーを通じて常に同僚たちや上司たちと連絡を取り合っています。ところが、多くのナレッジワーカーが、かなりの孤独感や孤立感、自分に対する周囲の無関心さを感じています。これは、多くの組織・チームが、業務の効率化のためだけにテクノロジーを使っているからです。結果として、特にリモートワーク中心型の職場では、組織・チームのメンバーが互いに過ごし、人間的なつながりを深める時間が減ってしまっているのです」

今日における平均的な社会人は、メールやチャットなどのコミュニケーションプラットフォームを通じて、1日あたり30~40件のテキストメッセージを仕事で送受している。これは、かなりのコミュニケーション量といえるが、それらの大多数は、先に触れたトランザクショナルコミュニケーションに過ぎない。つまり、人間的なきずなを育む土台とは成りえていないのである。

◾️対処法:人間関係構築のためにテクノロジーを有効活用する

この問題への対処法は、人間関係を深める道具としてテクノロジーを有効活用することである。そうしたテクノロジーの使い方は、あらゆる働き方に適用でき、働き手がリモートに分散する組織・チームでも、テクノロジーを通じて人間関係を強化することができる。

もっとも、この取り組みにはしっかりとした計画性と意図が必要とされる。メルキュリオ氏はこの点について「特にリモートワーク中心の働き方を採用している組織・チームでは、チャットやメールによる非同期のメッセージ交換で済むものと、対面での対話が必要なものとを明確に区別する必要があります」との説明を加える。

なお、テクノロジーを(リモートワークを中心とする職場での)人間関係強化に使う例としては、組織・チーム内でのWeb会議を通じてメンバーの1人1人に近況を報告させ、それを通じてメンバーの誰かが難しい課題に直面していることに気づいたときに、リーダーが即座に電話をかけ、相談に乗るといった運用が挙げられる。

オフィスへの出勤がつながりを強化するわけではない

  • リモートワークからRTO(オフィス回帰)を一律で従業員に強いることは、従業員たちに「自分たちは信頼されておらず、かつ、自分たちの仕事はあまり重要ではないと見られている」と感じさせるリスクがある。
  • 組織・チームのつながりの強化や生産性向上を目的にRTOを義務づけても、従業員たちに「自分は価値ある存在である」、ないしは「必要とされている」と感じさせるスキルがリーダーにない場合、RTOの目的が達成されることはない。

兆候⑤ 感謝の伝え方に不自然さがある

組織・チームのリーダーとメンバーとの間に信頼関係が構築されていない場合、メンバーに対するリーダーによる感謝の言葉が空虚に感じられたり、侮辱として受け止められたりするリスクがある。特にリーダーから認められていないと感じているメンバーは、いきなり褒められたり、個人的なことを尋ねられたりした場合、「何の狙いがあるのか」と疑わしく感じるはずだ。

加えていえば、自分の存在価値を何によって感じられるかは人それぞれで異なる。例えば、ある人は言葉による感謝や自分への肯定によって、自分の価値の高さを強く感じられるかもしれない。また、別の人は、挑戦的なプロジェクトを任されることで自分の重要性をより強く感じるかもしれない。このように、チームのメンバー各人が、どのようなことを通じて自分の重要性、ないしは存在価値を感じるかは、努力の繰り返しによってつかむしか方法はないのである。

◾️対処法:相手に「どうすれば自分の重要性を感じられるか」を尋ねる

従業員に自分の重要性、ないしは価値を感じさせる取り組みは、いつ始めても問題はない。ただし、その取り組みには透明性が必要とされる。

また、メルキュリオ氏は、メンバーへの感謝をリーダーが直接伝えることを推奨しており、その伝え方についてもメンバーに意見を求めたほうが良いという。例えば、以下のようなかたちだ。

【例1】以下のようにメンバーに尋ねたうえで、その回答を書き留め、それに沿って行動する。
『あなたは、私のどういった行動から自分が大切にされていると強く感じますか?』

【例2】以下のように発言し、メンバーへの感謝を伝えることが自分にとって新しい行動であることを認める。
『これは普段の私のスタイルではなく、私にとっても初めての経験です。ただ、あなたが我々の仕事にどれほど貢献しているかを、どうしても指摘したいと思いました』

【例3】以下のように述べて、メンバーとの1 on 1ミーティングに新しいルーチンを導入する。
『今後は、この1 on 1ミーティングにおいて、あなたの私生活に関する質問を必ずするようにします。理由は、あなたへの理解をさらに深めたいからです』

さらに、メルキュリオ氏は「メンバーに重要性を理解してもらうために『自分に何ができるかを教えて欲しい』と伝えるだけでも効果的です」とし、こう結論づける。

「大切なのは、あなたがメンバーを気にかけているのを全員に知らせることです。これにより、メンバーたちは自分が重要であると感じ始めるのです」

アトラシアン「Team Playbook」を使う
メンバー各人の働き方を知るためのシンプルなツールとしてアトラシアン「Team Playbook」の「ユーザーマニュアル」がある。これは、仕事における自分の扱い方を記した文書だ。それを組織・チーム内で共有することでリーダーは、メンバー各人のワークスタイルや好み、強み、コミュニケーションの習慣などの情報を簡単に収集できるようになる。

兆候⑥ 従業員が「罪悪感」を抱く

従業員らに仕事における各人の重要性や周囲の期待を理解させたとしても、それによって彼らの「罪悪感」を強めてしまうことがある。

この問題は、従業員たちが「自分の心身の健康(ウェルビーイング)や仕事以外の懸念事項に対するリーダーの配慮が足りていない」、あるいは「仕事に対する発言権が十分に与えられていない」と感じているときに起こりうる。

例えば、看護師のチームのリーダーが、メンバーによる休暇の取得を「患者への裏切りである」と指摘したり、チャットツールを通じて残業を要求するメッセージを送ったりすることがある。こうした行動は、メンバーたちの罪悪感を増幅させる可能性がある。

◾️対処法:従業員を認め、肯定し、必要な存在であると感じさせる

従業員たちに上述したような罪悪感を抱かせないためには、リーダーが彼らの価値を認めて肯定し、大切な存在であると感じさせなければならない。この点について、メルキュリオ氏は「組織・チームのメンバーが、自分はリーダーにとって重要な存在であると確信していれば、彼らは、リーダーを信頼し、無理な要求はされないと考えるようになります。また、たとえ無理な要求をされても、安心して反論できると感じるのです」としている。

また、メルキュリオ氏によれば、組織・チームの全員で、全員にとってメリットのある働き方を考えていくことも重要であるという。

「リーダーは、メンバー全員を巻き込みながら、働き方を巡る課題の解決を図ることが大切です。そうすることは、メンバーたちの時間と知識を尊重する姿勢を示すことにつながるからです」(メルキュリオ氏)

加えて、リーダーは、夜遅くにメンバーに残業の要請をかける代わりに、次のようにいうことができる。
『あなたが忙しいことは十分理解しています。ただし、この件は早急に対応しなければなりません。それをどう進めるかを一緒に考えてくれませんか?』

すべてのリーダーにメンバーの重要性を伝える権利がある

メルキュリオ氏は話の最後に、従業員に自身の重要性を感じさせるうえでのリーダーの役割についてこうまとめている。

「リーダーとメンバーとの間で交わされるすべてのやり取りは、メンバーたちを評価し、彼らに自分の重要性、必要性を感じさせる機会といえます。リーダーがその機会を生かすうえでは、誰の許可も必要ありません。実行あるのみです」