アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が「分析麻痺」を乗り越えるためのTIPSを示す。

本稿の要約を10秒で

  • 「分析麻痺」とは物事について考えすぎ、意思決定が下せなくなる状態を指している。
  • 分析麻痺に陥る原因は「選択肢の過多」「インプットの過多」「自信の喪失(インポスター症候群)」の3つに分けることができる。
  • 分析麻痺によって意思決定が行えなくなることはビジネスの現場でよく起きる。本稿に示すTIPSを実践することで、チームのリーダーやメンバーが分析麻痺に陥るのを防ぐことが可能になる。

議論をいくら重ねても……

自分のチームが開発したプロダクトについて、ユーザー(顧客)からフィードバックをもらうこと、つまり、顧客による製品レビューの結果を得ることはよくある。仮に、あるユーザーによる評価結果が芳しくなく、それにどう対応するかの会議をチームで催したとする。

そのミーティングにおいて、あるメンバーは「顧客の指摘は深刻な問題ではないので、特別な対応をとる必要はない」と主張した。また、あるメンバーは「少なくとも、自分たちを守る一手を打つべき」と指摘し、別のメンバーは「顧客に向けて『貴重なご意見をありがとうございました』といったメッセージを送るだけでことは済む」との考えを示した。さらに、別のメンバーは「自分たちよりも上位のマネジメントチームに何らかの返答をさせるべき」と訴えた。

これらの意見にはそれぞれ長所と短所があり、どれが適切な対応かの答えも存在しない。

結果として議論は紛糾し、結論は出なかった。そこで翌日、再び会議を催したが意見は一向にまとまらない。それどころか、全員が自分の意見に固執したり、新しいアイデアを持ち込もうとしたりして、同じような議論が繰り返され、選択肢が増えるだけで会議は終了となった。

このような状態を続けていると、議論の方向は最終決定からどんどん遠ざかっていく。結果として、会議に参加している全員が苛立ちを募らせ、それがまた議論を無益で非生産的なものへと変えていった。

この状況は、まさにチームが「分析麻痺(Analysis Paralysis)」に陥っている状態といえる。

分析麻痺の要因

一般に、決断に迷いを生じさせる根本原因として「考えすぎ」が挙げられる。要するに、いったんは最終結論に至ったものの、なかなか決断が下せず、再度振り出しに戻らざるをえなくなるまで思考を巡らせ続けてしまうというわけだ。

「考えすぎ」は、決断が下せない原因を「ざっくり」と表現する便利な言葉だ。ただし、考えすぎの状態に陥ること、言い換えれば分析麻痺の状態に陥ることを避けるためには「考えすぎ」、ないしは分析麻痺が「なぜ、起こるのか」の原因を知っておく必要がある。その原因は以下の4つに分けることができる。

  1. 完璧主義:「完璧な選択をしなければならない」という重圧は、人の決断を鈍らせる。ある心理学研究によれば、完璧主義者が不確実性の高い状況に置かれた場合、反復的でネガティブな思考により陥りやすくなるという。
  2. 選択肢の過多:とりうる選択肢をすべて明らかにするのは賢明な策のように思える。ただし、選択肢が多すぎると、かえって選ぶのが難しくなる。心理学者のバリー・シュワルツ(Barry Schwartz)氏は、選択肢の過多で意思決定が困難になる現象を「選択のパラドックス」と呼んでいる。また、選択肢の過多は「情報の過多」でもあり、情報が多すぎると選択のパラドックスを引き起こすことになる。
  3. インプットの過多:上で触れた「情報の過多」は、コミュニケーション、ないしはコラボレーションの高度化によって起こりやすくなる。実際、さまざまな関係者と密接なコラボレーション、コミュニケーションが取りやすい環境にあると、1つの意思決定を巡り、情報(選択肢やアイデア)をインプットしてくれる相手が過多になりがちとなる。そして、情報をインプットしてくれる人が過多になると、検討すべき選択肢、アイデアが増え、結果として、分析麻痺が助長されるのである。
  4. インポスター症候群:「インポスター症候群(詐欺師症候群)」とは「自分は周囲を偽って評価を得てきた人間に過ぎない」と思い込んでしまうこと、言い換えれば、自己を必要以上に過小評価してしまう症状を指している。この症候群にかかり、自信を失い「自分には決断を下す資格がない」と感じるときにも分析麻痺は引き起こされる。また、インポスター症候群が生む不適格感によって、物事に対して批判的になり、優柔不断にもなる。

分析麻痺の弊害

私たちの多くは、物事に対する選択を慎重に行うよう教えられてきた。また、物事を慎重に検討することなく決断を急ぎ、間違った選択をしてしまうことを「本能による絶滅」(参考文書 (英語))と呼び、そのような行動をとらないよう指導されてきてもいる。

ゆえに、分析麻痺の文脈の中で「考えすぎ」が否定されることに違和感を抱く人は多い。ただし、あらゆる場面で慎重さが必要とされるわけでもなく、慎重さもいきすぎると分析麻痺を引き起こし、さまざまな弊害を生じさせる。その弊害とは以下のようなものだ。

  • 意思決定の遅延:
    あらゆる可能性を検討しようとすると、迅速で効率的な意思決定を行うことはほぼ不可能となる。ビジネスの現場では、大抵の場合、良い判断を迅速に下すことが求められる。ところが、分析麻痺に陥ると、良い判断、あるいは最高の決断を下すことばかりに固執して「決断疲れ」に陥り、意思決定プロセスが停止したり、そのスピードが大きく低下したりする。
  • パフォーマンスの低下 :
    意思決定は精神的な負担を伴う作業だ。そして、検討する選択肢が多くなればなるほど、あるいは決断を慎重に下そうとすればするほど、意思決定はより過酷なものとなる。そして、意思決定のプロセスにかかわる人たち(つまり、チームのメンバーたち)の精神的な疲労と消耗が激しくなり、各人のパフォーマンスの低下へとつながっていくのである。
  • フラストレーションの増大:
    物事がなかなか決められず、優柔不断な状態が続くと、チームのメンバーたちは苛立ちを募らせていく。特に自分たちの仕事を進めるうえでの方向性や最終的な意思決定を待っている場合、メンバーの苛立ちはかなり強くなる。ちなみに、マッキンゼーによるある調査によれば「自分の組織は意思決定を迅速に行っている」と答えた人は、回答者全体の48%と半数に満たなかったという(参考文書 (英語))。これは残念な結果といわざるをえない。