アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンのTEAM Anywhereチームでグローバルヘッドを務めるアニー・ディーン(Annie Dean)が、働く場所に柔軟性を持たせることの意義について説く。

本稿の要約を10秒で

  • ナレッジワーカーの71%が少なくとも週に1回はリモートワークを行っており、ほとんどの企業で分散型のコラボレーションが行われている
  • 日常的にオフィスに出勤しているナレッジワーカーの半数は、出勤を強制されているがゆえにそうしているに過ぎない
  • 働く場所に柔軟性があり、オフィスへの出勤を強制されていないナレッジワーカーは、友人や家族と過ごす時間を増やしたり、心身の健康に気を配ったり、愛する人・モノをケアしたりと、充実した毎日を送ることができている

「分散型ワーク」こそが最良の働き方

組織やチームの生産性について考えを巡らせる際、社員たちの働く「物理的な場所」にフォーカスを絞ろうとするのはもはや時代遅れである。というのも、現代のナレッジワーカーの多くが、ネットワークを介して他者とつながり、コラボレーションしたり、情報を共有・交換したりする「分散型ワーク」を行っているからだ。

実際、アトラシアンとウェイクフィールド・リサーチ社が米国とオーストラリアで働くナレッジワーカー1,000人を対象に共同で実施した調査(以下、この調査を「共同調査」と呼ぶ)を見ても、週に1回以上オフィスから離れた場で仕事をしているナレッジワーカーは全体の71%に上っている。

また、今日における企業のチームの多くは、遠隔地にある自社の拠点の関係部門・部署や社外の取引先、さらには顧客とネットワークを介してつながり、コラボレーションしたり、コミュニケーションしている。その意味で、仮にチームのメンバー全員が1つの場所に集まって仕事をしているとしても、各メンバーは分散型ワークのスタイルで日々の仕事をこなしているのが一般的と言える。

「分散型ワーク」の定義

「分散型ワーク」とは、1つのチームの仕事が複数の場所で行われることを指す。現代のナレッジワーカーのほとんどは、オフィスで働いているかどうかとは関係なく、このスタイルで仕事をしており、ネットワークを介してともに働く人とつながり、情報を共有し、日々の意思決定を下している。

アトラシアンの社員たちも国・地域を跨いだコラボレーションを当たり前のように行っており、オフィスへの出勤は義務づけられていない。つまり、最高の仕事ができるのであれば、働く場所としてどこを選ぶかは問われていないわけだ。その代わりにアトラシアンでは、分散型ワークをどのように行うか、あるいはリモートにいる同僚たちとどのようにコラボレーションするかにフォーカスをあて、その継続的な改善に努めている。

このような時代では、社員がどこで仕事をしているかはあまり大きな問題ではない。それよりもむしろ、どのように分散型ワークを行うか、あるいは、これをいかに効率的で効果的にするかのほうが重要なテーマとなっている。

にもかかわらず、パンデミック(新型コロナウイルス感染症の流行)を契機にリモートワークを取り入れた企業の中には、社員たちの生産性低下や離職といった問題が発生すると、その原因を社員の働く場所に帰着させようとするところがある。こうした企業は、場所を生産性低下のスケープゴートにして、社員たちの働き方をオフィス中心型に戻そうとしがちだ。ただし、そのような判断は賢明のものとは言いがたい。

例えば、前出の共同調査によって、リモートワークの採用による生産性低下の主因が「従業員の働く場所がリモートに分散したこと」にはなく「会社が分散型ワークを効率化する適切なツールやルール、働き方を導入しておらず、旧来からあるオフィスワークの慣習をそのまま持ち込んでいること」にある事実が明らかにされている。

ちなみに、アトラシアンでは働く場所に柔軟性を持たせた分散型ワークこそが、企業と社員、そして社会全体にとってより良い働き方であると固く信じている。その信念のもと、理想的な分散型ワークの実現に長期的に取り組んでいる。

企業の半数近くが分散型ワークを機能させられていない

先に述べたとおり、今日のナレッジワーカーの71% は週に1回以上オフィスから離れた場所で仕事をしている。ところが、そうした人の中で「コラボレーションツールが会社から支給されている」と回答したのは51%でしかない。これはすなわち、フルタイム、ないしはパートタイムでリモートワークを採用しているチームの実に半数近くが、分散型の環境において有効なコラボレーションを行う機会を逃していることを意味している。加えて残念なのは、コラボレーションツールを会社から支給されている人のおよそ4人に1人(26%)が、支給されているツールや提供されているツールのトレーニングについて「有効ではない」と感じていることである。

以上に示したとおり、非常に多くのナレッジワーカーが効率的で効果的な分散型ワークをするのに必要なリソースを会社から与えられていない。また、単純にビデオ会議システムやチャットツールなどを社員に支給すればそれで分散型ワークの生産性が上がるわけではない。適切なツールを選り抜いたうえで、適切なサポートとツールの使い方に関するトレーニングを提供しなければ、社員たちはデジタルテクノロジーのパワーを自分たちの仕事に十分に役立てることはできない。

また、デジタルツールはあくまでも道具であって、その導入によって分散型ワークが自動的に効率的で効果的になるわけではない。これを効率的で効果的なものにするには、新しい働き方を導入する必要がある。それは、多くのチームにとって仕事のやり方を根本的に変えることを意味している。

アトラシアンにおける分散型ワークの取り組みとは

アトラシアンのミッションは自社内のチームを含めて「すべてのチームの可能性を解き放つ」ことにある。このミッションを遂行してきた結果として、今日ではアトラシアン社員の 92% が「どこからでも仕事ができる柔軟な働き方によって、自分のチームは最高の仕事ができている」と感じられるレベルに達している。

改めて言っておくが、こうした成果は働く場所の柔軟性を確保しただけでもたらされたのではない。こうした成果の多くは、アトラシアンのすべてのチームが効率的に働けるよう自社の製品や働き方をさまざまに試してきた結果であると言える。

また、分散型ワークに対するアトラシアンの取り組みは「Team Anywhere」と呼ばれる独自のアプローチと、アトラシアン製品、そして進化を続けるプラクティス集「Team Playbook」にもとづいて進められている。