働く場所に制約のないハイブリッドワークが一般化するなか、企業の組織、チームがコラボレートし、コミュニケートする主たる場が物理オフィスからデジタルワークプレイスへとシフトしている。それに伴いリーダーに問われているのが、組織・チームのパフォーマンスを高めるために、情報共有やコミュニケーションのあり方、働き方をどのように設計するかだ。その解をビジネスの最前線から探るべく、アトラシアン日本法人のエバンジェリスト、野崎 馨一郎が、ヤフー トラベル統括本部トラベル推進本部長の隼田 正洋氏に話を聞いた。ヤフーは、アトラシアンのコラボレーションツール「Confluence」を全社で活用している一社だ。

ハイブリッドワークにおける同期コミュニケーションのポジショニング

野崎:ここで隼田さんのチームの働き方と、コミュニケーションの取り方について改めてお聞きしたいと考えます。ヤフーではリモートワーク中心の働き方を全社的に採用されていると記憶していますが。

隼田:おっしゃるとおりです。私のチームも含めてヤフー全体はリモートワーク主体で働いていて、チームごとに必要なタイミングでオフィスに集まり、ミーティングを行うといったワークスタイルをとっています。そのため、オフィスは社員が自由に使えて、チームが都度集まって同期コミュニケーションがとりやすい設計になっています。

野崎:そうしたハイブリッドワークにおいて、Confluenceなどを使った非同期コミュニケーションとビデオ会議やオフィスを使った同期コミュニケーションをどのように位置づけ、使い分けているのでしょうか。

隼田:例えば私のチームでは、企画のネタやタスクの進捗、プロダクトの仕様書、マニュアルなど、あとから振り返り、参照する必要のある情報の伝達、共有はすべてConfluenceやチャットツールを使った非同期コミュニケーションで行っています。一方の同期コミュニケーションは、文字だけでは伝えにくい細かなニュアンスを伝えたり、対面でお互いの様子を確認し合ったり、関係者で集まってブレインストーミングをするために行っています。

野崎:同期コミュニケーションという意味では、ヤフーでは1 on 1ミーティングもかねてから全社で展開していますね。

隼田:そのとおりです。2012年から1 on 1ミーティングを行っています。

ヤフーにおける1 on 1ミーティングの位置づけについて説明する隼田氏

野崎:1 on 1ミーティングを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

隼田:きっかけは、ヤフーの当時の社長、宮坂学さんが「爆速経営」というコンセプトを打ち出したことです。それに呼応して人事担当役員が、組織を強くして生産性を上げるには、上司と部下とのコミュニケーションをより緊密にする必要があるとして、1 on 1ミーティングを制度化したのが始まりです。

野崎:つまり、1 on 1ミーティングは爆速経営を実現するための一手だったということですか。

隼田:そういえます。宮坂さんが「爆速経営」を打ち出したころ、ヤフーの各種サービスにおける競合が勢いを増していたんです。ヤフーは多様な情報サービスを提供していますが、それぞれの専門メディアが成長し、結果として専門メディアの規模、ビジネススピードがヤフーで当該のサービスを担当する組織を大きく上回り始めていました。そのような背景から、社員一人一人の才能と情熱を最大限に引き出し、組織・チームのパフォーマンスを大幅に高めなければならないという話になり、その一手として1 on 1ミーティングがスタートしたということです。

野崎:なるほど。1 on 1ミーティングの効果はどうだったのでしょうか。

隼田:チームのリーダーが、メンバー各人に対する理解を深め、結びつきを強めることにつながったと見ています。上司が部下から日常的に業務報告を受けているとしても、部下たちがどのような悩みを抱えているのか、あるいは、どのようなことで躓(つまず)いているのかは、1対1で対話しなければわかりません。また、そうした悩みや課題を聞き出し、解決策をともに考えてあげることで、メンバー各人のパフォーマンスは高まっていきます。ヤフーでは、そうした効果に期待して1 on 1ミーティングを始め、以降、各サービスの競争力は向上しました。そう考えれば、1 on 1ミーティングがチーム力の強化に相応の効力を発揮したと見て良いのではないでしょうか。

野崎:それは1 on 1ミーティングのすばらしい効果ですね。1 on 1ミーティングは「ここ数年の流行りのもの」と表現される傾向もありますが、数多くの1 on 1を経験した身としては、これはチームのメンバーだけでなくマネージャーにとっても有効な仕組みであり、定着して欲しいと感じてます。そこでお聞きしたいのですが、隼田さんのチームではいま、1 on 1ミーティングをどのように運用されているのですか。

隼田:毎週1回の頻度でチームのメンバーたちと1 on 1ミーティングを行っています。ヤフーの場合、1 on 1ミーティングの開催頻度や話す内容はチームごとに異なりますが、私は現在、メンバー各人と雑談を交わす場として使っています。

野崎は1 on 1ミーティングを一時的な流行ではなく恒常的に継続するべき、と指摘する

同期コミュニケーションの効率化にもConfluenceを生かす

野崎:最後にコミュニケーションを有効、かつ効率化するためにツールをどのように活用しているかについてもお聞かせください。隼田さんは、Confluenceを情報共有だけではなく、プレゼンテーションにも使われているとお聞きしましたが。

隼田:ええ、おっしゃるとおりです。社内でのプレゼンテーションにはConfluenceを使っています。

野崎:私もアトラシアンに入社してから、プレゼンテーションに専用のツールではなくConfluenceを使うようになったのですが、隼田さんの場合も、Confluenceの導入を機にプレゼンテーションというコミュニケーションの取り方、あるいは仕事のやり方を変化させたということですね。

隼田:そうですね。それは私だけではなく、ヤフー全体についてもいえることです。当社はかつてプレゼンテーション専用のツールで企画書を作成し、承認を取るという文化でしたが、いまは多くの部門が目的に応じて企画書や仕様、ターゲット顧客などの説明にConfluenceを使っています。

野崎:その文化はどのように醸成されたのでしょうか。

隼田:例えば、Confluenceを使った企画のプレゼンテーションの場合、内容に対するフィードバックをその場で企画書に反映させ、保存し、共有するといった作業が簡単に行えます。そうした効率性を目の当たりにすると、誰もが「自分もそうしたい」と考えるようになり、Confluenceによるプレゼンテーションが自然に広まり、徐々に定着していったように感じます。

野崎:Confluenceによる社内コミュニケーションの変化、あるいは仕事の進め方の変化という意味では、企業の経営幹部がConfluenceなどを使って自分の想いを発信したり、社員と対話したりするようになれば、組織全体の強化やビジネススピードの向上にも繋がるのではないかと個人的には考えています。事実、例えば、アトラシアンの2人の創業者は、社内ブログやビデオメッセージなどをConfluenceに公開して発信を行っており、それによって経営トップとの距離が非常に近く感じられたり、経営の戦略、ビジョンも社員が直接すぐに受け取れます。もちろん、伝統的な企業の経営幹部がConfluenceを自ら使い、情報を発信するのは少しハードルの高いことかもしれませんが。

隼田:興味深い取り組みですね。ヤフーでも、社長の年頭挨拶や組織全体に影響のある発表についてはConfluenceに公開されていて、マネジメント層のメッセージ発信や、社内報のプラットフォームとして利用されています。

野崎:その使い方はさまざまな企業で取り入れやすそうですね。最後に1つだけ教えてください。Confluenceの機能の中で、隼田さんが最も気に入っているものは何でしょうか。

隼田:Confluenceのすべての機能について満足していますが、最も気に入っている機能をあえて一つ挙げるとすれば、それは文書の変更履歴をたどれる機能です。Confluenceを使うと、文書が現在の内容になるまでにどのようなプロセスを経たのかがわかります。それが分かると、大切な情報源や考え方は何だったのかをつかむことができます。これがメールですと、事あるごとに関係者に変更の連絡をしたり、重要な情報源の在り処を知らせたりしなければなりません。その手間がないというのは大切なんです。

野崎:なるほど、出来事の瞬間、瞬間を切り取り、メールで関係者に伝えるのも良いかもしれませんが、完成した文書や意思決定の内容から過去を振り返るのも重要ですし、そのほうが効率的ですね。

隼田:そう考えています。

野崎:本日は貴重なお話しをお聞かせいただき、ありがとうございました。

自社のロゴを入れてカスタマイズされたヤフーのConfluenceの画面