アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのライターである、カット・ブーガード(Kat Boogaard)が、強力なチームづくりに役立つ7つのチームワークモデルと、その活用法について紹介する。

モデル4: Katzenbach & Smithモデル

図4:チームワークのKatzenbach & Smithモデル

■活用の場面:個々のメンバーがチーム内のコラボレーションに苦労しているとき

チームの形態や規模はさまざまだが、すべてのチームのメンバーは、共通のゴールに向けて働かなければならないと言える。そうしたチームワークを形成するうえで役に立つモデルと言えるのが「Katzenbach & Smithモデル」だ。

このモデルは、ジョン・カッツェンバック(Jon Katzenbach)氏とダグラス・スミス(Douglas Smith)氏が、数多くのチームの仕事を綿密に調査した結果として1993年に発表したものだ。両氏によると、すべてのチームは以下の3つのゴールに向けて仕事をしているという。

  1. 集合的成果物の創出(Collective work products)
  2. 業績の達成(Performance results)
  3. 個人の成長(Personal growth)

そして両氏は、これらのゴールに到達するには、チームは以下のような要件を満たす必要があると指摘している。

  • 責任(Accountability):チームは、チームと個々人に課せられた責任を果たすことが義務づけられており、そのために必要とされる必要最低限の人的リソースによって構成されていなければならない。
  • コミットメント(Commitment):チームは、自分たちの仕事に対して十分にコミットしなければならず、それには明確で具体的な目標と目的意識、さらには目標達成のためのアプローチの共有が必要とされる。
  • スキル(Skills):チームは、問題解決と職務遂行に必要とされる技術、機能、対人関係構築のすべての領域で十分なスキルを備えていなければならない。

これらの要件を満たしたチームは、与えられた仕事を確実に遂行し、意図どおりの成果を上げ、その過程で個人的な成長も促せる可能性が大きいと言える。

■ Katzenbach & Smithモデルの長所

  • このモデルは、チームに求められる成果と、それを生むために必要とされる要素に焦点を絞っているので、直感的な理解がしやすい。
  • モデルのピラミッド内に示された成功要因について、それぞれ特別な情報が提供されている。

■ Katzenbach & Smithモデルの短所

  • このモデルでは、チームを可能なかぎり小規模にすることを推奨しているが、それは組織にとって常に現実的ではない。
  • のモデルでは、チームがゴールに到達するための要件を示しているものの、チームのパフォーマンスや健全性を維持・向上するために必要とされる要素については定義されていない。そのため、チームの状態を診断するためのツールとしては役に立たない。

モデル5: T7モデル

図5:チームワークのT7モデル

■ 活用の場面:チームが成功する要因を俯瞰的にとらえたいとき

チームの有効性を改善しようとするリーダーは、チームの有効性に影響を与えている内的な要素ばかりに意識を向けがちになる。ただし、チームは単独で存在しているわけではなく、その有効性は、内的な要素だけではなく外的な要素によっても上下することになる。

そうした要素を俯瞰的にとらえる際に有効なのが「T7モデル」である。このモデルは、マイケル・ロンバード(Michael Lombardo)氏とロバート・アイヒンガー(RobertEichinger)氏が1995年に開発したものであり、チームの有効性に関する7つの要素(うち5つは内的要素で2つは外的要素)を特定している。

このうち、5つの内的要素は以下のとおりだ。

  1. タレント(Talent):必要なスキルと専門知識
  2. タスク(Task):要求された職務を完遂する能力
  3. チーム力(Teaming):ともに働く力
  4. 共通のゴール(Thrust):目指すべき目的・目標の共有
  5. 信頼(Trust):チームメンバー同士の信頼

また、2つの外的要素は以下のとおりである。

  1. チームとリーダーの相性(Team-leader fit):リーダーがチームとどの程度うまくやれるか
  2. チームに対する組織のサポート(Team support from the organization):組織がどれだけチームをサポートしているか

■ T7モデルの長所

  • チームを成功へと導く内的・外的要素を俯瞰してとらえることができる。

■ T7モデルの短所

  • チームのメンバーやリーダーではコントロールの難しい外的要素を、どのように獲得、ないしは改善するかについての情報が提供されていない。

モデル6: LaFasto & Larsonモデル

図6:チームワークのLaFasto & Larsonモデル

■ 活用の場面:チームにおける個々の構成要素を把握したいと思うとき

「LaFasto& Larsonモデル」は、ビジネスリーダーであるフランク・ラファスト(FrankLaFasto)氏とカール・ローソン(Carl Larson)氏が2001年に開発したものだ。両氏は、チームワークの研究に多くの資金を投じ、数百人ものチームメンバーやリーダーの仕事を調査して、チームを成功へと導く原動力について分析を重ねた。結果として、両氏がたどり着いた結論は、チームの成功には5つの要素が必要であり、それらはチームを編成する初期段階から考慮すべきポイントであるというものだ。その5つの要素とは以下のとおりである。

  • 人材(Team member):チームが成功するためには、適切な人材でチームを構成することが必須となる。
  • 人間関係(Team relationships):チームメンバーは、相互にうまく機能し、生産的な関係を保てるようでなければならない。
  • 問題解決(Team problem solving):チームは仕事に集中し、オープンにコミュニケーションをとり、前向きな姿勢で問題に取り組む必要がある。
  • リーダーシップ(Team leadership):チームには適切なメンバーだけでなく、適切なリーダーが配置されている必要がある。
  • 組織環境(Organizational environment):組織全体がチームの障害を作らず、チームに対して適切な支援とリソースを提供するようでなければならない。

上記の要素から成るLaFasto & Larsonモデルは、チームの最小構成要素であるメンバーから、チームを取り巻く環境までを詳細に観察したうえで定義されたモデルと言える。

■ LaFasto & Larsonモデルの長所

  • 非常に綿密な調査と分析に基づいて設計されている。
  • 優れた人材でチームを構成するだけでは成功につながらないことが認識されている。

■ LaFasto & Larsonモデルの短所

  • チームのリーダーやメンバーが5つの要素を確保するための方法が定義されていない。

モデル7: Hackmanモデル

図7: チームワークのHackmanモデル

■ 活用の場面:有効なチームがどのようなもので、どうすればそこに到達できるをつかみたいとき

「Hackmanモデル」は、米国ハーバード大学の教授で、チーム論の専門家でもあるリチャード・ハックマン(Richard Hackman)氏が開発したものだ。同氏は、このモデルを開発するに当たり、音楽アンサンブルチームから航空機のコックピットクルーまで、さまざまなチームを調査し、分析を重ねたという。その成果を2002年に出版した書籍『Leading Teams: Setting theStage for Great Performances』にまとめ、その中でチームがうまく機能する5つの条件について次のように定義している。

  1. 真のチーム(Real team):チームは明確な任務と条件を持ち、自分たちの役割を理解していなければならない。
  2. 説得力のある方向性(Compelling direction):チームは具体的な目標を有していなければならない。
  3. 実行可能な構造(Enabling structure):チームは熟考されたプロセスとワークフローを有していなければならない。
  4. 支援の環境(Supportive context):チームは、必要なリソースや情報にアクセスできるようでなければならない。
  5. 専門家によるコーチング(Expert coaching):適切なリーダーシップとトレーニング、メンタリングによってチームにベネフィットをもたらさなければならない。

ハックマン氏によると、これらの条件をすべて満たしたとき、チームは有効性を発揮することができると説明する。さらに同氏は、上の条件を満たした「効果的なチーム」を「ステークホルダーへの貢献度が高く、自律的に能力を高めることができ、かつ、自分たちの存在意義を見出せるチーム」と定義している。

■ Hackmanモデルの長所

  • チームを構成する個々のメンバーから、コラボレーションを遂行するうえでのチーム内のコンテキストに至るまで、チームのあらゆる側面をカバーしている。

■ Hackmanモデルの長所

  • このモデルでは、特定の個人、あるいはチームごとにモチベーションを高める条件が異なる可能性があることを考慮していない。例えば、ワークスタイルの違いから、チーム内の誰かにとって共通の業務プロセスやワークフローの採用が最適ではない場合がある。

チームワークモデルを活用しチームワークのパフォーマンスアップを

最高のチームとは何かの答えは1つではない。ただし、上述したチームワークモデルは、少なくとも優れたチームに必要とされる要素や行動を明確にするうえでは役に立つはずである。ゆえに、これから新しいチームを作る人にとっても、今いるチームをより優れた組織にしたい人にとっても、今回した紹介したモデルが、チームに最高のパフォーマンスを発揮させるための道しるべになる、あるいはヒントをつかむための有効なリソースになる可能性は高いと言える。ご興味にある方は、ぜひ、活用いただきたい。