アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのコンテンツリード、アシュリー・ファウス(Ashley Faus)が「コンテキストスイッチ」による脳へ負担を軽くし、オーバーヘッドを軽減する方法を紹介する。

見えてきた3つのこと

私は今回、コンテキストスイッチによる脳の負担を軽減すべく、リモートワーク中の自宅でいろいろと働き方を変えてみた。それによって以下の3点が明らかになったので、ご報告しておく。

実験結果 1:脳の疲労の根本原因は自分の好きな働き方にあり

人の働き方(あるいは、働き方に対する人の志向)は大抵の場合、「ワークライフバランス重視型」と「ワークライフインテグレーション型」のいずれかに類別できる。
前者は仕事とプライベートの時間を厳密に分けてバランスをとろうとするタイプだ。後者は、自分の時間とエネルギーをより連続的にとらえながら、1日の中でプライベートと仕事の時間を自由に織り交ぜていくタイプである。
私はどちらかといえばワークライフインテグレーション型に属している。そのため、複数のトピックと、思考・タスクの深さをさまざまに切り替えながら、1日を過ごすことが多かった。それが結果的に、私の脳に相当のストレスをかけていたのである。
本来的には、私は次から次へと仕事をするのが好きである。インスピレーションを感じながら自由に仕事をしていたいと常に願っている。ゆえに、1つの仕事に集中してバッチ処理的(一括処理的)にタスクをこなすスタイルは好きではなかった。ところがやってみると一括処理的にタスクをこなすほうが、脳の疲労が確かに少ない。
1つの仕事に集中してバッチ処理的にタスクをこなすのは、いまでも嫌いである。ただし、だからと言って、コンテキストスイッチのために“高いコスト”を支払い続け、毎週の金曜日に疲れ切り、寝る以外に何もしたくなくなるような生活を続けていて良いわけがない。したがって、脳への負担を抑えながら、働き方に関する自分の欲求を満たす術(すべ)を見出さなければならないのである。

実験結果 2:タスクの切り替えよりも思考の切り替えのほうが簡単である

私はチームのマネージャーとして、かなりの時間をミーティングに費やしている。その中で今回改めて気づいたことは、1つのミーティングの中で、思考の深さやトピックを変化させても、それほどの負担にはならないという点だ。

それに対して、思考の切り替えにタスクの切り替えが伴うと、かなりの負担が脳にかかる。例えば、自分のチームにおける向こう3年間の中期プランを書いている最中に、SNSで昨日観た映画についての感想をツイートしたりする──。そんなタスクの切り替えによって、脳への負担は一気に高まるのである。

実験結果 3:タスクを“ビッグピクチャー”に当てはめると脳の認知負担が減る

上記のとおり、タスクの切り替えによる脳への負担は大きくなる。ただし、仕事に関するすべてのタスクを、いわゆる「ビッグピクチャー」につなげてとらえるようにしたところ、タスクの深さやトピックの切り替えによる脳への負担が相対的に小さくなった。これにより、仕事時間におけるトピックとタスクの組み合わせに、十分な自由度を持たせることが可能になったと言える。

ちなみに私は、プロジェクトのバランスを月単位でとるようにしている。もちろん、プロジェクトについては長期的な計画を立てたり、長期的なスパンの中で幾度もブレインストーミングを行ったりする必要がある。また、長期的な視野でタスクの優先順位を決めておくことも有効である。ただし、私の場合、タスクを月ごとに整理して、切り替えを行っていくのが好きで、それが自分の性分にフィットしているようなのである。

おすすめのオーバーヘッド低減テクニック

以上に示した実験結果はあくまでも私のケースである。すべての人が私と同じことをして、コンテキストスイッチによる脳への負担を軽減できるわけではない。ただし、あらゆるナレッジワーカーに共通して使えそうなテクニックがないわけではい。以下、そうしたテクニックを3つご紹介する。ぜひ、参考にされたい。

テクニック 1:自分の仕事を明確化する

今日、米国における多くのナレッジワーカーが、デビッド・アレン氏が考案した「Getting Things Done」メソッドを愛用している。これは一定期間内にやるべきことをすべてリストアップし、優先順位をつけるという手法であり、これによってコンテキストスイッチによる脳への負担が軽減できる可能性は大きい。また、付箋紙に「今日やるべきことのトップ3」を書き、壁などに貼っておくのも良い方法である。いずれにしろ大切なのは、一定期間内の目標を見える化することである。

テクニック 2:評価基準を明確にする

各タスク、各プロジェクト、各日の「成功」とは何なのかを定義し、そのうえで毎日の成果を計測する方法を確立することで、自分のタスクを客観的に、かつ定量的に評価できるようになる。これによって、チームメイトやステークホルダーと透明性のある会話をして、自分のどの活動が彼らに最も大きなインパクトを与えるかを正確に判断することも可能になる。

テクニック 3:正直にタスクの優先順位をつける

自分の精神的・肉体的・感情的なエネルギーを、どのタスクにどのように配分するか──。おそらく多くの人が、この判断に迷うはずである。そもそも、すべてのタスクが同じ重要度ではなく、あらゆるタスクに同じエネルギーを注ぎ込むことはできない。また、タスクには自分が得意とするものと、そうでないものもある。したがって、自分の能力と志向に正直になりながら、自分に振り分けられたタスクの優先順位をどのようにつけていくかを、自分自身の心とチームメイト、そしてチームのステークホルダーたちとよく話し合うことが大切である。