戦略1: メンバーを信頼し、挑戦を後押しする
体操競技に少しでも関心がある方ならば、デニス選手のパフォーマンスを視聴して、それが体操競技における伝統的な床演技ではないことにすぐに気づかれるはずである。デニス選手が演技で使用している楽曲は、標準的な体操選手が使うそれとは異なっており、振り付けにしても伝統的に「良い」とされてきたものとは違って見える。そうしたリスクを冒す勇気を彼女が持てた理由はおそらく、チームに創造とリスクテイクの文化がしっかりと根づいており、デニス選手の挑戦をコーチ(つまりは、チームリーダー)やチームメイトが自然に受け入れ、応援したためであろう。
このように、個々の強みを発揮できるように支援することは、チーム全体にプラスの影響をもたらす可能性が大いにある。
戦略2: 頻繁にコミュニケーションをとる
私たちビジネスパーソンは、年次、あるいは半期のパフォーマンス評価(業績評価)を受けたり、評価の場で管理職になる可能性についての説明を受けたりすることに、恐怖に近い感情を抱いてきた。さらに悪いことに、従来型の業績評価は多くの場合、形式的であり、日々のワークフローに組み込まれたものでもない。ゆえに、評価のプロセスそのものが、日常業務から完全に切り離された形骸化した儀式になってしまうことも多かった。
仮に、体操のコーチが1年に1回のセッションで、年間のフィードバックを選手に伝えるとしたらどうなるかを想像してください。そのようなパフォーマンス管理では、選手たちは、自分のアプローチを日々修正することができず、間違ったアプローチを、年間を通じて続けてしまうかもしれません。
──アマンダ・ゴーマン氏
したがって、従来型の業績評価は、個人のパフォーマンス向上にはほとんど役に立たないと考えたほうが無難である。チームのメンバー各人のパフォーマンスを向上させるより良い方法は、個々のメンバーと信頼関係を築き、それぞれの達成を祝い、各人の強みを最大限に発揮させる努力を払うことである。
結局のところ、組織の顧客にサービスを提供するうえで最も重要な役割を担うのは現場で働く従業員であり、チームのメンバーである。そのメンバーに対してサービスを提供し、それぞれのパフォーマンスを発揮させる責任がリーダーにはある。
そして、チームのメンバー各人のパフォーマンスを高めるカギは、コミュニケーションの量と質にあると言える。例えば、メンバーの仕事に対するフィードバックは、日次、ないしは週次で行うようにすることが大切である。これにより、業績評価を日常化することができる。結果として、メンバー全員が年間を通じてパフォーマンス向上に取り組むようになり、それぞれが優れた仕事をして、年次目標を達成するのがより簡単になるはずである。
言うまでもなく、こうしたパフォーマンス管理を軌道に乗せるには、フィードバックを提供する場を定期的に、適切な頻度で設けることが必須となる。また、そうした場をつくる機会は少なくない。
例えば、1on1ミーティングやチームミーティングを週次で行ったり、OKR (Objectives and Key Results)」の進捗確認を短いスパンで行ったりすることは可能である。また、どのチームでもプロジェクトの進捗確認は適宜行っているはずである。そして、バーチャルチームの場合でも(アトラシアンのすべてのチームがそうであるように)、上記のミーティングはすべてビデオ会議で行うことが可能だ。
ちなみに週次の1on1ミーティングでは、以下の3つの質問を投じることをお勧めしたい。
- 現在(この1週間)の優先事項は何か?
- どのような支援が欲しいか?
- いまの状況をどのように感じているか?
これらの質問は、より深い議論を促し、相手にとって意味あるフィードバックを提供することを可能にする。加えて、1on1ミーティングが単なる仕事の進捗確認の場として形骸化してしまうのを防ぐこともできる。
チームのリーダーはメンバーから仕事に対するフィードバックを得ることも大切だ。チームが目標に向かって走り始めると、コラボレーションのあり方に関してさまざまな改善案がメンバーから出される。その際には、彼らの意見に真剣に耳を傾け、提案をしてきた一人一人に感謝の意を伝えながら、適切な対応をとることが重要だ。
チームのメンバーから仕事に対する意見や要望を聞き、改善に取り組むことは、彼らに自らのパフォーマンス管理プロセスに参加させる取り組みでもある。この取り組みは、働くことに対するメンバーのモチベーションや、チームに対するエンゲージメント(自発的な貢献意欲)を高める有効な一手と言える。