アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアンのデータサイエンティスト、アリク・フリードマン(Arik Friedman)が、コロナ禍によるリモートワーク(テレワーク)によって、就業者のワークライフバランスが危機的状況にあることを数値で示す。

リモートワーカーの働き方をデータで示す

私はアトラシアンでプリンシパルデータサイエンティストとして働いている。現在の主な役割は、当社の製品の使用状況を分析することだ。当社の製品を使う、世界数百万人分の使用データ(ログ)を収集・分析して、製品がどのように使われているかを割り出すのがメインの仕事である。

リモートワークのオフィス(つまりは、自宅)でこの職務をこなしているとき、ふと、あることに気がづいた。それは、これまで蓄積してきたデータを活用すれば、新型コロナウイルス感染症対策(=リモートワークの実施)が、ビジネスパーソンのワークライフバランスにどのような影響を及ぼしているかを調べられるかもしれない、という気づきだ。

そこで私は、チームメイトでデータサイエンティストでもあるぺドロ・ケイロス(Pedro Queiroz)とプラビーン・ビサニ(Praveen Bysani)、そして、シャヒン・エリン(Shahin Elliin)の3人と調査を実施することにした。以下に、その調査結果のエッセンスを報告する。

働く時間の増大は2020年3月から始まっていた

私たちが、使用状況の分析に選んだアトラシアンの製品はプロジェクト管理ツールの「Jira Software」と社内Wiki型情報共有・コラボレーションツールである「Confluence」、そしてソースコード管理ツールの「Bitbucket」の3つだ。

これらのツールでは、さまざまな機能が、さまざまな用途に使われるが、今回の分析で突き止めたかったことは、利用者の仕事のパターンがどう変化したかという比較的シンプルな事象である。そのため、製品のUI(ユーザーインタフェース)と利用者との対話が発生する部分のイベントに焦点を絞りながらデータの分析を進めた。今回分析したデータには「ドキュメントの作成」「チケットの更新」「コードレビューへのコメント」といった動作が含まれている。また、就業時間(大抵の国では月曜日~金曜日)における就業開始と終了を計測する指標として、ユーザーのアクティビティを5分間隔で丸めて使用している。

こうしたデータ分析でまず分かったことは、コロナ対策としてオフィス閉鎖(ロックダウン)が世界規模で実施され始めた3月以降、各国の就業者(正確には、アトラシアン製品の利用者)の労働時間が明らかに増大していることだ。下図(図1)のとおり、就業者の労働時間は3月に一気に増大し、4月の時点でほぼピークに達し、そのまま高止まりの傾向を示している。

図1:ロックダウン前後の労働時間の変化

上図は4カ国分のデータしか示していないが、私たちは今回、日本を含む10数か国分のデータを集計・分析している。それに基づき、ロックダウン後──つまりは、就業者がリモートワークの体制に入ったのちに何分程度の労働時間の増加が見られたかを示したのが以下の図2である。

図2:各国におけるロックダウン後の労働時間の増分

これは、ロックダウン前(各国の就業者がおそらく通常勤務していたはず)の2020年1月・2月のデータを集計し、その集計結果と、ロックダウン後(各国の就業者がリモートワークを余儀なくされたのち)の4月・5月の集計結果とを比較して差を割り出したものである。

ご覧のとおり、イスラエルやインドではロックダウン後に労働時間がかなり顕著に増えていることが分かる。それに比べると韓国では、さほどの増加は見られていない。ただし、全体の傾向としてはすべての国が同じと見なせる。

では、勤務中のペース配分はどうだろうか。ロックダウン後において、就業者による仕事の強弱のつけ方に何か変化は見られるのだろうか。それを示したのが以下の図3である。

図3:ロックダウン前後における仕事上の強弱(アクティブ度)の変化

このグラフは、1日における各時間のアクティビティ量を、1日の総アクティビティ量に占める割合として算定し、プロットしたものである。

もっとも、このグラフだけではロックダウン前とロックダウン後にそれほど大きな変化がないように見える。ただし、ロックダウン前と後のユーザーアクティビティの傾向をより微細に見ていくと、明確な違いが見えてくる。

例えば、下図(図4)は、ユーザーアクティビティが、「ロックダウン前のほうがよりアクティブだった時間」を「オレンジ色」にし、「ロックダウン後によりアクティブなった時間」を「青色」にして、アクティビティの変化をより鮮明にしたものである。この結果を見ると、ロックダウン後は、一般的な就業時間前後も仕事をしている就業者が多いことが分かる。この結果は、オンとオフの切り替えがうまくいっていない就業者が多いことを示唆している。

図4:ロックダウン前後のアクティブ度の偏り