新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)がまだ猛威を振るっていた2020年4月下旬から5月初旬にかけて、アトラシアンでは、テレワーク(在宅勤務)に関する日本のビジネスパーソンのアンケート調査を行った。この調査に基づき、本稿では、在宅勤務を実施した“上司たち”、“部下たち”の想いについてレポートする。
なお、本調査に基づくもう一つの記事『突然の在宅勤務:ビジネスパーソン584人の本音 ~ コロナで「初めての在宅勤務」編』もすでに掲載されているので、こちらも併せてお読みいただきたい。

上司と部下が意図せず離れ離れになったとき……

今回のアンケート調査は、『ITmediaビジネスオンライン』による協力の下、4月下旬から5月初旬にかけてオンラインで行った。匿名制の下で回答を募り、692件の有効回答を得ている(回答者の基本属性については本稿末を参照)。

本稿の関連記事『突然の在宅勤務:ビジネスパーソン584人の本音 ~ コロナで「初めての在宅勤務」編』で明らかにしたとおり、692人の回答者のうち、584人(回答者全体の84.4%)が、コロナ拡大の防止策として在宅勤務を実施している。また、コロナをきっかに(キャリアの中で)初めて在宅勤務に取り組んだ向きも実施者全体の64.0%に上った。言うまでもなく、コロナ対策としての在宅勤務は、有事における事業継続の取り組みであり、どの組織も、自らのニーズや要望に従って在宅勤務を実施したわけではない。つまり、コロナ対策として在宅勤務を遂行した回答者584人の全員が、自分たちの意図やニーズとは無関係に、ともに働く同僚・上司・部下と離れ離れになって働かざるをえなくなったわけだ。

本稿では、そうした状況に置かれた584人の回答を、職位で切りながら、在宅勤務に対する上司と部下の困りごとの違いや評価の違いについて見ていくことにする。

なお、在宅勤務を実施した回答者584人の職位の分布は、図1に示すとおりである。

図1:在宅勤務実施者の職位分布

以下の記述では基本的に、「一般(従業者)」を「部下」、「係長・主任クラス」以上を「上司」と見なして、アンケート結果をまとめている。また、以下の記述では、アンケート結果の可視性を高めるために、「係長・主任クラス」から「部長クラス」までを、「ミドルマネージャー層」としてまとめているデータもある。その点もあらかじめご了承いただきたい。

職位カットで見た在宅勤務の困りごと

それではそろそろ、在宅勤務を巡っての上司と部下の違いについて確認していきたい。

まず点検したいのは、在宅勤務を実施する中での「困りごと」に、上司と部下に違いがあるかどうかである。その観点から、アンケート回答をまとめた結果が以下の図2だ。

図2:在宅勤務での「困りごと」(回答者の職位別/複数回答/N=584)
(出典:アトラシアン 在宅勤務アンケート調査2020年5月)

ご覧のとおり、在宅勤務での困りごとに、職位による大きな違いは見られていない(経営層・役員クラスは、困りごと自体が少なかった)。とはいえ、職位によって微妙な違いがあることはある。

例えば、ミドルマネージャーは、自宅におけるIT環境の不備や働く環境の不備を問題視する傾向が一般従業員よりも強く、対する一般従業員は、「仕事のペースをどう作るか」「オン/オフの切り替えをどうするか」で悩む傾向が強いようである。今回のアンケート調査だけでは、こうした違いがなぜ生まれたかの正確なところはつかめなかった。ただし、職場や仕事に対する一般従業員と上位職者との「慣れ」の違いが、この結果を生んだとの推測はできる。例えば、上位職者のほうが、一般従業員よりも、社歴が長く、オフィスの環境により慣れていて、オフィスとは異なる環境で働く免疫力がやや低いことが想定される。ゆえに、コロナ対策のために急いで整えた自宅のIT環境や“仕事場”に対して、やりにくさや不満をより強く抱いた可能性がある。また、上位職者は、一般従業員に比べて自分の仕事自体には、より慣れている(はずである)。そのため、在宅勤務時におけるペース配分やオン/オフの切り替えについても、一般従業員ほどの苦労はなかったことが考えられる。

チームメイトに会えなくて「寂しい」は少数派

一方、「同僚・上司・部下が何をしているかが見えづらい」という点は、一般従業員・ミドルマネージャーともに困りごととして挙げる比率が高かった。また、この課題は、マネジメントにかかわる問題であることから、それを困りごととして挙げる比率は、ミドルマネージャーのほうが、一般従業員よりも若干高くなっている(このテーマのより詳しい内容については、後述する記述を参考にされたい)。

また、同僚・上司・部下に会えなくなって「寂しい」と感じる傾向も、一般従業員よりミドルマネージャー層のほうが若干強い。ただし、その差は小さく、しかも、チームのメンバーに会えなくて「寂しい」と感じる回答者の比率自体も10%前後とかなり少ない。予想としては、「寂しい」と感じている向きが、もう少し多くいると考えていた。だが、実際のビジネスパーソンはかなりドライなようである。

「運動不足で太る」「印刷できない」「ハンコが押せない」も共通の悩み

在宅勤務を巡る困りごとについては、上記以外についても、回答者からさまざまな課題が寄せている。ただし、そうした困りごとについても、職位による大きな違いはなかった。ちなみに、共通して多かった困りごとは、以下のような「健康問題」と「環境不備」の問題である。

健康問題
1.「あまり動かないので太る(メタボになる)」
2.「運動不足で不健康になる」
3.「椅子や机が職場と違うので足腰が痛くなる」
環境不備問題
4.「(自宅にプリンタがない、ないしは自宅のプリンタが貧弱で)印刷ができない」
5.「自宅では会社の書類にハンコが押せない」
6.「必要書類が手元にないから仕事にならない」
7.「必要書類が会社から持ち出せないので仕事にならない」

健康問題は在宅勤務の世界共通テーマ

このうち、上記1や2の「太る/不健康になる」という問題は、食事に気をつけたり、仕事の合間に身体を動かす(ストレッチや大声で歌う、といった)習慣を身につけたりすることで解決しうるものだ。そのため、比較的簡単に解消できそうにも思える。

ただし、そうした自己管理は簡単そうでなかなか難しく、ゆえに、この問題は、フルタイムで在宅勤務をするうえでの留意点として、コロナ以前から(世界的に)よく指摘されてきた。しかも、コロナ禍の下での在宅勤務では、散歩に出たり、近所のスポーツジムや公園で汗を流したりすることも間々ならないような状況だった。そう考えれば、コロナ対策としての在宅勤務で運動不足に悩まされる人が多く出たのは、当然の結果と言えるかもしれない。

なお、在宅勤務での運動不足の解消やカロリーコントロール、在宅勤務中に自宅にいる子どもとの付き合い方など、在宅勤務に関する困りごとを解決するための方法については、「チームの教科書」内コラムなど、アトラシアンの情報ソースを併せて参照されたい。

問われるペーパーレス化の進展度

一方、上記の環境不備問題──すなわち、「(自宅にプリンタがない/自宅のプリンタが貧弱で)印刷ができない」「自宅では会社の書類にハンコが押せない」「必要書類が手元にないから仕事にならない」「必要書類が会社から持ち出せないので仕事にならない」といった点は、業務/文書のペーパーレス化、ないしはデジタル化によって、仕事の効率性を高める取り組みが、会社の中でどの程度まで進んでいたかにかかわる問題と言える。

もちろん、業務の中には、大判プリンタで資料を印刷し、それを見ながら仕事を進めたほうが効率的なものもある。ただし、そうした仕事を自宅でこなすために、高額で巨大な大判プリンタを家庭内に導入・設置するというのは、少々非現実的で、働く個人にとっても、会社にとっても、決して合理性・経済性の高い取り組みとは言いづらい。ゆえに、このような業務は、オフィスワークを主として行うほうが本来的には無難と言える。

とはいえ、大抵の資料は、少し大きめのモニタがあれば、扱いに窮することはなく、デジタルの資料を扱うことに慣れてしまえば、印刷の必要性をほとんど感じなくなるはずである。

また、「ハンコ」に関しても、電子署名で(法的にも)代替が可能である場合が多く、それでも「紙」と「ハンコ」を使う業務がなかなか減らないのは、日本の法制度の問題ではなく、日本の自治体などに「紙」と「ハンコ」を使う文化が根強くあることや、日本の企業もそうした商慣習・文化からなかなか抜け出そうとしないことに原因があるとされている。

さらに、必要書類が、働く場所によって参照できなくなるというのは、情報のデジタル化とセキュアな共有によって、業務を効率化する取り組みを進めてこなかったことの現れである可能性が大きい。

こうしたペーパーレス化・デジタル化の取り組みを進めるか否かは、実のところ、在宅勤務をするかしないか以前の問題で、コロナ以前からの大きな流れとしては、働き方改革に向けて業務のペーパーレス化・デジタル化が進む方向にあった。そして今回、ペーパーレス化・デジタル化の取り組みの遅れが、在宅勤務/テレワーク推進の足かせにもなることが鮮明になったことで、日本企業のペーパーレス化・デジタル化の流れに勢いがつくことが予想されている。実際、今回のアンケート結果を見ても、ペーパレス化・デジタル化を望む以下のような声が少なからず見受けられたのである。

「会社に行かないとできない業務が多く、特に紙ベースの承認が依然として多い。在宅勤務推進するには、まずは、そこから変えていかないといけない」(出版・放送・その他メディア業、課長職)──。
「紙の書類はどんどん電子データ化するべき。ハンコが不要の業務が増えることを願う」(製造業、一般)──。
「やってやれないことはないと、全社で在宅勤務に乗り出したにもかかわらず、自治体との仕事で、社印・印鑑証明を必要とするプロセスが発生し、担当の営業と法務が出社を強いられてしまった。自治体は、在宅勤務を推進する立場なはずだ。あまりにも矛盾を感じる。早急に改善いただきたい」(サービス業、経営層・役員職)──。

部下の仕事ぶりをどう管理していたか?

先に触れたとおり、「同僚・上司・部下が何をしているかが見えづらい」という点は、多くのミドルマネージャーが在宅勤務における困りごととして挙げたポイントである。

では、そうしたミドルマネージャーたちは、在宅勤務で部下たちと離れ離れで働く中で、どのような手段によって、部下たちの仕事の管理──つまりは、仕事の進捗管理を行おうとしたのだろうか。それを調べた結果が以下の図3である。

図3:在宅勤務における仕事の進捗管理

ご覧のように、「チャットやメールベースを通じた日報」によって、部下の仕事の進捗を把握しようとした(ないしは、把握している)ミドルマネージャーは多い。もっとも、「同僚・上司・部下が何をしているかが見えづらい」という点が、困りごとの上位に位置していることを考えると、必ずしも、こうした管理が有効に機能しているわけではなさそうである。

実際、チャット/メールによる日報で部下を管理しているミドルマネージャーからは、次のような声も聞かれている。

「業務進捗が分かりにくい。報告を聞いてから修正指示を出すことが多くなった」(製造業、部長職)──。
「チームでの進捗チェックがおろそかになり、処理忘れなどが発生している」(製造業、部長職)──。
「部門全体の稼働状況が分からず、過負荷の社員、逆に暇な社員などの把握ができない」(IT関連企業、部長職)──。

在宅勤務における部下のマネジメントは成果主義がカギ!?

一方で、部下たちの仕事のプロセスはあまりチェックせず、アウトップットや成果に基づく業務進捗の見える化と管理を遂行しているミドルマネージャーは、比較的うまく部下の働きが把握できているようである。

例えば、そうした管理を推進しているミドルマネージャーからは、次のような声が寄せられている。

「当社の場合、アウウトプットベースで仕事の進捗を管理しているので、在宅勤務における部下の管理について特に問題はない」(サービス業、課長職)──。
「当社では、成果物による人事評価が行えるので、在宅勤務での部下の管理に問題はない。オフィスワークよりも在宅勤務のほうが、明らかに仕事がはかどり、仕事を早めに始めて切り上げられるので、今後もずっと続けたい」(IT関連企業、部長職)──。
「在宅勤務では、当初課題は出たが、短期のゴール設定が明確である業務はほぼ予定通りに進捗するようになった。企画・改善活動など、中長期活動はまだ課題が出きっておらず、今後対策を検討する」(通信サービス業・ISP、部長職)──。

ちなみに、成果ベースでの評価が行われていない組織のミドルマネージャーからは、次のような不満の声も聞かれている。

「私の上司は、前近代的で、部下のアウトプットよりも見えるところで働いていることを重視しているように感じる。こういう上司の下では在宅勤務はまず機能しないと思う」(製造業、係長・主任職)──。

以上のようなアンケート結果をまとめると、在宅勤務体制下での部下のマネジメントでは、アウトップットや成果をベースにしつつ、それぞれの仕事の進捗を可視化しながら管理するのが有効との結論が導き出せそうである。実際、アウトプット/成果、あるいは目標を明確にしないままに、例えば、「定例Web会議」などで、部下の仕事の進捗や状況だけを確認しようとすると、会議がとおりいっぺんの現状報告の場、あるいは形骸化した業務報告の場となり、あまり有効に機能しなくなるおそれもあるようである。

例えば、オフィスワークから在宅勤務への切り替え以降、不要な会議が増え、業務の生産性に負の影響が出ているという指摘も一部の回答者から寄せられている。また、ある経営・役員層からは以下のような声が寄せられている。

「Web会議は、普段からお互いの目標が明確であれば有効だが、確認だけであれば、あまり必要性を感じない」(その他業種、経営・役員職)──。
「(Web会議などで)あまり頻繁に業務の進捗状況を部下に問うと、部下たちに煙たがられる。注意が必要だ」(不動産業、経営・役員職)──

在宅勤務時の勤怠管理

現場のチームのリーダーにとっては、部下たちの仕事の進捗の把握が重要だが、会社としては、そうしたチームのリーダーを含めて、在宅勤務を行っている従業員全員の勤怠をどう管理するかも課題となる。では、在宅勤務を実施した回答者たちは、どのような勤怠管理の下で働いていたのだろうか。図4がその集計結果である。

図4:在宅勤務時の勤怠管理
(出典:アトラシアン 在宅勤務アンケート調査2020年5月)

この図にあるとおり、コロナ対策としての在宅勤務は、緊急事態への対応策だったこともあり、勤怠管理を特に行っていないところがかなり多かった。また、「その他」という選択肢を選んだ回答者も多く、勤怠管理の方法には相応のバラつきが見られている。

ちなみに、「その他」の内容として多かったの、「勤怠管理システム」を使った管理である。近年の勤怠管理システムは、クラウド型で、スマートフォンやパソコンによる出退勤打刻を可能にしているものが多いが、そうしたツールを使っているというわけだ。

今回のアンケート調査の結果からは、これらの勤怠管理手段の中で、どれが最も効果的かを割り出すことは難しかった。ただし、参考値として、それぞれの管理手段と、在宅勤務時における回答者の生産性との関係を点検することにした。

その結果が以下の図5である。

図5:勤怠管理の手段と生産性との関係(N=584)
(出典:アトラシアン 在宅勤務アンケート調査2020年5月)

この結果を見る限り、パソコン(PC)の操作ログを使った自動管理が、働き手の生産性向上への貢献度が“最も低い”勤怠管理手法であるようだ。

この結果からは、システム的な監視を強化しても、それによって従業者が懸命になって働くわけではないと言えそうである。言い換えれば、監視の目がオフィスワーカーの働く意欲をかきたて、そのパフォーマンスを向上させるわけではないというわけだ。また、システムによって労働者の働き方を、時間単位で常時監視するという考え方は、産業革命時代の工場長のような発想で、そうした発想に基づく管理は、現代のオフィスワーカー(ホワイトカラー)の勤怠管理にはそぐわないのかもしれない。

ちなみに、こうしたポイントに絡めて、ある部長職者からは次のような意見が聞かれている。

「部下の管理は緩めでいい。大人同士なのだから、信頼を基にことに取りかかれなければ、そもそも今日の仕事は成り立たない」(流通業、部長職)──。

さらに、今回のアンケート結果を見ると、オンとオフの切り替えや仕事のペース配分の難しさなどから、在宅勤務はオーバーワークになりがちで、疲れがたまるといった声がかなり多かった。在宅勤務での勤怠管理では、そうした働き過ぎの抑制のほうが重要なようである。

在宅勤務に積極的なのは上司?部下?

以上、今回のコロナ対策として在宅勤務を実施したビジネスパーソンの実態や見解を、職位カットで見てきた。

もっとも、ここまで読み進めた方の中には、「ところで、一般社員(一般従業者)と上司(上位職者)のどちらが、在宅勤務に対して肯定的、ないしは積極的なのだろうか」との疑問を持たれた向きもいるはずである。実のところ、今回のアンケート調査では、在宅勤務を「支持する/しない」という単純な聞き方では、在宅勤務に対する回答者の評価を尋ねていない。ただし、回答者の大多数が、在宅勤務に対する自身の想いや評価を、自由記述の形式で詳しく示してくれている。

そこで、そうした回答者の意見に基づくかたちで、それぞれの在宅勤務に対する考え方を、この働き方への「支持派」「否定派」「中立」に区分けし、一般従業者と上位職者のどちらが、在宅勤務に積極的なのかを示すことにした。その結果が以下の図6である。

図6:在宅勤務に積極的なのは上司?部下?(N=545)
(出典:アトラシアン 在宅勤務アンケート調査2020年5月)

ご覧のとおり、すべての職位で、「支持派」の比率が「否定派」を上回っている。また、一般従業員とミドルマネージャーの間には、「否定派」「支持派」「中立」の比率にほとんど差が見られてない。さらに言えば、今回、「中立派」に組み入れた回答者には、在宅勤務の効率性・合理性は基本的に認めつつも、いくつかの難点から全面的に支持するまでには及ばず、改善を望んでいる向きも相当数含まれている。

例えば、以下のような見解を示す回答者である。

「在宅勤務では、VPNやサーバなどの混雑で仕事がはかどらない。とにかくネット環境の整備が急務だ」(IT関連企業、一般)──。
「在宅勤務が機能させられるかどうかは、チームマネジメントと自己管理の問題に帰着する。その意味で、自分にはさらなる習熟が必要なようだ」(IT関連企業、係長・主任職)──
「在宅勤務は集中して仕事が行えるが、チームでのコミュニケーションがどうしても不足する。その点をどうにか解決したい」(金融業・保険業・証券業、課長職)──。
「コロナ対策で在宅勤務に移行したことで、仕事への集中力が上がり、効率が上がった。ただし、在宅勤務では残業がつかないので給与が下がる。その不満が払しょくできない」(製造業、係長・主任職)──。

このように、今回のアンケート調査に寄せられた回答においては、在宅勤務という働き方自体への批判はとても少なく、一方で、在宅勤務を効率的に行うための環境の「不備」、「準備不足」、「制度/ルールの曖昧さ」、「組織におけるITリテラシーの低さ」、さらには、在宅勤務に対する「従業員の鍛錬度の低さ」を指摘する声が非常に多かった。これを言い換えれば、個人やチームやパフォーマンスアップや、快適で自由な働き方の実現といった、在宅勤務(ないしは、テレワーク)の本来的な目的を達成するためには、それに向けた一層の環境整備と経験の積み上げが必要ということのようだ。

ちなみに、コロナ以前にも在宅勤務を経験した回答者と、コロナをきっかけに在宅勤務を始めて経験した回答者とでは、在宅勤務を支持する割合、あるいは否定する割合に10ポイント前後の開きがある(図7)。この傾向は、在宅勤務の経験をより多く積むことで、どうすれば在宅勤務をうまくこなせるかのノウハウが溜まり、スキルが上がり、結果として、在宅勤務に対する見方が変わることを表していると言える。

図7:在宅勤務の経験と支持率との関係
(出典:アトラシアン 在宅勤務アンケート調査2020年5月)

実際、在宅勤務の経験を重ねていくことで、通勤に時間をかける必要がないというメリットをフルに生かせるようになると、ある回答者は言う。

「在宅勤務については、コロナ前から何度も実施してきた。とにかく、在宅勤務は、非常に快適で、かつ生産性高く仕事ができる。これからも原則、在宅勤務としたいし、それが当たり前の社会になってほしい」(サービス業、課長職)──。

また、在宅勤務の推進によって、自らの判断で適切に動ける社員とそうではない社員が明確になるほか、組織のウィークポイントや強みもよく見えるようになると評価する経営層もいる。さらに、以下のように、個人やチームの“セルフマネジメント”の能力が上がるとの声も少なくない。

「在宅勤務を推進したことで、働く人間が自分をマネジメントできる機会が生まれた。このメリットはかなり大きいと言い切れる」(IT関連企業、課長職クラス)──。

繰り返すようだが、今回のアンケート結果を総合すると、極めて多くの企業・組織、そして業務の現場で働くビジネスパーソンが、在宅勤務の可能性に気づき、評価し、そして、「この働き方は、大いにアリだ」と確信し、働き方の標準的な選択肢として採用しようと動き始めていると言える。

現在、コロナ後の常識として、在宅勤務を含むテレワークが企業・組織の標準的な働き方になるとされているが、今回のアンケート調査の結果を見る限り、その見方に間違いはないようである。多くの企業で、全てのオフィスワーカーが、週1回、あるいは2~3回の在宅勤務を当たり前のように行うようになり、またある会社では、在宅勤務がデフォルトになり、必要に応じてチームが社内に集まり仕事をする──。そんな社会が明日から始まっても、決して不思議はないと言い切れる。


参考データ:回答者の属性