アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

質問5「同僚に対して“厳しいフィードバック”を出したときのことを教えてください」

■ 質問の意図:感情的知性の確認

同僚とのやり取りが電話やビデオ、またはテキストなどに限定されると、ボディランゲージや声色によって表現される、相手の感情の動きをとらえるのが難しくなる。ゆえに、リモートワーカーには高い感情的知性が要求される。

感情的知性の高いリモートワーカーは、相手の感情に共感したり、感情の動きを予測したりすることができ、それを相手とのコミュニケーションに巧みに活かすことができる。

その意味で、上記の質問で確認すべき最も重要な点は、候補者が同僚に厳しいフィードバックを出した際に、その同僚の立場に立ってメッセージの内容を作成したかどうかである。

感情的知性が高い候補者ならば、同僚に対して厳しいフィードバックを出さざるをえないときでも、感情的知性を働かせ、相手の行動や振る舞いに対する指摘だけに内容を絞り込み、相手の性格や人格を否定するようなことは一切していないはずである。

質問6「オフィスコミュニティに参加していないことについて、どこに不安を感じますか?」

■ 質問の意図:自己分析力の確認

非常に内向的なリモートワーカーであっても、多少の社会的栄養は必要とされる。したがって、候補者が、その栄養をどのようにして取得しようとしているかについても確認しておく必要がある。

ただし、それを確認する質問に対して、候補者がどう回答したかはあまり重要ではない。重要なのは、同僚たちと離れた場所で働き続けることに、どのような心理的影響があるかを考え、その働き方に適応するために、何をどうすべきか検討しているかを確認することである。

オフィスにいるメンバー同士は、暗黙のうちに互いに気を配りながら働いている。それに対して、リモートワーカーは、自己の状態を自ら診断し、自らをケアする能力に長けていなければならない。それを怠ると“燃え尽き症候群”にかかる危険性があるのである。

また、フィードバックを出す際に、候補者が、相手の課題解決への手助けを提案したかどうかも確認しておく。候補者がそれを行っていたとすれば、それは感情的知性のもう一つの表れと言える。

質問7「この仕事のどこに最も魅力を感じますか?」

■ 質問の意図:目的意識の確認

優れたリモートワーカーは、仕事に熱心に取り組む。そうした仕事への熱意は、その仕事の価値に対する理解と共感によって生まれるものだ。言い換えれば、自分の仕事と自分の目的が一致しているからこそ、リモートワーカーは熱心に仕事に取り組むのである。

したがって、面接の際には、仕事に対する候補者の目的をしっかりと確認することが重要である。仮に、マネージャーの考えと、採用したリモートワーカーの目的意識との間にズレが大きい場合には、それを修正するのは至難と言える。なぜならば、人の働く目的を変化させること自体が困難であるのに加えて、リモートワーカーはマネージャーから遠く離れた場所で働いており、“目的の軌道修正”に向けた意思疎通が図りにくいからである。

質問8「必要な情報が十分に揃っていない中で、意思決定を下した経験はありますか?」

■ 質問の意図:自律的な意思決定能力の確認

チームの存続にかかわるような重大な意思決定を下すのは、マネージャーの仕事と言えるが、重要度が中小クラスの意思決定はメンバー各自が自律的に下せることが大切で、そうでなければチームのパフォーマンスは高いレベルで維持できない。とりわけ、遠隔地にいるリモートワーカーの意思決定能力が高いかどうかは、マネージャーにとって重要だ。仮に能力が低ければ、マネージャーからリモートワーカーへの指示出しに多くの手間がかかることになり、高ければ、たとえ、チームのメンバー全員がリモートワーカーであったとしても、そのマネージにそれほどの手間をかけずに済むからである。

ちなみに、優れたリモートワーカーは、相応の時間をかけてモノゴトの全体像をとらえる。そのうえで、コストを度外視してでも最適化を優先させる必要のある事柄と、コストと効果とのトレードオフを見定めながら、より柔軟な対応をとる必要がある事柄とを適切に分類することができる。

上記の質問は、そうした意思決定能力が、候補者にあるかないかを確認するためのものだ。情報が少なく、いわゆる『暗闇の中での飛行』を余儀なくされる中で、候補者たちがどのように意思決定を下してきたかを尋ねる。具体的には、意思決定を下す際に「どのような情報を求めたのか」「どの情報がなくても適切な意思決定が下せると考えたのか」「自分の意思決定によって、自分自身や所属チーム、さらには顧客にどのような影響が出ると考えたのか」といった事柄を明らかにさせるのである。こうすることで、候補者の意思決定プロセスのあり方や、自律的な意思決定能力を把握することができる。

ともあれ、上記の質問を投じることで、候補者たちは、「あなたの会社の使命達成に貢献したい」「新しいスキルを磨きたい」「これまでとは違うタイプの会社で働きたい」といった、それぞれの目的を語るはずである。そうした彼らの目的意識と、自分の感覚との間に、どの程度のズレがあるのかを入念に点検されたい。

質問9「新しいプロジェクトの立ち上げを任されたとき、あなたならどうしますか?」

■ 質問の意図:リーダーシップスキルの確認

管理職者ではなくとも、リーダーシップスキルは必要だ。特に、一般社員がプロジェクトリーダーを任されることの多い会社では、リーダーシップは全社員に必須のスキルと言える。そこで、上記のような質問を投じて、候補者のリーダーシップスキルを確認する。

言うまでもなく、遠隔地からプロジェクトをリードするのはなかなか難しく、常に戦略性を持ちながら、組織内での調整/コミュニケーションを図っていかなければならない。その点を踏まえながら、候補者たちが、プロジェクトのビジネスケース(=プロジェクトの投資価値を判断するための情報の一群)をどのように構築し、組織のリーダー層を説得して、ゴーサインを出させようとするかについて入念にチェックする。これにより、周囲の支持を取り付けるというリーダーとしての能力があるかどうかを確認できる。

また併せて、候補者たちが、プロジェクトチームをどう組織しようとするかを確認する。実のところ、優れたリモートワーカーは、プロジェクトに必要な職種/スキルの適切な構成を直感的に判断できる。また、メンバー選びにおいても不要なバイアスをかけず、所属チーム以外のメンバーをプロジェクトに参加させることにも躊躇(ちゅうちょ)がないのである。

参考TIPS:リモートでの面接を効率化する3つのヒント

以上、リモートワーカーの採用面接時に必要とされる9つのインタビュー項目について説明してきた。それを補足する情報として、以下にビデオ会議ツールを使ったリモート面接を効率化する3つのTIPSを紹介する。

  1. 候補者の“職場”の状況を確認する:候補者が自宅内のどこで面接を受けているかを確認し、働く環境が整備されているかどうかをチェックする。
  2. 候補者がアイコンタクトをしているかどうかを点検する:候補者がしっかりとカメラを見ながら面接を受けている場合には、リモート会議のエチケットをわきまえ、コミュニケーション能力も高いと判断できる。
  3. 個人的な趣味・嗜好を話そうとしたかどうかを確認する:面接時に候補者の私生活に深く立ち入った質問をする必要はない。ただし、候補者が自発的に、自分のペットや趣味について話し始めたとすれば、それは、自宅で快適に仕事ができていることの表れと見なすことができる。そして面接中の対話で起きた全ての出来事は、これからの長い付き合いに向けた、相互信頼の始まりとも言える。