アトラシアン本社の情報サイト『Inside Atlassian』より。Teamwork Lab責任者のモリー・サンズ(Dr. Molly Sands)が、社内で行われた「AIの利用を1日止める実験」をもとに、チームがAIへの無意識な依存から抜け出し、真に効果的な活用法と見極める力を養うためのポイントを解説する。

本稿の要約を10秒で

  • 習慣的なAI利用による検証コストを防ぐため、あえて利用を止めて効果を見極めることが大切
  • AIを使う場面と使わない場面をチームで振り返り、使い分けの共通認識を育んでいく
  • 個人の活用知見をチーム全体で共有し、組織全体の判断力と業務プロセスの質を高めていく
  • あえてAIから離れる体験を通じて、人間ならではの専門性や判断力に確信を持つことができる

多くのナレッジワーカーにとって、AIツールを使うことは今や当たり前の習慣になりつつある。しかし、Teamwork Labは、AIの活用が仕事への充実感や生産量にどのような変化をもたらすのかを明らかにしたいと考えた。
そこでTeamwork Labは、「AIを1日使えなくしたら、何が起こるのか?」という実験を実施した。

調査の概要

実施内容:

  • 6月、Teamwork Labは採用(Talent Acquisition)チームのメンバー約250名を対象に、AI Playの日(可能な限りすべての業務でAIを使う日)とAI Pauseの日(AIツールを一切使わずに通常業務を行う日)の双方を体験してもらう実験を実施した。
  • 各参加者が両方の条件を体験し、自分自身の比較対象となった。Teamwork Labは123名の日次アンケートデータを分析し、そのうち96名が実験後のアンケートへの回答と、アトラシアンの非同期ビデオツールであるLoomを使った短い動画の録画を完了した。

判明したこと:

  • AIの利用は無意識の習慣になっている。AI Pauseの日でも、82%が「とりあえずAIに聞きたい」という衝動を感じていた。
  • 振り返りの共有がチームの判断力を磨く。AIの利用有無によってメンバー同士の協業が増減することはなかったが、意見交換を行った結果、89%が「どのような場面でAIを使うべきか」についての共通認識がより明確になったと回答した。
  • 真の価値は「見極める力」を養うことにある。実験後、参加者の圧倒的多数が「AIを使うべきではない場面」についてより明確な自信を持てるようになった。

AIの利用が当たり前になると、どこで役立っているのか気づかなくなる

アンケートの参加者がアトラシアンのAIチームメイト体験であるRovoや、リサーチアシスタントであるDiaの日常的な利用者であったため、Teamwork Labはそれらのツールの利用を停止した際に何が変化するのかを明確に特定できた。

調査の結果、日々の業務にAIの利用が深く定着しており、参加者がほぼ無意識にAIに頼っている実態が明らかになった。利用の停止を求められた際、82%が「とりあえずAIに聞きたい」という衝動を感じた。また、47%が業務を普段以上に難しく感じたと答え、46%がAIを使わないスキルの衰えを感じたと回答し、約4人に1人が習慣から無意識にAIを使おうとしていた。

一方、AI Playの日には、AIの利用が確かな価値をもたらした。参加者は優先業務が44%楽に感じられ、ストレスが22%軽減したと報告した。ただし、Loomによる振り返りの44%では、AIの出力を確認・修正する「検証コスト」の負担も指摘されていた。

AI Playの日を表す言葉 上位3項目AI Pauseの日を表す言葉 上位3項目
没頭できる:64%進みが遅い:50%
満足感がある:51%難易度が高い:39%
有意義である:47%有意義である:34%

興味深いことに、参加者はどちらの日も「有意義」だったと感じていた。AI Playの日には、新しいAIツールに慣れるための時間を意識的に確保できた。一方で、AI Pauseの日は業務に難しさを感じたものの、AIが真に役立っている領域とそうでない領域を明確に見極めるきっかけとなった。

AI Pauseの日は、AI Playの日とも、現在の私たちの一般的な働き方とも際立った対照をなしていた。AIの利用を停止したことで、AIが真に役立っている領域と、思ったほど価値を生み出していなかった領域に人々が気づくきっかけとなった ── アリソン・ホワイト(Allison White)、Teamwork Lab リード行動科学者

AI利用に関する振り返りの共有が、チームの判断力を磨く

AIの利用頻度によって自分自身の業務に対する充実感や負担感は変化したものの、同僚との協業量については特に変化が見られなかった。

最も大きな変化が現れたのは、AI PlayとAI Pauseの日が終了した後だった。チームが集まって各自の気づきを共有し意見交換を行ったところ、89%がチーム内で「どのような場面でAIを使うべきか」についての共通認識がより明確になったと回答した。

→ 自チームのAIを見極める力を評価するために、AI Play/Pause Day Play(英語のみ)を活用してみてほしい。

1人のチームメンバーがAIツールの活用法を習得すると、個人の知見が生まれる。その知見をチーム全体で共有することで、単なる個人の知見が「共通の判断力」へと昇華し、日々の業務プロセスのアップデートにつながるのだ。

業務でのAI活用を洗練させるには、一度AIから離れてみる

マネージャーにとって、AIを使うべき場面と使うべきではない場面を見極めることは貴重なスキルである。AIは仕事をより容易でストレスの少ないものにし、生産性を高めるが、チームが無意識の習慣でAIを使い続けていると「検証コスト」が生じる。

Play/Pause実験の後、参加者の圧倒的多数が「AIを使うべきではない場面」についてより自信を持てるようになり、自分自身の専門性により確信を持てるようになったと回答した。

  • 参加者の92%が、AIを使うべきではない場面についてより自信を持てるようになった。
  • 83%が、日常的なAIの使い方を見直す予定であると回答した。
  • 86%が、この取り組みを他のチームにも推奨したいと答えた。

チームがAIに依存しすぎているのではないかと懸念している場合、一度利用を止めてみることが現状を正しく見極めるシンプルかつ効果的な方法となる。真のリスクはAIがチームの能力を損なうことではなく、無分別な利用が全体の効率を低下させる可能性がある点にある。Play/Pauseを通じて一度立ち止まることで、チームはAIが真に役立つ領域とそうでない領域を学ぶことができる。

調査手法

2026年6月9日および10日、Teamwork Labは約123名のアトラシアン採用担当者を対象に2日間の実験を実施した。1日目は、定められたガイドライン(Rovo、Dia、Gemini、各種組み込みAI機能)の範囲内で、業務上の可能な限りあらゆる作業にAIを活用するよう指示された。2日目は、業務におけるAIの利用を一切控えるよう指示された。各日の終わりに、参加者はLoomで短い動画を録画し、簡易アンケートに回答することで自身の体験を振り返った。さらに実験後には、チームでの振り返りと事後アンケートへの回答も行われた。