アトラシアン本社の情報サイト『Inside Atlassian』より。Teamwork Labのシニア・プリンシパル・リサーチャー、コナー・ドネガン(Conor Donegan)が、米国のナレッジワーカー1,001人を対象にした調査と社内実験の結果をもとに、AIの活用が深まるほど手放せなくなる実態を明らかにし、「価値」と「依存」の境界線を探る。

本稿の要約を10秒で

  • 米国のナレッジワーカー1,001人への調査と社内実験から、職場におけるAI依存の現状を数値で示している
  • AIへ社会的な懸念は持ちつつも、実践では大多数が価値を認めている
  • 活用が深まるほど手放せなくなり、半数は制限に抵抗すると答えている
  • 本当のリスクは依存そのものではなく、判断を伴わない依存にある

ナレッジワーカー(知識労働者)たちは、AIが世界に与える影響について真剣な懸念を抱いている。それと同時に、AIが自分たちの仕事をより良くしてくれると感じており、手放すつもりもない。アトラシアンのTeamwork Labによる最新調査が明らかにしたのは、この二つの立場は矛盾しないということだ。どちらも、同じ人たちの本音なのである。

主な調査結果

  • AIは、報道が示すほど職場で対立を生んでいない。ナレッジワーカーの74%がAIは自分の仕事にプラスの影響を与えると回答している。一方で64%が社会全体への影響に懸念を抱いているにもかかわらず、だ。
  • プライベートのAIを手放すことはあっても、仕事のAIは手放さない。どちらかを選ばなければならないとしたら、ナレッジワーカーがプライベートでのAI利用をやめる可能性は、仕事でやめる可能性の2倍にのぼる。この傾向は、世代や職種を問わず一貫している。
  • 「AIがなくても困らない」と思っている人は5人に1人。それでも半数は手放したくないと思っている。AIユーザーのうち「仕事でAIをやめるのは難しい」と答えたのはわずか19%で、57%は「AIがなくても同じくらい仕事ができる」と考えている。しかし、実際にアクセスを失う話になると、50%が「会社にAIツールを取り上げられたら反発する」と答えた。
  • AIを1日使えなくしたら、それでも手が伸びた。アトラシアン社内の実験では、「AIなしの日」に割り当てられた社員の82%がAIを使いたい衝動を感じ、約4人に1人は無意識に手を伸ばしていた。一方、「AIをフル活用する日」には、優先度の高い業務が44%楽に感じられ、ストレスが22%低下した。

AIは家庭では賛否両論、職場ではもはや当たり前

AIは、現代社会で最も議論を呼ぶテーマのひとつだ。ヘビーユーザーでさえ、その懸念を共有している*1。しかし、そうした論争はナレッジワークの現場にはほとんど及んでいない。AIに対して社会的な疑問を持つ同じ労働者たちが、自分の仕事においてはAIを実際に役立つと感じているのだ。

【図1】AIに関する3つの設問への同意度を示すグラフ。「AIは自分の働き方に良い影響を与えている」に74%、「AIがもっと業務に統合されることを歓迎する」に67%、「社会への影響は懸念するが、業務では価値を感じている」に64%が同意または強く同意と回答。理論上は懐疑的でも、実践では支持されていることがわかる。

職場では、AIはますます仕事に組み込まれつつある。6月下旬から7月上旬にかけて実施した最新のパルスサーベイ(定点調査)では、ナレッジワーカーのAI導入率は90%に達し、ヘビーユーザーは7ポイント増加した。また、74%がAIの仕事への影響をポジティブに評価している。これは、プライベートでのAI利用に消費者離れの兆しが見えるのとは対照的だ。個人利用では、意識的に使用を制限する*2人や、目新しさが薄れたと感じる*3人も出てきている。

*ヘビーユーザーとは、職場でのAI利用を「ワークフローを再設計した新たな日常」または「AIを共有ワークフローに組み込んだチームの標準」と表現する人を指す。

AIは家庭よりも職場でこそ重要だ

AIがナレッジワークにおいて真に果たす役割は、人々の発言よりも、AIを手放すまいとする行動に如実に表れる。職場と家庭のどちらかでAIを諦めるよう求められた場合、職場でのAIを手放さないと答えた割合は、家庭での場合の2倍に上る。この傾向は、職位・世代・職種を問わず一貫している。

【図2】選択を迫られた場合に仕事でのAI利用を手放すと答えたのは全体の34%にとどまり、66%はプライベートでの利用を諦めると回答。職位別ではマネージャー(42%)とメンバー(40%)が仕事優先の傾向が強く、リーダー層(28%)やマーケティング職(28%)はプライベートでの利用を優先する割合が高い。世代間の差は比較的小さく、いずれの層でも「仕事でのAIは手放せない」という傾向が見られる。

今日のナレッジワーカーにとってAIはそれほど不可欠な存在となっており、利用者の半数がアクセスを取り消したり制限したりしようとする動きに抵抗すると回答している。約10%に至っては、転職も辞さないとまで答えている。

【図3】雇用主がAIへのアクセスを制限した場合の対応を示すグラフ。50%は「受け入れて前に進む」と回答した一方、残りの50%は何らかの形で抵抗すると回答。内訳は「自分でAIを使う方法を探す」28%、「アクセス回復を求めて働きかける」13%、「AIに寛容な職場に転職する」9%。

使えば使うほど、手放せなくなる

ほとんどのビジネスパーソンは、AIを「なくてはならない存在」というよりも「役に立つツール」と表現するだろう。AIなしでは自分のパフォーマンスを維持するのが難しいと答えたのはわずか19%で、57%は同じくらいうまくやれると考えている。

それでも、半数は雇用主がアクセスを制限しようとすれば抵抗すると答えており、その傾向は活用が深まるほど強くなる。AIを共有・協働ワークフローに組み込んだ「チーム標準」ユーザーは、たまにしか使わないユーザーに比べて、AIなしに戻るのは難しいと答える割合が10倍以上に上る。また、常に高品質な結果をもたらすAIを使っているユーザーは、3倍抵抗する可能性が高い。

【図4】AIなしでパフォーマンスを維持することの難易度を示すグラフ。全AIユーザーのうち「難しい」と答えたのは19%にとどまるが、AIの活用度が深まるほどその割合は上昇する。「日常的なアシスタント」として使うユーザーでは22%、「新しい日常」として使うユーザーでは34%が難しいと回答。また、AIの出力品質が高いと感じているユーザーほど依存度が高く、「難しい」と答える割合も高い傾向にある。

本音は、発言ではなく行動に表れる

このダイナミクスを直接検証するため、Teamwork Labはアトラシアンの採用担当者グループを対象にAI Play/Pause experiment4を実施した。AIの活用を最大限に高める1日と、AIを一切使わない1日を設けた実験だ。これらのチームはRovoの日常的なユーザーであり、Teamwork Graphを通じて自分たちの業務に関する豊富なコンテキストと連携していた。そのため、役立つツールや情報へのアクセスが失われたときに実際に何が変わるかを切り分けることができた。

【図5】AI Play/Pause experimentの結果を実験日別に比較したグラフ。Play day(活用する日)はPause day(使わない日)を大きく上回り、「仕事に誇りを感じた」90% vs 68%、「優先業務がやりやすかった」64% vs 20%、「いつもより多くこなせた」60% vs 7%、「こんな日がもっと続いてほしい」64% vs 27%と回答。一方、「いつもよりストレスが多かった」はPlay dayが5%に対し、Pause dayは27%に上った。

一方、Pause dayは快適とは言えなかった。47%がいつもより作業が難しく感じたと答え、46%はAIを使わない自分のスキルに鈍りを感じたと回答した。これは、AIが人間の能力を損なうかもしれないという共通の懸念*5を裏付けるものだ。Pause dayの結果から浮かび上がる本質的な問いは、AIに手を伸ばしたいという衝動が、AIの価値を示すものなのか、それとも依存を示すものなのか、という点だ。マネージャーにとって、この区別は重要だ。同じ行動が、存在価値を証明しているツールのサインにも、そうでない習慣のサインにもなりうるからだ。

本当のリスクは、判断を伴わない依存だ。そして判断力は、チームが培うことができるものだ。今のビジネスパーソンたちがやっていることはまさにそれだ。AIを自分たちの働き方の一部にしながら、AIの役割がどこで終わり、自分たちの役割がどこから始まるかを見極めようとしている。

「AIが能力を損なうという懸念は、人々がAIを受動的に受け取るだけだという前提に立っている」とサンズは言う。「実際に私たちが目にしているのは、AIをうまく使うビジネスパーソンほど、AIの役割についてより良い判断力を身につけているということだ。AIが本当に役立つ場面とそうでない場面を見極めながら。」

調査方法

この調査は、2つの補完的なデータソースに基づいている。

パルスサーベイ(定点調査)。 2026年6月26日から7月7日にかけて、AIの導入状況、利用パターン、認識、態度について、米国のナレッジワーカー1,001人を対象にダブルブラインド調査を実施した。回答者は業界、職種、職位、世代にわたって幅広く分布している。調査では、AIの利用頻度、統合の深さ(アドホックな利用からチーム全体の標準まで)、および仕事と私生活におけるAIの役割と価値についての評価を測定した。

コントロール実験。 2026年6月9日と10日に、Atlassianの採用担当者約123名を対象に2日間の実験を実施した。1日目は、定められたガードレールの範囲内で、業務においてできる限りAIを活用するよう指示した。2日目は、業務でのAI使用を控えるよう指示した。各日の終わりに、参加者は短いLoom動画を録画し、簡単なアンケートに回答することで自身の体験を振り返った。また、実験後にはチームでの振り返りとアンケートも実施した。