アトラシアン本社の情報サイト『Inside Atlassian』より。ブランドナラティブ&コンテンツ責任者のリズ・フォスリエン(Liz Fosslien)が、AIを文章作成にどう使うべきか ── 推奨される使い方から禁止事項まで、社内ライター陣と議論を重ねて策定したガイドラインを公開する。
本稿の要約を10秒で
- AIが便利になるほど、「誰の言葉か」を意識的に守る必要がある
- 初稿と最終稿は人間が自分の言葉で書き、AIの役割を限定する
- AIの出力には必ず人間の検証を通してから信頼を置く
- AIが削ぎ落とす視点にも注意を払い、均質化に抗う意識を持つ
文章作成にAIをどう使うか?
AIは便利な道具だ。しかしガードレールなしに使えば、その文章はどこか空虚になる。ダッシュの多用や「〇〇ではない、△△だ」といったAI臭い表現はネタにされがちだが、AIに書かせすぎる問題の根はもっと深い。
- 社外に向けて:私たちはすでに、AIが生成した文章の洪水にさらされている。明らかにAIが書いたメールを受け取ったことがあるなら、送り手への信頼が静かに削がれる感覚を知っているはずだ。
- 社内に向けて:AIが生成したコンテンツは、社内の知識基盤(ナレッジグラフ)に蓄積されていく。これはコピー機で写真を繰り返し複写するようなもので、コピーを重ねるたびに画質は劣化する。中身が汎用的で誰もチェックしていなければ、誰の役にも立たない。
アトラシアンのブランドチームでは、まさにこの問題に正面から取り組んでいる。AIを使ってスピードを上げたい。それでも、読んで役に立ち、読んでいて楽しく、信頼できるコンテンツを届けたい。私たちのミッションは「チームの可能性を解き放つ」ことであり、そのためには自分たちの最良の思考——実践的で、他にはない視点——を体現するコンテンツを世に出すことが欠かせないと考えている。
2025年4月、アトラシアン社内のライターを集め、文章作成のプロセスにおいてAIを「使うべきか」「どこで使うか」「どう使うか」を議論した。そこで生まれたガイドラインを、マーケティング部門全体でさらに検証した。
アトラシアンのバリューである「オープンな企業文化、デタラメは無し」(Open company, no bullshit)の精神に則り、ここで公開することにした。
これは終わりのない旅だ。厳格なルールではなく、私たちが目指す方向を示すガイドラインとして読んでほしい。あなたのチームにとっても、何かしらのヒントになれば幸いだ。
免責事項
AIの進化に合わせて、このガイドラインも更新していく。先進的な姿勢と厳格な品質管理のバランスを保つため、3か月ごと、またはAIの機能に大きな変化があったタイミングで定期的に見直すことにしている。
- 初版作成日: 2026年4月1日
- 最終更新日: 2026年6月24日
基本原則
- 書くことも、考えることも、人間が主導する。 AIは検証・編集・推敲の助けにはなるが、初稿と最終稿は必ず人間が自分の言葉で書くこと。
- 公開するものには必ず人間の署名を入れる。 その人間が、AIの関与を含め、コンテンツの内容に対して公に責任を負う。
- AIには適切な文脈を与える。 AIに編集や推敲を頼むときは、読者・目的・トーンを必ず指定する。そうしないと返ってくるフィードバックは汎用的で使えないものになる。
- ファクトチェック、ファクトチェック、ファクトチェック。AIが出力・提案した内容は、事実情報・データ・引用を含め、責任者である人間が必ず検証してから採用すること。
- 自分が読みたくないものは公開しない。自分自身が「本当に役に立つ」「心に響く」と思えないなら、読者もおそらく同じだ。
- AIによる均質化に抗う。AIは学習データに多く含まれる層をデフォルトの読者として想定するため、一部の視点が過剰に反映され、それ以外が削ぎ落とされる傾向がある。AIの提案をレビューするときは、何が追加されたかだけでなく、何が削られたかにも同じだけ注意を払うこと。
アトラシアンでの実践方法
AIの効果的な使い方
推奨される使い方(人間が責任を持つことが前提):
- 原稿の穴や弱点を見つける(「この主張のどこが不明瞭か、根拠が弱いか?」)
- メッセージを揺さぶりにかける(「懐疑的な読者ならどんな反論をするか?」)
- 検証済みの顧客調査データをテーマごとに整理し、構造化された示唆にまとめる
- 人間が書いた詳細なメモ、調査結果、しっかりしたアウトラインを、構造化された初稿に仕上げる
- 複数のアイデアを絞り込み、最も強い一案に集約する
慎重に使うべき場面
以下の用途には、注意深い編集と判断が求められる:
- 派生コンテンツの下書き(SNS投稿、ニュースレターの紹介文、引用抜粋など)
- 文体やトーンの書き換え
- SEO支援——キーワード候補、メタディスクリプション、見出し構成の提案
- 簡易的な競合ポジショニングの調査
- ナラティブの柱とのコンテンツ整合性チェック
AIを使ってはいけない場面
以下の用途は禁止する:
- 統計データ(定量・定性を問わず)、顧客の声、事例の生成
- 製品の機能や性能に関する主張の捏造
- アトラシアンとしての文脈や独自の視点(POV)が定義されていない状態でのコンテンツ作成
- 核となる主張や差別化された論点の決定をAIに委ねること
- ファクトチェックの最終判断をAIに任せること