アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンのライター、スヴェン・ピーターズ(Sven Peters)が、人とAIの協働が企業の未来を左右する時代において、AIパートナーを活用し“ゾンビプロジェクト”を一掃するためのヒントや、AIがもたらすチームワークの進化について解説する。

本稿の要約を10秒で

  • ゾンビプロジェクトは、チームの焦点やリソースを曖昧にし、成果を妨げる存在であることを認識することが大切。
  • AIパートナーを活用することで、情報収集や意思決定の負担を減らし、重要な仕事に集中できるようにしていく。
  • 人とAIの協働が、プロジェクトの取捨選択やチームの生産性向上に直結することを意識して行動することが重要。
  • サンクコストや失敗への不安を手放し、AIの力を借りて本当に価値ある仕事にリソースを振り向けていく。

休暇明け、リフレッシュして「さあ、これから新しいプロジェクトに取り組もう」と意気込んでいる――そんなとき、ふと目に入るものがある。Jiraボードにずっと残っているタスクかもしれないし、Confluenceのタブで開きっぱなしのページかもしれない。

なぜか終わらない、あのプロジェクトだ。もう3週間も進捗が止まったまま。プロジェクト用のSlackチャンネルも、すっかり静かになっている。メンバー全員、内心では「もう手が回らない」「このまま終わることはないだろう」と思っているのに、上司だけは「まだ進行中」と考えている。こうした案件を、私たちは「ゾンビプロジェクト」と呼んでいる――まさに、じわじわと職場をむしばむ存在だ。

アトラシアンはリサーチ会社Censuswideと共同で、世界中のオフィスワーカー8,000人を対象に調査を実施した。その結果は、現代の職場で長年にわたり、気づかれないまま働く人たちのやる気や活力を奪ってきた「正体」を明らかにしている。

ゾンビプロジェクトとは何か?

ゾンビプロジェクトとは、単に進みが遅いだけではなく、完全に止まってしまっている状態のプロジェクトである。多くの場合、より緊急度の高い(あるいは、より魅力的な)別のプロジェクトが優先されるなかで、いつの間にか硬直してしまうのだ。しかし、これらのプロジェクトにも、立ち上げた理由がある。たいていは、いまも会社が抱え続けている課題に向き合うための取り組みであり、「もうやめよう」と簡単に幕を引くのは難しい。

こうした行き詰まりは、とくに年末の休暇シーズン前後になると、なおさら目についてしまう。アトラシアンのリサーチチームが昨年行った調査によると、プロジェクトが途中で止まってしまう日として最も多かったのは12月17日であり、その頃になると「続きは来年に回そう」という判断が下されやすくなるという。私たちはこの日を、ワールド・サークルバック・デー(World Circle Back Day)*1と名付けている。

問題はここからだ。現代のナレッジワーカーは、「目的意識と勢いを持ってプロジェクトに再び取りかかれる」と、もはや自信を持てなくなりつつある――その背景には、ゾンビプロジェクトの存在がある。私たちの調査では、2026年の仕事始めをゾンビプロジェクトの重荷を抱えたまま迎えた人が、全体の44%にのぼることが分かった。さらに9割以上が、そのことが何らかの問題を起こしていると答えている。

最悪の場合、ゾンビプロジェクトは単に生産性を落とすだけでなく、働く人のエネルギーそのものを吸い取ってしまう。

  • 37%の人が、「生き返らない仕事が散らかった状態」によってストレスやプレッシャーを感じていると答えている
  • 32%の人が、自分自身の生産性に直接悪影響が出ていると答えている
  • 32%のチームが、ゾンビプロジェクトがメンバーの燃え尽き(バーンアウト)を早めてしまうのではないかと懸念している
  • 31%のチームが、ゾンビプロジェクトが貴重なチームのリソースを食いつぶしていると答えている

AIの進化がこれほど急激に進む今、こうした問題の影響はこれまでになく大きくなっている。

世界中の経営層の約9割が、「自社はこれまで以上のスピードで動かなければ、もはや時代の変化についていけない」と感じている。これはアトラシアンのState of Teams 2025レポート*2による調査結果である。

いまチームが本来注ぐべきなのは、時間とエネルギーをやりくりして、AIの試行錯誤や導入に取り組むための余白――つまり、AIの実験に取り組む余地をつくること*3に向けることだ。決して、日の目を見ることのないプロジェクトという「足かせ」を、いつまでも引きずり続けることではない。

ゾンビプロジェクトはなぜ終わらないのか?

止まってはいるが中止にはなっていないプロジェクトは、メンバーの思考力と気力をすり減らす存在であり、誰一人として本心から歓迎してはいない。

だが、もしそれが単純に「悪いだけのもの」だと分かっているなら、なぜさっさと終わらせてしまえないのだろうか。「新年だし、気持ちよく一掃しよう」とはいかないのか。実際のところ話はもう少し複雑で、多くの職場で「裁量権」と「目線合わせ」が十分にできていない、という根本的な問題に行き着くのである。

  • 私たちの調査では、3人に1人以上の現場のメンバーが、「プロジェクトを打ち切ったら、上司から“うまく立ち上げられなかった”とか、“メンバーがちゃんとやる気を出さなかった”と思われるのではないか」といったネガティブな評価を恐れていると答えている。
  • 同じくらいの人たちが挙げたのが、決定プロセスの曖昧さだ。つまり、「誰にプロジェクト終了の決定権があるのか」がはっきりしていない状態である。中止の判断を下す“責任者”が存在しなければ、そのプロジェクトは事実上、誰にも殺されることなくゾンビとして生き続けてしまう。
  • さらに、別の3人に1人は「サンクコスト(埋没費用)の罠」にはまっている。長い時間と労力をかけて取り組んできた分だけ、そのプロジェクトやプログラムに愛着が湧き、「これだけやったのに、ここでやめるなんてもったいない」と感じてしまうのだ。だったら、はっきり終わらせるよりも、「いつか再開できるかもしれない」と期待しながら、あいまいなまま残しておきたくなる。

勢いの問題もある。ほとんど手間をかけずに「とりあえず棚上げしたまま」にしておけるのであれば、わざわざ大変な思いをしてプロジェクトを復活させるより、そのままゾンビ状態で置いておこうと考える人のほうが多い。そして、その低コストな“保留状態”が、チームとしてのフォーカスの欠如と重なったとき、きっぱりと判断を下すことはいっそう難しくなる。

ゾンビプロジェクトは、多くの場合「チームに明確な優先順位や焦点がない」ことの表れである。チームや組織の目標にどう貢献しているのかがはっきりしないプロジェクトは、常に優先度のリストの下のほうへと押しやられがちだ。投資するほど重要だとは感じられない一方で、戦略とのつながりが明確でないために、「この取り組みは、これから私たちが目指す方向とは合っていない」と、はっきり口に出して言える人もいない。

AIは仲間というより、ゾンビ退治の切り札

これからの数十年を見据えたとき、企業がこの変化の波を乗りこなせるかどうかは、「人とAIの協働」をどれだけ強くできるかにかかっている。うまく組み込まれたAIパートナーは、ゾンビプロジェクトがたまった“墓場”を一掃する、まさに最適な道具になり得る。

  • 世界の働き手の60%が、「AIパートナーがいれば、プロジェクトを復活させるべきか、それとも終わらせるべきかの判断をサポートしてくれるはずだ」と考えている。国別に見ると、インドではその割合が79%まで高まる一方、オーストラリアでは44%にとどまっている。

「ここまで時間と労力をかけてきたのに……」というサンクコストの感情や、「失敗した」と見なされることへの不安を脇に置くことができれば、AIが判断に必要な情報を提示するための道筋が開けてくる。

  • 43%の人が、AIパートナーには「プロジェクトの全体像を把握したうえで、要点を整理してくれる“要約マスター”」としての役割を期待している。チームが「このプロジェクトを再起動する価値があるかどうか」を判断できるようにするためだ。
  • 37%の人は、AIに対して「実際の稼働状況やスケジュールを踏まえた、現実的な工数見積もり」を求めている。これは、「そもそもその納期で達成可能なのか?」を見極めるうえで欠かせない現実チェックになる。
  • 35%の人は、「プロジェクトから得られた示唆を網羅的にまとめてほしい」と考えている。適切なAIパートナーであれば、過去のメールスレッドやSlackの履歴からアクションアイテムを抽出し、それをもとに素早く“今の状況に合わせた”返信案を下書きしてくれる。

AIパートナーは、どんなチームでも使いこなせる「万能ツール」のような存在だ。とくに、あいまいな保留状態のプロジェクトに足を取られているチームにとってはなおさらである。前に進むことを妨げているのはたいてい、「情報をかき集める」「コンテキストを探し当てる」「部門やツールのサイロをまたいでつなぐ」といった、地味で退屈な作業だ。だからこそ、そうした“つまらない部分”をAIパートナーに肩代わりしてもらえるのは、大きな救いになる。

私は、「人とAIの協働こそが、これからのハイパフォーマーと“チャンスを逃す人たち”を分ける境界線になる」という予測を、いまも変わらず信じている。そして、ゾンビプロジェクトこそが必ず向き合うべき理由は、まさにそこにある。ゾンビプロジェクトは、コラボレーションの究極の敵だ。リソースを食いつぶし、責任の所在をあいまいにし、本当に重要な仕事にチームの軸足をそろえることを妨げてしまう。

アトラシアンのState of Teams 2025レポート*2によると、Fortune 500企業では、毎年24億時間が「情報探し」に費やされているという。これは、1週間の勤務時間の4分の1以上に相当する。もし、その時間をまるごと自分たちのカレンダーに取り戻せたとしたら、どれだけの余白が生まれるだろうか。その時間があれば、眠っていたゾンビプロジェクトをいくつも蘇らせることだってできるし、あるいは思い切って“正式に埋葬する”決断をすることだってできるはずだ。