アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンのコンテンツストラテジスト、エリン・モシュバウ(Erin Mosbaugh)が、AI活用による疲れ、つまりは「AI疲れ」を回避する方法について説く。

本稿の要約を10秒で

  • AIの活用には大きな可能性がある一方で、相応の疲労を伴うことが多い。
  • 「AI疲れ」を防ぐうえではAIとのコラボレーションのあり方やAIとの関係を見なおす必要がある。
  • AI疲れの解消に向け、AIとの関係を再構築するための具体的な方法を紹介する

「AI疲れ」とは何か

AIは、仕事や生活をより簡単に、より速く、より軽くする便利なテクノロジーとされている。ところが、実際にはAIの活用は決して簡単ではない。多くの人がAIへの指示文(プロンプト)の適正化に向けた試行錯誤や、適切なアウトプットを得なければならないという重圧、さらには、AI技術の猛スピードの変化・進化へのキャッチアップなどに追われ、疲弊させられている。

それが、いわゆる「AI疲れ」だ。これは、AIのシステムと向き合うなかで、猛スピードでの技術の進化・変化に追従しようと必死になってもがき続けることで生まれる疲労感でもある。

もちろん、AIツールの活用をやめてしまえば、AI疲れは回避できる。しかし、それはAIが秘める大いなる可能性を切り捨ててしまうことを意味し、現代のナレッジワーカーとしてはすべきでない選択といえる。

では、AI疲れを防ぐには、何をどうするのが適切なのだろうか。問題解決のカギはAIとのコラボレーション、あるいは関係のあり方を見なおすことにある。

例えば「メールの過多」は、人を疲れさせる*1。その疲労の原因は、メールという技術自体にはなく「メールを閲覧して、適切に反応すること」を中心にしたかたちで日々の仕事や生活を構造化していることに原因がある。この構造化によって「メールの過多」が脳を刺激してドーパミンを分泌させ、ドーパミンによる衝動的な反応を引き起こす。それが疲労へとつながるわけだ。

それと同じように、AI疲れは、AIツールに仕事の主導権を握らせてしまうことに起因している。ゆえに、我々は、AIツールとコラボレートするタイミングや目的、方法を適切に設計しなければならず、そうしないかぎり、AI疲れが続くことになる。

歴史家のメルビン・クランツバーグ(Melvin Kranzberg)氏がかつて述べたように「技術は善でも、悪でも、中立でもない」*2。それはAIについても例外ではなく、我々の習慣や意図、決断次第でAIのありようはさまざまに変化する。ゆえに、AIの使い方や使う目的が正しいか否かを常に問いなおすことが重要となる。仮にそれを怠っていると、気づかぬうちにAIに仕事の優先順位がコントロールされ、思考さえも支配されるようになるリスクがある。

逆に、AIツールとのあらゆるやり取りを見つめなおすことは、業務の効率化・自動化に向けて、AIツールをどうシステムに組み込み、強化していくかを再考する良い機会となる。

このようにいうと、AI疲れの解決策は、単なる生産性向上の術(すべ)のように感じられるかもしれない。ただし、それだけではなく、AI疲れに対処することは、AIを使って適切なシステムを構築する方法やAIとの関係を適正化する方法を学ぶことでもある。

ということで以下では、アトラシアンの調査にもとづきながら、AIとの関係を再構築するために「すべきこと」と「すべきでないこと」を6つずつ紹介する。その内容を参考にすることで、疲労の源だったAIを創造性のアップやイノベーションの源へと転換することが可能になる。

すべきこと 1:現実の問題の解決に向けてAIを最大限に活用する

すべきでないこと:AIを単なるツールとして扱う

「AIは問題への即答を得るための装置ではない」。
こう指摘するのは、アトラシアンのAIエバンジェリスト、スベン・ピーターズ(Sven Peters)だ。彼によれば、AIから真の価値を得るうえではAIを「スパーリングパートナー」として扱うことが有効であるという。つまり、アイデアをぶつけ合い、仮定を問い直し、新たな視点をともに見出す相手として、AIを扱うというわけだ。

また、AIが想定外の答えを出してきた際には、そのままにしてはならない。「なぜ?そのような回答をしてきたのか」と問いかけ、深く掘り下げることが大切だ。このやり取りを通じて自分とAIとの思考のギャップが明らかになり、最初の回答を単純に受け入れるよりもはるかに多くの学びが得られる。

例えば「会議を運営するための最善策は?」と、AIに尋ねる代わりに「現在のチームの会議運営方法はこうだが、何が足りないのか?何をどう変えるべきか?その理由は?」と問いかけてみる。

その後、AIの提案に疑問を抱いたのであれば、さらに掘り下げる。そうすることでAIは、現実の問題に対する解決策をともに生み出す協力者として、真の価値をもたらしてくれるのである。

すべきこと 2:AIに高品質のナレッジを提供し、アウトプットの質を高める

すべきでないこと:あらゆる情報を無差別にAIに与える。これによってAIは「粗悪な回答」を多く出力するようになり、目的の答えを選別するのに手間取ることになる

AIはアクセス可能な情報しか処理できない。ゆえに、不完全な情報や古くなった情報、あるいは整理されていない情報をAIに与えると、AIによるアウトプットの品質は低レベルとなり、それが意思決定の劣化につながり、頭痛の種となる。

アトラシアンの調査によれば、ナレッジワーカーの79%が「AIが適切なデータにアクセスできるのならば、AIをもっと活用する」と回答している。

ただし、大抵の場合、AIのためのナレッジベースは未整備の状態にあり、品質の悪いデータにしかアクセスできていない。それがAIの有効活用を阻害している。一方で、AIを有効に活用できているチームは、高品質で最新のナレッジをAIに提供している。そのための具体的な手法はアトラシアンのレポート「The AI Collaboration Index 2025*3AIコラボレーションインデックス2025)」に掲載されているので、参考にされたい。

すべきこと 3:AIの役割を明確に定義する

すべきでないこと:AIにワークフロー全体を支配させたり、ディープな作業を中断させたりする

何らかのプロジェクトにかかわるなかで、AIの活用を図る際には、AIの役割を明確に定義することが必須だ*4。例えば「顧客からのフィードバックの傾向分析」や「プロジェクト計画の初稿作成」「プロジェクト管理ツールに登録した課題の更新」といったタスクを担わせるのは一計といえる。また、AIに「最も効果的な自身の活用方法」を提案させるのも一案だ。

AIの役割を定義したのちには、AIの活用状況を定期的に(月次または四半期ごと)チェックし、役割を見直す習慣をつけるべきである。このときチェックすべき項目として「AIとのコラボレーションが成果につながっているか?」「AIの活用により、ノイズや作業の無駄が増えていないか?」といった事項が挙げられる。

いずれにせよ、大切なのはAIの役割を設定したのちに「放置」するのではなく、その成果を見ながら調整を続けることだ。加えて、業務スピードを高めることが、AI活用のすべてではない点にも留意されたい。

アトラシアンの調査によれば、ナレッジワーカーの42%がAIのアウトプットに対して信頼を寄せ、その真偽を確認していないという。これはリスクの高い行動だが、業務スピードに向上にこだわっていると、こうした間違いに陥りやすい。AIのアウトプットが常に正しいわけではなく、多少の時間は犠牲にしても、内容を確認するよう心がけるべきである。

すべきこと 4:実践的な学習と実験のためのコミュニティを構築する

すべきでないこと:AIを習得するために受動的なトレーニングや静的なナレッジハブに依存する

アトラシアンの調査によると、回答者の職場の70%近くがAIトレーニングを従業員向けに提供しているが、その大半が成果を上げていないという。

AIの最も効果的なトレーニングは、特定の共通課題の解決に焦点を当てた小規模で活発なコミュニティや実践的なワークショップなどを通じて行われる。言い換えれば、コミュニティにおけるワークショップやハッカソン、トレーニングセッション、さらには専用Slackチャンネルこそが、AI活用の実践的な方法を学び、自信を育む場であるということだ。しかも、その学習の場は、活気と楽しさにも満ちている。それに対し、画一的なAIのトレーニングや自習用のナレッジハブは、AIとの有効で戦略的なコラボレーションを促すための学習の手法、あるいは場として有効ではなく、かつ退屈極まりないものでもある。

すべきこと 5:プロンプトにコンテキストを加えて、AIによるアウトプットの鋭さを増す

すべきでないこと:プロンプトに磨きをかけることを怠る

AIに対するプロンプトに、コンテキストと制約を加えることで、AIのアウトプットはより的確になり、そこから無駄な情報を除外する手間を省くことが可能になる。

もちろん、プロンプトの作成に要する時間は増えるが、それはほんの少しの時間である。なお、優れたプロンプトを作成するうえの要点は以下のとおりである。

  • AIの役割を明示する:
    例)「君は、コンテンツマーケティングマネージャーだ」と宣言する
  • 自分の望むアウトプットを伝える:
    例)「LinkedIn広告のコピーを書いてほしい。10案用意して欲しい」と伝える
  • 制約を与える:
    例)「広告コピーの見出しは最大10文字、ボディ(本文)は20文字以内に抑える」といった制約を与える
  • 参照すべき情報源を伝える:
    例)「当社のコアキャンペーンメッセージをまとめたConfluenceのページを参照せよ」との指示を出す

すべきこと 6:チームの課題の解決にAIを活用する

すべきでないこと: 個人の生産性向上のみにAIを使う

AIを使うことで、メールやチャットのメッセージの書き出しを自動化し、洗練させられる。だが、そのような改善はチームのビジネス目標の達成には役に立たない。AI活用による「真の魔法」は、AIと適切にコラボレートしながら、組織内の情報のサイロを打ち壊し、チームとチームをつなぎながら、実際の成果をもたらす洞察を得ることによって引き起こされる。実際、アトラシアンの調査でも、AIを個人の生産性向上のためだけに使おうとする組織は、チーム横断の調整や重大な課題の解決にAIを使っている組織に比べ、イノベーションを巻き起こす可能性が16%低いとの結果が出ている。

したがって、AI導入の効果を最大限に高めたいのであれば、次のような課題にAIを活用するのが適切といえるだろう。

  • 顧客からのフィードバックを分析し、新しいアイデアを想起する
  • チーム横断でプロジェクトを連携させる
  • 潜在リスクを特定し、障害にプロアクティブに対応する

こうした取り組みに活用することで、AIは単に仕事の時間を短くする効率化の道具から、ゲームチェンジャーへと変わるのだ。