アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。編集者兼ライターのジェーン・ティア(Jane Their)が、Z世代が好んで使う「デジタルボディランゲージ」を理解することの大切さを説く。
本稿の要約を10秒で
- 「デジタルボディランゲージ」とは、デジタルツールでメッセージをやり取りする際に使われる非言語コミュニケーション手段の1つである。
- デジタルネイティブ世代のZ世代は、デジタルボディランゲージを巧に使い、自分の意思や感情を効率的、かつ的確に相手に伝えられる。
- Z世代と効果的にコラボレートするうえでは、古い世代の人もデジタルボディランゲージを受け入れ、その適切な活用法を習得する必要がある。
Z世代が労働力の中心を成す時代へ
アトラシアンの「Teamwork Lab」では、調査会社YouGovによる協力のもと、米国、フランス、ドイツ、インド、オーストラリアで働く1万人のナレッジワーカーを対象に調査を実施した。この調査の目的は、ナレッジワーカーが仕事上の対人関係をどのように構築・維持しているかを明らかにすることだ。その調査によると、ナレッジワーカーの実に3人に2人が、同僚との日常的なコミュニケーションにおいて、相手のメッセージの意味を解釈するのに相当の時間を浪費しているという。
こうした意思疎通を効率化する手段として重宝されているのが「デジタルボディランゲージ」である。デジタルボディランゲージは、非言語コミュニケーション手段の1つで、それには「メッセージに対してクイックにレスポンスする」「絵文字を使う」「特徴的な句読点を使う」といったテクニックが含まれている。
上で触れたアトラシアンの調査によれば、ナレッジワーカーの半数がビジネスコミュニケーションの主たる手段として「対面での対話」ではなく、デジタルツール(メールやチャットツールなど)を介した「メッセージのやり取り」を使っているという。この後者のコミュニケーションにおいて、スマートフォンとともに育ってきたデジタルネイティブ世代、つまりは「Z世代(1990年後半から2010年代前半に生まれた世代)」の若者たちが巧みに使っているのがデジタルボディランゲージである。
米国の労働市場ではZ世代の数が順調に伸びており、米国労働統計局の推計(参考文書(英語))によると、 米国の労働力におけるZ世代の占める割合は2025年時点で約25%に達し、2030年には最大30%にまで拡大するという。その流れのなかで、ビジネスコミュニケーションにおけるデジタルボディランゲージの重要性が増し、その扱い方を理解することの必要性が高まってきている。
古い世代との意思疎通に難があり
Z世代のなかで、社会人として活躍し始めている人たちは、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が流行するなかで学生時代を過ごし、卒業した人が多い。加えて、彼らが社会人になったときには、リモートワーク、ないしはハイブリッドワークが(ナレッジワーカーの)標準的な働き方として企業・組織に定着していた。ゆえに、Z世代に属するナレッジワーカーたちは、対面で複数人と作業をこなしたり、ミーティングを行ったりした経験が非常に少ない。その代わりに、彼らはデジタルな環境の中で自己を表現したり、人からフィードバックを受けたりすることに最も慣れた世代といえる。
そんなZ世代が、対面でのやり取りを基本とする伝統的な職場環境で経験を積んできた古い世代とコラボレートする際には、意思疎通の齟齬(そご)や誤解が生じやすい。実際、先に触れたアトラシアン調査の結果を見ると、Z世代のナレッジワーカーの約半数(48%)が「週に1回以上の頻度」で「年配の同僚から送られてくるメッセージ(文言)の内容を解釈するために無駄な時間を費やしている」と回答している。
また、Z世代の88%が「絵文字は仕事上の意思疎通に役立つ」と回答しているのに対して、そう回答した「ベビーブーマー世代(1946年~1964年の間に生まれた世代)」の比率は88%の半数未満にとどまっている。同様に「絵文字によるフィードバックに刺激を受ける(=モチベートされる)」と答えたZ世代の比率は、ベビーブーマー世代の2.5倍も高かったのである。
デジタルボディランゲージを理解する
古い世代の人たちは、仕事のなかで「絵文字」を使ったラフで遊び心のあるやり取りをあまりしたがらない。だが、絵文字は、自分の意思や感情を相手に伝えるうえで、きわめて便利で有効なツールだ。ゆえに、絵文字を使ったラフなやり取りが、組織・チームにおけるコミュニケーションの規範としてすぐに定着する可能性は高い。
もっとも、絵文字は「単なるお飾り」ではなく、コミュニケーションの道具である(参考文書(英語))。その使い方を間違えると、自分の伝えたいことが、相手にしっかりと伝えられないことがある。
例えば、何らかの成果を上げたZ世代の新人に対して「よくやった!」という文言の代わりに絵文字で反応したとする。このとき、その新人が「評価されて嬉しい」と感じるか、それとも「自分の仕事は軽んじられている」と不快に感じるかは、ケースバイケースで異なるのである。
ゆえに、少なくとも組織・チームのリーダーは、絵文字を含めたデジタルボディランゲージへの理解を深めて、その使い方を習得しておく必要がある。また、そうすることは、世代間の違いを越えた、生産的で有効なチームワークを育むための有効で、手軽なソリューションでもある。働き手の世代がどうあろうと、互いの文化を受け入れ、共感することが効率的で良好なコラボレーションにつながることに変わりはないのである。