アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンのコミュニティ、チームワークラボ(Teamwork Lab)代表のモーリー・サンズ(Molly Sands)博士が、調査データに基づきながら、個人やチームのパフォーマンスを高めるタスク管理の正しいあり方について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 「ToDoリスト」の使い方を含め、タスク管理の方法は十人十色で、人によって異なるのが一般的である。
  • ただし、タスクの管理に長じている人に共通して見られるアプローチがあり、そうしたアプローチを採用することでタスクを効果的に管理して自身やチームの生産性を高めることが可能になる。
  • 本稿では、調査データを参考にしながら、個人やチームの生産性を高めるためのタスク管理の正しいあり方について考察する。

多数のタスクに忙殺されるナレッジワーカー

現代のナレッジワーカーのもとには、処理すべき仕事(以下、タスク)が次から次へと舞い込んでくる。ゆえに、懸命になってタスクをこなしても、未処理のタスクが一向に減らないのが現状ではないだろうか。

では、多方面から飛び込んでくるタスクをどのように管理するのが適切なのだろうか。また、タスクの優先順位をどのようにつければ良いのだろうか。そして、すべてのタスクをうまく管理し、こなしている人は、どのようにしてそれを実現しているのだろうか。

本稿では、これらの疑問への答えを、調査データを参考にしながら解き明かしていく。

本稿で使う調査は、私が代表を務めるチームワークラボが、ウェイクフィールドリサーチ(Wakefield Research)社(参考文書(英語))の協力のもとで実施したものだ(以下、この調査をラボ調査と呼ぶ)。

ラボ調査の対象としたのは、英国、オーストラリア、インド、ドイツ、フランスの6カ国で働くナレッジワーカー6,000人(国ごとに1,000人を調査の対象とした)。調査の主目的は、ナレッジワーカーによるタスク管理の実態を明らかにすることだ。調査は2024年12月20日から2025年1月12日にかけて実施され、メールで調査対象者に協力を要請し、オンライン経由で回答を収集した。

十人十色のタスク管理

タスクを効率的に処理していくうえでは、それを適切に管理すること、言い換えれば、タスクの整理整頓が不可欠だ。実際、今回のラボ調査によると、ナレッジワーカーの89%が「タスクの整理整頓に長けた人が多くのことを成し遂げられる」と考えており、82%がタスクを管理するためのシステムを確立させているという。

ただ、それらのシステムは、まるで雪の結晶のように個々に異なる。そのためか、ナレッジワーカーの半数以上(52%)が「自分のタスク管理は、他者からは無秩序に見えるかもしれない」と認めている。それでも、自身のタスク管理は自分に最適であり、しっかりと機能していると信じているようだ。

タスク管理の方法がワーカーごとに異なるがゆえに、「ToDoリスト」もあり方も、人それぞれで異なる。とはいえ、ToDoリストからタスクを消し去るときの満足感は、すべてのワーカーに共通しているはずである。実際、ラボ調査によると、ToDoリストを持つ専門職者の実に70%が、同僚から褒められるよりも、リスト内のタスクを予定どおりに処理できるかどうかのスリルを好むと回答しているという。

対立する2つのタスクリスト:「プライベート用」と「仕事用」

ラボ調査では、ナレッジワーカーが仕事とプライベートのタスクをどのように管理しているかについても調べている。 その結果、ほぼ半数(47%)のワーカーが、仕事用とプライベート用の2つのタスクリストを所持していることが判明した。それに対し、ワーカーのおよそ4人に1人(23%)は、仕事とプライベートの全タスクを1つのリストに統合し、21%は、仕事関連のタスクのみをタスクリストに記録し、プライベートの予定は記憶のみに頼っていることがわかった。

さらに、ワーカーの多くが「カレンダー」「ノート」「スケジューラー(スケジューリングアプリ)」など、さまざまなシステムや媒体を使って仕事とプライベートの両方のタスクを管理していることも明らかになった。

プライベートのタスクと仕事のタスクをトラッキングするツールの利用比較

左から「カレンダーやスケジュールアプリ」「手帳やノート」「タスク管理、メモアプリ」でそれぞれ仕事(紫)とプライベート(青)で使用している人の割合

では、どのアプローチがベストなのだろうか。仕事とプライベートのタスクは個別に管理するのが良いのだろうか、それとも一緒に管理するのが正解なのだろうか。また、タスクは1つの場所で管理するのが良いのか、それとも、複数の場所で管理したほうが良いのだろうか。

もちろん、人によって好みは分かれるだろう。ただし、今回のラボ調査では、会社から提供されるタスクの管理システムやツールを使い、仕事とプライベートのタスクを一元的に管理している人ほど、タスクをより巧みに整理整頓できていることが判明している。例えば、会社から提供されているタスク管理のシステムを使用しているナレッジワーカーは、自分で考案したシステムに頼っている人よりも、1.4倍も多く「自分は整理上手である」と答えている。さらに「自分は整理上手である」と考えている人は、会社支給のシステムをプライベートのタスク管理にも使っている割合が、そうしていない人よりも2倍も高かったのである。

タスクの未整理が引き起こす負の連鎖

会社のチームにおいては、個々人のタスクが複雑に絡み合い、相互依存の関係を成している。ゆえに、自分に割り当てられたタスクはきちんと整理できていても、タスクの整理整頓が苦手な同僚のせいで、自分(やチーム全体)の生産性が低下してしまう可能性が大いにある。ゆえに、ナレッジワーカーの多くは、タスクの整理整頓が苦手な同僚に厳しい目を向け、同僚によるタスク管理のずさんさを許容しようともしない。

今回のラボ調査でも、回答者の実に8割近く(78%)が「タスクの整理整頓ができない同僚との共同作業を強いられるくらいなら、その同僚のタスクを自分で引き受けたほうが良い」と回答している。さらに「チーム全体の業績を向上させるためには、タスクの整理整頓ができないメンバーは解雇すべき」と答えたナレッジワーカーは、全体の3分の2に上っている。

こうした調査結果は、驚くべきものではない。というのも、タスク管理における秩序の欠如は、チーム全体の仕事に深刻な遅延を引き起こし、悪感情を生み出すものだからだ。

秩序に欠ける同僚(チームメンバー)と働く負の影響トップ6

56% 自分の仕事が増える
45% 仕事の手戻りが増える
40% チーム内の人間関係が悪化する
36% 自分の生産性が悪化する
32% 共同作業の質が落ちる
29% 仕事が遅延する

個人の生産性を高めるタスク管理の3つのTIPS

TIPS① タイムボクシング

タスクの適切な管理に向けた第一歩は「特定のタスクにどれくらいの時間がかかるか」を予測する能力を磨くことである。その次に、予測した時間をカレンダー上で確保し、全力でそのタイムスケジュールを守るようにする。

このテクニックは「タイムボクシング」と呼ばれ、先延ばし癖のある人や、複数のタスクを同時並行で同時に進めようとして破綻してしまいがちな人にとって特に有効である。

タイムボクシングは、生産性と整合性を維持するのに役立つ実証済みの手法でもある。

アトラシアンとチームワークラボとの共同実験(参考文書(英語))でも、68%のナレッジワーカーがタイムボクシングによって生産性が向上し、55%の人が「目標がより明確になった」としている。こうした効果は、達成すべき最も重要なタスクを中心に1日を計画することによってもたらされる。これにより、1日の中で、最優先で処理すべき重要なタスクを特定し、それを予定どおりに終わらせることに集中できるようになる。

さらに効果的なタイムボクシングの実践法は、カレンダーに記載したジョブスケジュールをチームの全員と共有することだ。これにより、チーム内の誰もが、あなたが今どんな仕事をしていて、いつそれに取りかかり、完了までにどの程度の時間がかかりそうかを把握できるようになる。

なお、アトラシアンのタスク管理ツール「Trello」には「プランナー機能」が追加され、Trelloボードから直接カレンダーにToDoリストを移動できるようになっている。

TIPS② ToDoリストを改善する

今回のラボ調査により、タスクの整理整頓が得意な人は、整理整頓が得意ではない人よりも「数日以内に完了できないタスクをToDoリストから削除する可能性」が1.4倍高いことが判明している。

このように、リストにあるタスクの遂行を長引かせる(そして、最終的には何もしないで終わる)のではなく、早めにToDoリストから除外してしまう習慣を身につけることは大切である。特に、そのタスクが重要でないのであれば、そもそもそれをToDoリストに載せる必要もない。

ちなみに、Trelloを使えば、複数のシステムから直近で処理すべき重要なタスク(=ToDo)を探し出す作業から解放される。あなたがシステムに記録したすべてのタスクは、Trelloの「受信箱」に集められ、そこで新しいタスクを確認したり、ソートしたり、フィルタリングしたりと、お好みの方法で整理することができる。

TIPS③ 毎日の「最重要タスク」を設定して確実に遂行する

自分が何を目指しているのかを明確に理解していれば、タスク管理やタイムマネジメントはうまくいく。このとき重要になるのが、その日の「最重要タスク」とは何かを特定し、それを処理するためのスケジュールをしっかりと組んでおくことだ。

例えば、毎日の業務終了時に、翌日の「最重要タスク」を特定して、それを確実に達成するために必要な時間と余裕を確保できるようスケジュールを調整する。また、ここで設定する最重要タスクは、他者に任せたり、無視したりすることが絶対にできないような、かつ、自分やチームの業績への影響力が大きいタスクを1つだけ選ぶべきである。

なぜ、1つに絞り込む必要があるかといえば、まずは小さく始めることが重要だからだ。毎日1つずつ大きなことを成し遂げていけば、それは自分やチームの仕事を前に進める大きな推進力となるのである。

実のところ、自分の重要タスクに集中してディープに取り組んだり、何事かを成し遂げたりする時間は、会議やメールの確認・返信などの作業にとかく奪われがちである。だが、真の生産性は、自分の重要タスクに費やす時間を確保することによってもたらされる。言い換えれば、タスク管理を適切に行い、優先度の高いタスクを確実にこなせる環境を整えることが、自身の生産性を上げる最も確実な方法なのである。

タスク管理を進化させる

私たちナレッジワーカーが直面する課題やチームのあり方、ワークスタイルは絶えず変化し、また進化している。ゆえに、私たちのタスクを整理整頓するためのシステムやツールも進化させる必要がある。

例えば、Trelloのような柔軟なタスク管理ツールや、この記事で紹介したTIPSを組み合わせることで、自分自身がこなすべくタスク、そして、進むべき道がより整理されたかたちで見えてくるはずである。

なお、Trelloの新製品に関してより詳しい情報を知りたい方は、ブログ(英語版)をご覧いただきたい。