アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのシャイナ・ローゼン(Shaina Rozen)が、職場における学習(成人学習)の効果を高める方法を紹介する。

職場における効果的な学びのための4つのTIPS

あらゆる組織、職位、さらには業界の仕事のあり方は急速に変化しつつある。ゆえに、個人や組織の成功は、私たちの知識やスキルが仕事の変化に適応できるかにかかっている。以下、その観点を踏まえながら、個人とチームの知識を広げて、より多くのことを成し遂げたいと考えている人たちに向けて、マーシャルのチームが勧める4つのTIPSを紹介する。

TIPS① 学習の文化を築く

UXデザインのもう1つの原則は、完璧さよりも反復と進歩のほうを大切にすることだ。この原則を仕事上のプロフェッショナルの育成に応用するうえでは、学習の文化を築くことが不可欠であるとマーシャルは指摘する。

「学習の文化は、組織で働く人たちが安心してリスクを冒し、失敗から学べる心理的安全性(参考文書)が確保された職場環境を作り、かつ、成長型思考(グロースマインドセット/参考文書)を受け入れ、育むことで構築できます。また、その際にはリーダーが自ら模範となり、自己と周囲の成長に投資し、学習の文化をサポートしていくことが求められます」(マーシャル)

TIPS② 周囲のサポートを受けながら学習のための時間とスペースを設ける

職場での学習は、多くの場合、仕事中に自然発生的に起こる。ただし、自分のスキルを常に新鮮に保ち、知識を広げるためには、意識的にそれに取り組むことが必要であるとマーシャルは指摘し、こう続ける。

「例えば、月に1回の頻度で新しい教育コースを受講したり、四半期に1回のサイクルで1 on 1ないしは同僚によるフィードバックセッションを行ったり、あるいは、アジャイル開発(スクラムのスプリント)における振り返り(参考文書)のような儀式を行ったりと、定期的にトレーニングやスキルアップのための専用の時間を確保することが大切です。そうした学習の機会を組み合わせるとさらに良いといえます」

マーシャルは、こうした学習のプロセスを通じて知識の共有を促すことも推奨している。

「知識共有のための障壁を取り除くこと、また、そうすることにインセンティブを与えることは、チームにおける集合知の向上につながります。と同時に、メンバー同士の相互理解を深めて、お互いの強いつながりや創造性を感じさせることもできます。さらにいえば、知識の共有によって、自分のチームメイトが自分と同じ失敗を繰り返したり、自分の発明を1から開発しようと時間を浪費したりするのを防ぐこともできるのです」(マーシャル)

TIPS③ 他者とのつながりを育むプログラムを探す

マーシャルは、彼が個人的に興味を抱き、説得力があると考える学習哲学として「コネクティビズム」と「アンドラゴジー」の2つを挙げている。

このうちコネクティビズムは、学習は情報と経験の間につながりを生み出す継続的なプロセスであることを示唆するものだ。また、アンドラゴジーは、大人(成人)は内発的な要因によって動機づけられ、自分のニーズに合った学習経験を好む自己主導的な学習者であることを表している。

マーシャルは、学びの効果を最大化するために、これらの考え方を取り入れた専門能力の開発プログラムを探すよう勧めている。

「自分の学びたいことに直接関係し、かつ、オンラインコミュニティやソーシャルラーニングといった知識共有のプラットフォームが整備され、それを活用して他者とのつながりが育めるような専門能力の開発プログラムを探すべきです。このようなタイプのプログラムは、成人学習者にとって、とても魅力的で効果的である可能性が高いといえます」(マーシャル)

TIPS④ 実績のある学習方法を活用する

実績のある学習方法を知ることは、チームがより多くのことを学び、吸収し、保持するのに役に立つ。
「学習は難しい取り組みです。自分がベストと思う方法に頼ることなく、実績のある学習方法を知り、その戦略にもとづいて、学習に関する自分の知識やスキルを検証することをお勧めします」と、アトラシアンのシニア学習体験デザイナー、ベッキー・ミューラー(Becky Mueller)は説く。

この言葉を受けたかたちで、マーシャルはこう付け加える。

「先にも述べたとおり、アトラシアンの顧客教育では、学習者の注意を引き、学習に参加してもらうために、学習嗜好に関する知識を使います。ただし、私たちの目標は、堅苦しい学習嗜好のカテゴリーとは関係なく、学習者に必要な知識とスキルを身につけてもらうことです」

なお、マーシャルのチームは書籍「Make it Stick」(参考文書(英語))のファンであるという。この本には、学習スタイルを超越するための章があり、そこには次のような記述があるという。

「自分の好きな学習スタイルの枠の中に閉じこもってはならない。自分のリソースと知性を活用することで、自分が持ちたい知識やスキルをマスターすることが可能になる」
また、「Make It Stick」には、効果的な学習のためのTIPSや戦略も掲載されているようだ。それは次のようなものである。

  • 学習の時間と頻度を適正化する。
  • 複数の学習方法を用いて1つの教材を体験する。
  • 学習の一環として、教材のテストを実施する。
  • 単純な情報の繰り返しではなく、意味のある情報の関連付けが行えるような教材を選ぶ。

「私はまだ学んでいる」
── ミケランジェロ(87 歳)

イタリアの偉大なるルネッサンス芸術家ミケランジェロは、70 年以上絵画や彫刻の作成に携わったのちも「私はまだ学んでいる(Ancora imparo)」といったようだ。

ミケランジェロは、学習スタイルや学習嗜好について知らなかったかもしれない。ただし、彼が生涯を通じて学習文化に浸り、技術を磨くことに投資していたことは間違いない。

そんなミケランジェロのようになりたいと望んでいる人も、単に昇進を目指している人も、あるいは純粋に知的欲求を満たしたり、楽しんだりするために新しいことを探求している人も、学ぶことは心の栄養となり、チーム内での自身の価値向上にもつながる。また、学びによって獲得した知識をチーム内の他者と分かち合えば合うほど、チームの集合知は高められ、1人では不可能なことを成し遂げられるようになるのだ。