アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアン チーム エニウェア ラボ(Team Anywhere Lab.)のヘッド、モリー・サンズ(Molly Sands)博士が、調査データを交えながら、チームのつながりを促進する「集会」の効果について説く。

本稿の要約を10秒で

  • 大手企業を中心に、チームのメンバーが異なる場所に分散して仕事をするケースが増え、チーム内のつながりが希薄化している。
  • ハイブリッドワークを推進しているアトラシアンでは、チーム内のつながりを維持・強化する目的で、オフィスを使ったチーム集会を年に数回の頻度で行うことを奨励している。
  • アトラシアンの社内調査により、チーム集会がチーム内のつながりを強め、コミュニケーション、コラボレーションを活性化させる効果があることが明らかになった。

チームの分散ワークが世界のスタンダード

今日における多くの企業では、たとえチームの全員が毎日出勤していたとしても、メンバーの全員が肩を並べて働くケースはかなり少なくなっている。以下はその傾向を示す調査結果である。

  • フォーチュン500のエグゼクティブを対象とした調査によれば、ほとんどの社員がチームメイトと同じ場所で仕事をしていないという(参考文書(英語))。
  • 別の調査によると、メンバー全員が同じオフィスで仕事をしているチームは全体の19%に過ぎないという(参考文書(英語))。
  • マイクロソフトでは、同じオフィスで働くチームの割合が、新型コロナウイルス感染症の流行以前の61%から、2023年4月時点で27%に落ち込んでいる(参考文書(英語))。

チームのメンバーが同じ場所で働いていない場合、チームの結束を強めることに力を注ぐ必要がある。例えば、アトラシアンでは、チームの全員が年に数回、いずれかのオフィスで直接会うことを奨励している。その集会は、チーム内のつながりを強め、ミッションクリティカルな仕事のコラボレーションを促進することを目的にしている。

こうしたチーム集会を、アトラシアンは「Intentional Togetherness Gathering (ITG) プログラム」の一環として2022年8月に始動させた。以来、1,600回を超える集会(以下、ITGイベント)が世界各所で行われ、平均16人が参加。参加者の満足度は96%に上っている。

もっとも、ITGイベントを始めた当初、その集会によって本当にチーム内のつながりが強められるかどうかがはっきりしていなかった。そこで、アトラシアンのチームエニウェアラボ(Team Anywhere Lab./以下、TAL)は、行動科学の専門家から成る社内グループを組織し、集会の効果を追跡調査することにした。

その結果、ITGイベントにチーム内の絆(きずな)を強めて重要なプロジェクトを前進させる効果があることが明らかになった。以下は、本調査結果の概略である。

  • オフィスに毎日出勤させずとも年数回の集会でチーム内のつながりが強められる
  • チーム集会は新入社員や新卒社員に特に効果的である。
  • チーム内のつながりはチームの生産性、コミュニケーション、有効性を向上させる。

オフィスに毎日出勤させずとも
年数回の集会でチーム内のつながりが強められる

ITGイベントは世界11カ所に展開されているグローバルオフィスのいずれかで開催され、3~5日間の日程で行われる。その間、チームのマネージャーはチームにおける人間関係構築を優先するよう奨励されており、その指示に従うかたちでメンバー同士が交流する時間を設けたり、チームビルディングの活動に参加したり、重要なプロジェクトの推進を手助けしたりしている。

このような集まりをサポートすべく、アトラシアンではグローバルオフィスの設計を見直し、大人数による会合が可能な開放的でフレキシブルなスペースを確保した。また、遠方からの来訪者のために旅行カバンなどの荷物を置くための場所も設置した。

ちなみに、アトラシアンのニューヨークオフィスでは来訪者の実に50%が、ITGイベントなどのために遠方から来ていた。その事実が社内調査で明らかになったとき、ニューヨークオフィスにおける65人分のデスクスペースをITGイベント専用のスペースに切り替えた。このようにアトラシアンでは、オフィスで過ごす社員たちのニーズを満たすべく、物理的なワークスペースの使いやすさの向上にも力を注いできたのである。

こうして運用されてきたITGイベントの効果を追跡するために、アトラシアンでは社員に対し、イベント参加の前後においてアンケート調査を実施している。このアンケートは、以下のような項目に対して「1(=強く不同意) ~5(=強く同意)」の5段階で評価する形式のものだ。

  • 項目① 私のチームはメンバー同士のつながりが強くある(Team Connection)
  • 項目② 自分の仕事とチームの目標との間に明確なつながりがある(Individual-team alignment)
  • 項目③ 私のチームは、新しいアイデアを開発するのに十分な時間を取っている(Enough time to develop ideas)

以下の図1は、これら3つの項目に対する社員の評価ポイントが、ITGイベントに参加する1カ月前と参加の1カ月後にどう変化したかを示したものだ。

図1:ITGイベント参加前 vs. 参加後~ 自分のチームに対する評価の変化

ご覧のように、ITGイベントへの参加後、3つの項目すべてにおいて社員の評価(平均値)が高まっている。

これら3つの項目は、チーム内コラボレーションを活性化させ、その効力を高めるための主要な要素だ。ゆえに上記の調査結果からは、ITGイベント(すなわちチーム集会)が、チーム内のコラボレーションにプラスの影響を与えた可能性が高いことがわかる。

また、上図のとおり、ITGイベントは、チーム内のつながりに最も大きな影響を与えており、この点に対する評価が27%アップしている。ただし、のちの追跡調査により、つながりに対する社員の評価がときの経過とともに下降線をたどり、ITGイベントの4カ月後にはイベント前の水準に戻ってしまうことも判明した(下図参照)

図2:ITGイベントによるチーム内のつながりの「向上」と「減退」

私たちはこれを「つながりの減衰」と呼んでいる。ゆえに、チームでITGイベントを催す頻度は4カ月に1回(=年3回)程度が適切であると結論づけている。

チーム集会は新入に特に効果的である

今回のアンケート調査により、ITGイベントのようなチームの集まりは、入社1年未満の新人(新卒の新人と中途入社の新人)に対し、より大きな影響を与えることも明らかになった。例えば、ITGイベントに参加した新卒の新人(=New grad)の場合、その96%が、イベント参加から1カ月後のアンケートでチームとのつながりを感じると答え、つながりに対する評価ポイントがイベント参加前(1カ月前)に比べて実に74%も上昇した。また、新卒の新人の場合、イベント開催の2カ月後においても、チームとのつながりについて5点満点に近い評価(評価値:4.61)を与えていた(下図参照)。

図3:チーム内のつながりに対する新入社員、新卒者の評価の推移

こうした調査結果は、ある意味で当然のことといえる。というのも、新しい組織・職場で働き始めた新人にとって、ともに働くチームのメンバーと直接会って関係を築く機会は、他の社員よりもはるかに有用であり、有益だからだ。とはいえ、新人たちも他の社員と同じように、それほど頻繁な集会は必要ではないようだ。図3にあるとおり、新卒の新人も中途採用の新人も、他の社員と同じようにイベント参加から4カ月程度でつながりの感覚をイベント参加前の状態に戻している。したがって年3回程度の頻度でチーム集会を行えば、つながりに対する彼らの評価を高く保つことが可能になると思われる。

チーム内のつながりはチームの生産性、コミュニケーション、有効性を向上させる

アトラシアンでは、チーム内のつながりが、チームの生産性やコミュニケーション、有効性に対する認識にどのような影響を与えているかについても調べている。この調査は、以下のような事柄について「同意」か「不同意」かを尋ねる形式のものだ。

  • 項目:私は定期的に高いレベルの生産性を達成している。
  • 項目:自分の仕事に影響する決定は、迅速かつ効果的に下される。
  • 項目:私のチームは効果的にコラボレートしながら仕事を進めている。

この調査の結果、チーム内のつながりが、チームの生産性や意思決定のスピード、そしてコラボレーションにプラスの影響を及ぼしていることが明らかになった。また、上述したとおり、ITGイベントなどのチーム集会には、チームのつながりを強める効果がある。ゆえに、チーム集会は間接的にチームの生産性やコミュニケーション、コラボレーションを向上させられることもわかる。

図4:集会はチームの生産性、コミュニケーション、コラボレーションの向上につながる

(図内英文翻訳)
チーム集会への参加(参加から1カ月以内)
→ チーム内のつながりをより強く感じる
→ チームの生産性やコミュニケーション、コラボレーションに好感触

人と直接会うことは、人とのつながりを維持、強化するうえで重要だ。ただ、チームのメンバーがお互いを身近に感じるために物理的な空間で毎日一緒にいる必要もない。年に数回、全員で交流すれば、それで良いのだ。