本稿の要約を10秒で
- 優れたチームの意思決定プロセスには共通する部分が多くあり、それを取り入れた意思決定の標準的なフレームワークがすでに存在する。
- そのフレームは7つのステップから成り、そのステップを踏むことで、チームにとって重要な意思決定を合理的に下すことが可能になる。
- 意思決定は、いかに慎重に下してもうまくいかないことがあり、決定事項を実行に移してから「振り返り」による見直し、調整が必要とされる。
意思決定のための7つのステップと実践方法
私たちはさまざまな仕事上の意思決定をチームで行なっている。そして、その意思決定のプロセスは、チームごとにバラバラであるのが一般的だ。ただし、優れたチームにおける意思決定プロセスには共通している部分が多くあり、それをベースにした意思決定プロセスの標準的なフレームワークもすでに存在する。ここでは、その標準フレームワークを構成する7つのステップを、ステップの実践方法とともに紹介する。以下に紹介するステップを踏むことで、あなたやチームは、それぞれの課題を特定し、数ある選択肢の中から、適切な課題解決の手段を選択することが可能になる。
ステップ①決定すべき事柄を特定する
さて、問題の解決策をチームで検討しよう!──。このように声をかけられると、私たちの多くは、即座にスーパーヒーローのマントを身に纏(まと)い問題解決の場に飛び入ろうとする。
ただし、その前に成すべき重要な事柄が1つある。それは、チームで解決策を検討すべき問題の中身とは何かを特定することだ。すなわち「具体的にどのような問題を解決しようとしているのか」「それによって何を達成しようとしているか」を明確にすることが、有効な意思決定を下すための最初のステップになるというわけだ。
【ステップ①の実践方法】
- 「5つのWhy分析(なぜなぜ分析)」を実践する:
なぜなぜ分析とは、表面化した「症状」のみならず、その症状を引き起こした根本原因を突き止めるためのテクニックだ。「なぜ、そうなったのか」という問いかけを使いながら「症状」から「発症の原因」を割り出し、割り出した「発症の原因」から、「その理由となる事象が起きた原因」を突き止める。この分析作業を5回繰り返すことで、問題の根本原因が特定できる。 - 「問題のフレーミング」を行う:
問題のフレーミングとは、問題の原因や問題が外部に与える影響など、問題を詳細に深掘りすることを指している。ここで重要なのは、問題の解決策を検討するのではなく、問題をしっかりと定義することである。
【ステップ①で注意すべきこと】
チームでの意思決定において注意を払うべき1つは「決断疲れ」だ。これは、意思決定すべき事柄が多過ぎて心身が疲弊し、結果として間違った選択をしてしまう症状を指している。実のところ、物事の選択は精神的に相当の負担がかかる(参考文書 (英語))。ゆえに1度に1つの決断をするようにすることが大切だ。
ステップ②情報を集める
あなたのチームはおそらく、担当する業務、ないしはビジネス領域について相応の経験と、それにもとづく直感や推測力を有しているはずである。ただし、そうした直感や推測に頼った課題への対応は、その場しのぎの条件反射的なものにすぎない。仕事上の重要な意思決定を下す際には、情報収集のための調査に十分な時間とコストをかける必要がある。
また、情報収集のステップは、いわば選択の根拠を集め、構築する段階といえる。ゆえに、調査データはもとより、顧客の体験談、過去のプロジェクトに関する情報、フィードバックなど、必要と思われる情報を可能か限り収集する。それによって、直感や推測ではなくファクト(データ)にもとづいた決断が下せるようになる。
【ステップ②の実践方法】
- チーム内で「マインドマッピング」のためのセッションを催す:
マインドマッピングとは、問題のさまざまな側面を調べ上げ、実行可能な解決策のアイデアを整理する作業を意味している。そのためのセッションを通じて、チーム内で自由にアイデアを出し合い、それをつなぎ合わせていく。それによって、どのような情報がプロセスの遂行に最も役立つかを特定することも可能になる。 - 「プロジェクトポスター」を作成する:
プロジェクトポスターは、プロジェクトを通じて解決を目指す課題や課題解決に有効と見なされる手段、プロジェクトの最終的(理想的)な成果などを完結にまとめ上げた計画書だ。その作成によって、プロジェクトの目標が明確になるほか、プロジェクトを推進させるために必要となる情報を「すでに知っている情報」と「これから調査すべき情報」とに明確に分けることが可能になる。なお、プロジェクトポスターは一度作成すれば、それで作成の作業が完了するタイプの文書ではなく、プロジェクトに進捗に応じて適宜アップデートしていくことになる。
【ステップ②で注意すべきこと】
情報バイアスと情報過多:情報収集のステップで起こりがちな間違いは、情報にバイアスをかけようとしたり、自分たちの行動にほとんど影響を与えない不必要な情報を集めようとしたりすることだ。情報は多ければ多いほど良いわけではない。逆に、自分たちにとって不必要なデータや洞察を数多く集めてしまうと、フォーカスポイントがぼやけ、判断が鈍ることになる。