アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が短期目標を定めて達成することの大切さを説く。

本稿の要約を10秒で

  • 短期目標とは、長期的な目標の達成に向けた行動の計画である
  • 短期目標の設定、達成はモチベーションアップや満足度の向上につながる
  • 短期目標の設定には「SMARTゴール」フレームワークの活用が有効である

短期目標に類するもの

あなたは自身の「短期目標」を立てた経験があるだろうか。私の場合、短期目標を立て、明文化する習慣がある。例えば、以下のような具合である。

  • 今週は少なくとも3日、昼食の時間に散歩もする
  • 今月内に最低10本のコラムを執筆する
  • 今期は講演の機会を5回獲得する

このように1日、1週間、1カ月、1年を通して達成可能な小さなゴール、すなわち短期目標を定めて達成することで自分のモチベーションや満足感を高めることが可能になる。

改めて述べるが短期目標とは「比較的近い将来に達成したいこと」を指している。その構造を少し掘り下げると以下のようになる。

  • 短期目標の定義:短期間で達成可能な目標。ちなみに、短期目標の期間について、多くの専門家は1年以内としている(参考文書 (英語))
  • 短期目標の内容:具体的な行動や達成すべきこと
  • 短期目標の特性:自身のキャリアや人生のビジョン(なりたい自分)の実現に資する

ここで「個人的な短期目標」と「仕事上の短期目標」について具体的な例を紹介しておきたい。

【短期的な仕事上の目標の例】

  • 会社の3カ月間のリーダーシップ研修プログラムを修了する
  • 今期、部門横断的なプロジェクトをリードする
  • 今月、週に1人以上の従業員に対して賞賛と肯定的なフィードバックを与える

【短期的な個人目標の例】

  • 今週は毎日ストレッチをする
  • 今月は2冊の本を読む
  • 今年内に車のローンを完済する

長期目標と短期目標の本質的な違い

ご存知のとおり、目標には長期的なものもある。その長期目標と短期目標との違いを単純に言えば、短期目標は「近い将来達成すべきもの」であり、長期目標は「より先の将来に達成を目指すもの」ということになる。

ただし、短期目標と長期目標との間には、こうした目標達成の「期間」の違いのほかにも異なることがある。

まず、長期目標は、その目標を設定した人の「価値観」や「信念」「願望」を反映させものと言える。一方の短期目標は、その長期的な目標の達成に向けた具体的なステップ、ないしは行動といえる。

例えば、短期目標が、会社のリーダーシップ・トレーニング・プログラムを修了することであれば、それは、長期的な目標であるマネージャーへの昇進に向けたステップとなる。

短期目標を定める効果

先に触れたとおり、短期目標を定めることには、自身のモチベーションを高める効果がある。以下では、その点も含めて、短期目標を定めるメリットについて整理しておく。

メリット①モチベーションと満足感がアップする

短期目標は、短期的に達成可能なものとはいえ、それを達成するための行動を起こしたり、行動を継続させたりするには相応の気力がいる。

例えば、新年の抱負を立てた経験がある方ならば、その達成に向けて気力を奮い立たせる難度の高さはご存知のはずである。とはいえ、新年の抱負のような短期目標を定め、達成することは、自身のモチベーションや満足度を高めるために必須の要件と言える。

ではなぜ、短期目標の設定、達成がモチベーションアップや満足度の向上につながるのだろうか。

結論から先に言えば、短期目標の設定、達成は、神経伝達物質であるドーパミン(参考文書 (英語))の分泌を促すからである。ドーパミンは一般的に、報酬に反応して放出される、快感をもたらす脳内物質と認識されている。ただし、この物質はモチベーションにも密接な関係していることが研究によって明らかにされている(参考文書 (英語))。要するに、ドーパミンは、私たちが報酬を求めようとする際にも分泌され、モチベーションアップに作用するというわけだ。

加えて、ドーパミンの分泌量は、目標を達成したとき、あるいは達成が間近になったときに急上昇する(参考文書 (英語))。しかも、人の脳は基本的に即効性の高い喜びを好む。そして短期目標は、その即効性の高い報酬を脳に提供するのである。

メリット②長期目標の達成プロセスがマネージしやすくする

あなたは、以下のどちらを簡単だと感じるだろうか。
(A)毎日30分のウォーキングをする
(B)フルマラソン大会への参加を目指してランニングのトレーニングを積む

おそらく大多数の人が「(A)のほうが楽で簡単」と答えるはずである。ただし、普段まったく運動をしていない人が、数年先にフルマラソン大会への参加を目指した場合、上記「(A)」と「(B)」は同じことを目指した行動計画となりうる。

長期的な大目標を達成しようとした場合、人は自身の行動を変えなければならない。そのようなときに、いきなり達成のハードルが高そうな行動計画を立ててしまうと、計画を実行に移す気力が出せず、結果的に大目標に向けた最初のステップで躓(つまず)きかねない。

したがって、大目標に向けては、より達成しやすい行動の計画、すなわち短期目標を立て、ステップバイステップの方式で大目標の達成に向けた道筋を進むことが重要となる。言い換えれば、短期目標の設定は、長期的な大目標の達成に向けたプロセスをマネージしやすくする、あるいは大目標に向けた道筋を進みやすくする効果があるのである。

メリット③長期目標に向けた「道しるべ」が明確にできる

自分がどこに行きたいかを考えるのは簡単だ。ただし、そこにたどり着くまでにどういった道筋を、どのようにたどるかの計画を立てるのはなかなか難しい。また、長期目標を明確にできても、それは自分を“目的地”に運ぶ“燃料”には成りえない。

だからこそ、短期目標の設定が必要となってくる。先の記述からもわかるとおり、短期目標は、長期目標の達成に必要とされる小さな行動を表すものだ。要するに、長期目標が目的地であるならば、短期目標はその「道しるべ」となるのである。

メリット④定期的な振り返りと調整ができる

自分の願望や価値観は時とともに変化し、それに伴って長期的な目標も変化することがよくある。そして、短期目標は、その達成時に自分の進歩を自ら祝うマイルストーンであると同時に、振り返りの機会にもなる。

ここで言う振り返りとは、短期目標の達成時に以下のような質問を自分に対して投じることを意味している。

  • その短期目標を達成したときの気分はどうだったのか。
  • 短期目標の達成に向けた行動に、想定どおりの「やりがい」を感じたのか。
  • それほどの「やりがい」を感じなかったとしたら、それはなぜなのか。
  • そもそも、その短期目標は自分の包括的なビジョン(なりたい自分)と合致しているのか。

もちろん、リストアップしたすべての短期目標について、それを達成するたびにじっくりと自己分析する必要はない。ときには直感的な分析が自然に行われることもある。

例えば、リーダーシッププログラムを終えて「やる気」よりも「疲れ」のほうを強く感じたとしよう。その場合には、自分が本当にマネージャーになりたいかどうか点検すべきである。当然のことながら、大きな目標に向けた道のりの終わりごろになってから軌道修正をするよりも、可能な限り早い段階で軌道修正をしたほうが、別の道に進みやすくなるのである。

SMARTゴールフレームワークの効用

短期目標は、長期目標よりも日々の「To-Doリスト」により近いものと言える。では、短期目標の設定はTo-Doリストに処理すべきタスクを書き込むのと何がどう違うのだろうか。

まず、短期目標の設定は、To-Doリストの作成よりも思慮深く、そして計画性をもって行うべきである。

そして適量の短期目標を立てるうえでは「SMARTゴール」と呼ばれるフレームワークを使うのが効果的だ。ここで言うSMARTとは「①Specific(具体性)」「②Measurable(測定可能)」 「③Achievable(達成可能)」「④Relevant(関連性)」「⑤Time-based(期限)」の頭文字をとった略語だ。そして、これら5つの特性を持った「ゴール(目標)」を定めることが、SMARTゴールが意味するところである。以下に5つの特性についての概略を簡単にまとめておく。

  1. Specific(具体性):目標設定時に何を達成するかを明確にすることを指す
  2. Measurable(測定可能):目標の達成度を定量的に計測できる目標を定めることを指す
  3. Achievable(達成可能):設定したタイムフレーム内で現実的に達成可能な目標を立てることを指す
  4. Relevant(関連性):より大きな目標の達成につながる、あるいは大きな目標に関係する目標を立てることを意味する
  5. Time-based(期限):目標に必ず達成の期限を設定することを意味する

また、参考までにSMARTゴールフレームワークを使った短期目標の例を示したい。

【仕事上のSMART短期目標の例】

  • 今年5月に3カ月間のリーダーシップ研修プログラムを修了する
  • 今四半期末までに、少なくとも3つのチームが参加する組織横断的なプロジェクトを立ち上げる
  • 今月、週に1人以上の従業員に対し、対面または文書で賞賛と肯定的なフィードバックを提供する

【個人的なSMART短期目標の例】

  • 今週、毎日10分以上ストレッチをする
  • 今月末までに2冊の本を読む
  • 年末までに自動車ローンを完済する

短期目標は、長期目標よりも修正、変更がしやすいものである。ただし、だからと言って慎重に考え、計画する価値がないわけではない。したがって、SMARTゴールのフレームワークを使用しながら、意味ある目標を設定するべきである。

繰り返すようだが、短期目標は、あなたの願いや価値観を叶える、あるいは実現するための詳細な行動計画でもある。そして、短期目標の達成に向けて行動することは、自分が今進んでいる道が、本当に進みたい道なのかどうかを考える機会を数多く与えてくれる。小さな目標には大きな効果が期待できるのである。