3. アバンダンスマインドセット(Abundance mindset)
【特徴】
- オープンマインドで楽観主義、共同作業への高い意欲を持つ
- 知識を個人的に貯め込んだり、ゼロサムで思考したりすることを特徴とする「スカーシティマインドセット(Scarcity Mindset)」を認めない
【なぜ、大切なのか】
豊かな心を持つこと──すなわち、アバンダンスマインドセットを持つことで、新しいチャンスを追い求め、それを楽しむ自信が生まれる。このマインドセットは、DXをリードする人にとってはそれほど重要ではないかもしれないが、DXによって社内での役割が変わる人にとっては間違いなく必要なマインドセットである。
DXによって自身の雇用の安全性や仕事上の立場が脅かされると考えれば、人は誰でもDXに抵抗する。ただし、そうした人たちに対して、なぜDXを行う必要があるのか、その結果として何が得られるかを理解してもらえれば、抵抗勢力もDXのアイデアに心を開き、推進に協力するようになる可能性がある。
この点について、組織心理学者のキム・パーキンズ氏は次のように語っている。
変革を主導するリーダーは、市場原理の観点から、従業員にその必要性を説明し、さまざまな可能性が広がることを理解してもらう必要があります。また、そうすることで従業員は変革に向けた取り組みに協力してくれるはずです。
【アバンダンスマインドセットを育む方法】
- DXに対する社内の懸念に耳を傾けて、それを受け入れる。そのうえで、DXはスキルアップの機会であり、顧客にとっての自社の価値を高める大きな違いを生むものであると位置づける。
- DXによって失われるものをしっかりと認識する。例えば、レガシーシステムを構築し、運用管理してきたチームに感謝の意を表し、そのうえで新しい扉を開けるための準備を行う。
- DXに抵抗する人たちには、それぞれの強みを挙げてもらい、その強みがDXの取り組みや、DXによる最初の変革が完了したのちにどう活かせるかを考えてもらうようにする。そうすることで、抵抗してきた人もDXの“運転席”に座っているような気分になれる。
- 心と身体のつながりを大切にし、深く均一な呼吸の練習をする。また、自分の中に閉じこもるのではなく、座ったり立ったりして伸びやかな姿勢をとる習慣も身につける。
4. オーナーシップマインドセット(Ownership mindset)
【特徴】
- 急激な変化ではなく反復と進化を重んじる
- 仕事に関する細かな決定を進んで人に委ねる
- 仕事は決して「完了」しないことを認識している
【なぜ、大切なのか】
DXは、開始日と終了日が決められているプロジェクトではない。また、消費財や法人向けソフトウェアなどと同じようにDXには完成形は存在しない。ゆえに、私たちがDXと見なしているものは、多くがDXの初期段階に過ぎないと言える。
DXは、より大きく、より優れた成果を生み出すための活動である。一連の変革を済ませた時点で終わりにするのではなく、それらの変革によってどのような成果がもたらされたかを確認しなければならない。その結果として大きな成果が確認できたならば素晴らしいことであり、逆に、成果がないのであれば、新しいアプローチで再挑戦しなければならない。
こうしたDXの取り組みに対するオーナーシップと長期的なアカウンタビリティは、通常のビジネスと同様にDXの成功にも欠かせない要素と言える。
例えば、コミュニケーションプラットフォーマーのTwilio社では、製品の顧客体験(CX)に関するオーナーシップを現場のチームが持ち、顧客に最高の体験を提供するすべての行動に関して権限を与えられている。この点に関連して同社のCEOであるジェフ・ローソン氏は次のように述べている。
当社のチームは3つの要素で定義されています。チームがターゲットとする『顧客』と、その顧客にどのようなサービスを提供するかの『ミッション』、そして、チームが顧客に対して良い仕事をしているかどうかを測る『指標』です。
このように計測可能な目標を設定して、目標を達成するまで反復的に物事に取り組む企業はDXを成功させる可能性が高い。一方で、日付やタスクをベースのマイルストーンを設定して変革の「終わり」を定義する企業は、後戻りする可能性が高いと言える。
【オーナーシップマインドセットを育む方法】
- DXで実現したい具体的な成果を定義し、社内で共有する。これによって、「そもそも何を目的にDXを行うのか」「それは正しい方向に進んでいるか」を誰もがつぶさにとらえられるようになる。
- DXに関する各側面のオーナーシップを、ビジネスの最前線で活動している各チームに委ねる。それらのチームにはDXの各側面に関する意思決定権と他チームとの調整を行う権限を与える。
- チームが目標を達成したときには、その喜びを他のチームと分かち合う。