アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、プロジェクトオーナーとして成功を収めるための心得を紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 「プロジェクトオーナー」とはプロジェクトの所有権(オーナーシップ)を持つ人を指し、プロジェクトの成功に対して高いレベルの責任を背負っている。
  • プロジェクトオーナーはよく「プロジェクトマネージャー」や「プロジェクトスポンサー」と混同されるが、それぞれの役割には違いがある。ゆえに、これらの役割を兼務するのは大仕事である。
  • 本稿では、プロジェクトオーナーとして成功をつかむために必要な能力と守るべき原則を示す。

「プロジェクトオーナー」とは誰のこと?

皆さんもよくご存知のように、会社のプロジェクトには2つのタイプがある。1つは全てが順調にいくプロジェクトであり、もう一つは全てがうまくいかず、崩壊してしまうプロジェクトである。

プロジェクトによって、このような違いが出てしまう要因はいくつかある。なかでも大きな要因と言えるのが、「プロジェクトオーナー」の能力の違いだ。要するに、プロジェクトオーナーが有能か否かによって、プロジェクトの成否が大きく左右されるのである。

プロジェクトオーナーはよく「プロジェクトマネージャー」や「プロジェクトスポンサー」と混同されるが、それぞれの役割には違いがある。

プロジェクトオーナーとは、プロジェクトの所有権(オーナーシップ)を持つ人を指し、その役割は所有するプロジェクトを成功に導くことにある。また、それによってプロジェクトオーナーは、周囲からの信用・信頼・評価という“クレジット”を手にできる。ただし、所有するプロジェクトが失敗した場合には、プロジェクトオーナーは、失敗に対する説明責任を果たさなければならない。つまり、プロジェクトオーナーは、プロジェクトの成功に対して高いレベルの責任を背負っていると言える。

そこで今回は、プロジェクトオーナーとして成功するための心得を紹介したい。

プロジェクトオーナー vs. プロジェクトマネージャー vs. プロジェクトスポンサー

繰り返すようだが、プロジェクトオーナーの役割は、プロジェクトマネージャーやプロジェクトスポンサーとは異なる。このうちプロジェクトオーナーの役割については上述したとおりであり、プロジェクトの成功に対してプロジェクトマネージャーやプロジェクトスポンサーよりも高いレベルの責任を背負っている。

また、プロジェクトオーナーは、ビジョンを打ち出す“ビジョナリー”でなければならず、問題を特定して解決することに情熱を注げる人でなければならない。加えて、自身がオーナーシップを握るプロジェクトが自社の大目標と一致することを確認したうえで、プロジェクトスポンサーから資金を調達し、プロジェクトを他の利害関係者(ステークホルダー)とともに補佐しなければならない。さらに、編成されたプロジェクトチームのモチベーションを高いレベルで維持するのも、プロジェクトオーナーの役割だ。この役割を遂行する際、有能なプロジェクトオーナーは、チームのメンバー各人がプロジェクトの価値に対する理解を深めて共感し、能動的にプロジェクトに貢献するように仕向けることができる。

これに対して「マネージャー」とは、現場における日々のオペレーションがスムーズに回るようにする人のことを指し、上層部の意向を現場に伝える連絡係と“車輪の潤滑油”の両方の役割を担っている。

一方、プロジェクトマネージャーとは、現場における日々のオペレーションがスムーズに回るようにする人のことを指し、上層部の意向を現場に伝える連絡係と“車輪の潤滑油”の両方の役割を担っている。プロジェクトマネージャーの具体的な役割の1つは、プロジェクトオーナーのビジョンを受け入れ、ビジョンの実現に向けた作業(タスク)を洗い出し、マイルストーンを設定することだ。そのうえで、各マイルストーンに到達するために必要なタスク計画を策定して、計画を遂行するのに適した人材を社内から集めてチームを組織する。また、チームのキャパシティプランニングや、タスクの依存関係の調整・管理、週ごとのタスク計画の立案、さらには、プロジェクトの進捗状況の管理・報告は、全てプロジェクトマネージャーが担うことになる。

プロジェクトスポンサーとは、モノゴトを遂行するための資金を供出し、バックアップする人のことを指す。企業のプロジェクトにおいては、一般的に経営幹部やディレクターがプロジェクトスポンサーの役割を担う。プロジェクトスポンサーは、プロジェクトの予算を決定し、プロジェクトの遂行に周辺チームの支援が必要な場合は、それを周辺チームに伝えて支援を仰ぐ役割も担う。

プロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャーの兼務は大仕事

組織が大規模で、上層部の役割分担が明確に決められている企業では、プロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャー、プロジェクトスポンサーの役割を、それぞれ異なる人が担うケースが多い。それに対して、組織の規模がそれほど大きくない企業では、プロジェクトスポンサーとプロジェクトオーナーが同一の人であったり、一人がプロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャーの役割を兼務したりすることがよくある。

実際、私が所属するアトラシアンのマーケティング部門では、大抵の場合、プロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャーの役割を一人でこなさなければならない。これはなかなか骨の折れる作業で、もしあなたがプロジェクトオーナーとマネージャーを兼務することになったら、自身の労働時間の3分の2をプロジェクトに費やせるよう、日々の定常業務の量を調整することをお勧めしたい。私の経験上、そうしないと本当に大変なことになる。

プロジェクトオーナーの日々の仕事とは?

プロジェクトオーナーは、プロジェクトマネージャーに比べて、“現場仕事”をそれほど多くこなすわけではない。ただし“忙しさ”という観点から言えば、プロジェクトマネージャーよりも多忙と言えるかもしれない。

まず、プロジェクトオーナーは、プロジェクトの最高責任者として、その価値を高めるための活動を毎日のように展開しなければならない。例えば、自身のプロジェクトが、会社の目標達成にどのように貢献しているか(あるいは、貢献しうるかを)他のステークホルダーと話し合うのはもちろんのこと、プロジェクトのターゲット顧客からフィードバックを集めたり、プロジェクトチームがマイルストーンに到達するたびに祝福したり、部門内でプロジェクトの価値や進捗についての説明・報告を繰り返し行ったりする必要がある。

また、プロジェクトに問題が発生するたびに高次の意思決定を下す責任を背負っている。例えば、プロジェクトの進捗が計画より遅れているのであれば、プロジェクトのスコープ(対象範囲)を縮小するか、タイムラインを延長するか、あるいは、チームのキャパシティアップに向けてメンバーを増員するか(ないしは、メンバーを交代するか)を決定しなければならない。

ただし、計画の細かな実装方法については、全てをプロジェクトチームに委ねるのが得策である。例えば、Webマーケティングの計画であれば、製品の販促用に特別なページを自社のWebサイトに設置するか、またはブログ記事が必要かどうかなどは、プロジェクトチームの判断に任せるのが適切で、そのような意思決定にまでプロジェクトオーナーが関与する必要はないと言い切れる。

もう一つ、プロジェクトオーナーの重要な役割と言えるのが、プロジェクトチームが必要とするリソースの調達である。例えば、プロジェクトチームがWeb開発者による1週間の作業を必要とするならば、それを満たす人的リソースを何らかの手段を講じて調達しなければならない。また同様に、プロジェクトマネージャーから、タスクの依存関係の問題を解決したり、タスク遂行上のボトルネックを解消したりするための支援を求められる場合もある。プロジェクトオーナーは、そうした要請にも適切に対応する必要がある。