アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、リモートワーク(在宅勤務)体制を早急に強化するうえで必要な5つTIPSを説く。

在宅勤務へのシフトをいきなり迫られたとき……

不測の事態が発生し、チームが突然リモートワーク(在宅勤務)体制へのシフトを迫られた場合、チームは、間違いなく、チームビルティングの発展段階(*1)で言うところの「Storming(混乱・激動)」の状態に陥るはずだ。混乱とフラストレーション、すべての仕事がこれまでの2倍面倒になったような感覚──。望んでもいない在宅勤務を突然強要されれば、誰もが戸惑いとストレスを感じる。

*1:ここで言う「発展段階」とは、ブルース・タックマン氏が提唱したチームビルディングの発展段階を指す。その段階は、「FORMING (形成・結成)」「STORMING (混乱・激動)」「NORMING (統一・規範形成)」「PERFORMING (機能・成就)」「ADJOURNING (解散・散会)」の5つに分かれる。

では、そうしたチームを、「Performing(機能・成就)」の状態へと押し上げ、いつもどおりのパフォーマンスを発揮させるにはどうすればよいのか。ここでは、そのための5つのTIPSを紹介したい。

TIP 1: 在宅勤務の鉄則に従う

在宅勤務というと、大抵の人は、足を投げ出して、パジャマ姿で仕事をしている自分を想像する。在宅勤務歴3年の私から言わせてもらえば、足を投げ出すのはいいとして(私もそうするのが好きなので)、パジャマ姿で仕事をするのは絶対に避けるべきである。というよりも、在宅勤務でも、オフィスに向かうのと同じ朝のルーティンをこなし、オフィスで仕事をするときと同様の服装で仕事に向かうべきである。理由は、そうしないと、自分の意識が、オフからオンへとうまく切り替えられないからだ。

また、仕事をする場所は、在宅勤務の場合でも、固定的であるのが理想だ。とはいえ、突然、在宅勤務を命じられた場合、自分の“仕事場”を家の中で確保するのが困難なことがある。

そのような場合には、可能な限り、誰からも邪魔をされにくいスポットを探し当てるしか方法はない。そうすると、「自分のベッド」も“仕事場”の候補になってしまうかもしれないが、それはお勧めしない。一般的には、睡眠をする場所と仕事をする場所とを一緒にすると、睡眠に悪影響を及ぼすと考えられている。というのも、人の脳が、仕事の通知や生産性などと、ベッドを結びつけてしまい、ストレスになってしまうからである。

それでも、自宅の中で快適に、かつ安心して仕事ができる唯一の場所が自分のベッドであるならば、「ラップデスク」の導入を検討されたい。その導入によって、仕事の時間と睡眠の時間とを明確に分離することが可能になる。

もう一つ、在宅勤務における“仕事の構成”や“働く時間の使い方”を、オフィスで働く場合と可能な限り同じにすることも重要だ。仮に、オフィスでの午前中を、“ディープワーク(=集中を要する仕事)”に当て、午後をチームメイトとのミーティングやメールへの対応に当てているのでれば、自宅でも同じ構成で働くようにする。また、オフィスで働く場合と同じように、自宅でも仕事の合間に休憩時間を小まめに挟むことを忘れてはならない。

在宅勤務では、自分の仕事を遮られることがほとんどなく、その気になれば8時間ノンストップで働き続けることができる。ただし、当然のことながら、そのような働き方をするとすぐに“燃え尽きる”。したがって、自分なりの仕事のペースをつかむことが必要とされる。例えば、仕事の合間にストレッチ体操を行ったり、コーヒーを入れて飲んだり、ウクレレを奏でながら大声で歌ったり、といった具合である。

脳のリフレッシュに要する時間は5分。それを目安にインターバルをうまく挟みながら、仕事を続けることが大切である。

TIP 2: コミュニケーションを巡るチームのカルチャーをリセットする

オフィスでは、大抵の場合、チームメイト同士が暗黙の社会契約によって結ばれている。例えば、チームメイトがヘッドフォンをしながら一心不乱に働いているときは、「オフィスが火事になったとき以外は、その人に話しかけてはならない」といったルールが自然に発動し、「ダーツ遊びを行うのは午後4時30分まで控える」といったルールも同然のごとく全員が守る。そのため、互いの行動規範について確認を取り合う必要はほとんどない。

ただし、チームのメンバー全員が在宅勤務で散り散りになる場合には、チームで集まる時間を設けて、在宅勤務体制下で、チームとしての行動規範をどのように設定するかを話し合い、確認し合う必要がある。

まずは、“リモートキックオフ”として30分程度のミーティングをセットする。この場では、メッセージに対するレスポンスのタイミングといったコミュニケーションに関する取り決めや勤務の時間帯などに関する合意を形成する。その際には、例えば、『チームメイトに自分の仕事を遮って欲しくないときには、チャットの通知をオフにする』『チャットでの通信中にはステータスを“会議中”に設定し、他のチームメイトに自分の状態を知らせる』といった細かなルールも決めておく。また、この会議は継続的に開催して、取り決めた内容を、必要に応じて適宜調整していくことが必要とされる。

TIP 3: スダンドアップミーティングをオンラインで始めてみる

チームメイトと直接顔を合わせて話をしていないと、誰が、今、何をしているかが、どうしてもつかみにくくなる。そこでお勧めしたいのが、ビデオ会議を使った10分間の「スタンドアップミーティング」である。

スタンドアップミーティングとは、アジャイル開発の一環で行われるもので、このミーティングを通じて、「仕事の進捗」「仕事の計画」「いま直面している課題」「誰かの支援が必要な課題」などを、チームメイト同士で確認し合う。アジャイル開発では、スタンドアップミーティングを毎朝一番に行うのが作法だ。確かに、これは、毎週数多くの細かなタスクを繰り返し行うようなチームには適している。ただし、チームの仕事が、より長期スパンのプロジェクトであるならば、毎週1~2回程度のスタンドアップミーティングで十分な場合が多い。さらに、チームのチャットルームを使うことで、スタンドアップミーティングを非同期で行うことも可能だ。

TIP 4: 脳の機能を促進する昼食を自宅でとる

オフィスにカフェテリアがあるという恵まれた環境で働く人は、大抵の場合、在宅勤務へのシフトによって、昼食を(場合によっては朝食も)どうするかで悩まされる。

近所のカフェやレストランに出向き、お昼にハンバーガーを食べるという手はある。ただし、最近の米国ではハンバーガーでも以外と高く、一つで8ドルほどすることもある。しかも高カロリー。それを昼食として毎日食べ続ければ、お財布は確実に軽くなり、体重は間違いなく重くなる。そう、2つの苦しみを同時に味わうことになるわけだ。ゆえに、在宅勤務のときは、昼食も、もちろん朝食も自宅でとるのが一番という結論に至るはずである。

朝食と昼食を自宅でとるという決断をしたならば、週末に近所のスーパーに出向き、1週間分の食料・食材を買い込むことをお勧めする。理由は、そうすることで、『ドーナツが食べたい!』という、日々の衝動を制御しやすくなるからだ。大抵の場合、在宅勤務はオフィスワークよりも日々の運動量が少なくなる。したがって、糖分の不必要な摂取にはくれぐれも注意を払うべきなのである。

いずれにせよ、在宅勤務の場合、通勤時間がなくなるために、朝食用にスクランブルエッグを調理するぐらいの時間的な余裕は生まれる。そして昼食どきには、脳機能を促進し、昼寝をしたくならないような料理を摂るように心がける。ハーバード大学医学部の研究者によれば、「サーモン」や「スケトウダラ」のような脂肪の多い魚や、ブロッコリー・ほうれん草といった濃い緑の葉野菜は、脳機能を活性化させ、心臓の健康にもよいという。そうした食材と、前夜の残りのチキンやライスを混ぜ合わせれば、『リモートワーク用パワーアップランチ』の完成となる。ぜひ、お試しいただきたい。

TIP 5: チームメイトとのつながりを維持する

在宅勤務で、チームメイトたちから離れて仕事をしていると、どうしても寂しくなり、孤独を感じてしまう。そのような孤独感に打ち勝つ方法の一つは、ビデオ会議ツールを使って即席ミーティングをチームメイトと行うことである。チームメイトの声を聴き、姿を見ていると、孤独感はすぐに薄らいでいく。しかも、音声を使ったリアルタイムの対話は、メールやテキストチャットよりも、文脈の共有に間違いがなく、意思疎通の確実性も高い。また、定常的なビデオ会議の場に、緊張感を和らげる“アイスブレイカー”を挟んだり、リモートワークに適したチームビルディングの活動を取り込んだりするのも、チームメイトとのつながり維持するうえでは有効な方法と言える。

もう一つ、離れた場所で働くチームメイトとの休息の時間や娯楽の時間を作るのも、つながりを保つうえで役に立つ。

例えば、アトラシアンの「Trello」の開発チームは、ほぼ全員がリモートワークだが、かねてから、ビデオ会議を使い、チームでの「コーヒーブレイク」や「一緒にランチ」する時間を設けている。また、毎週金曜日の午後には「バーチャル ハッピーアワー」もオンライン上で展開している。さらに、アトラシアンでは、Slack上に「#social-remote channel」を開設していて、このチャットチャンネルを通じて、社員なら誰でもプライベートな写真や乱雑な自分のデスクの写真、GIFアニメーションなどを共有することができる。これにより、リモートで働く全員が、自分たちは一人ではないと感じられるのである。