働き方改革の潮流の中、働き方の多様性を活かしながら、組織のチーム力を高め、イノベーションに結びつけようとする取り組みがさまざまな企業で始まっている。ただし、そのすべてが成果に結びついているわけではない。では、どうすればイノベーティブな組織/チームが作れるのか──。このテーマの下、プロノイア・グループ株式会社・Unipos株式会社共催のイベントで3人の識者が語り合った。プロノイア・グループは、「NEW ELITE」の著者としても知られるピョートル・フェリクス・グジバチ氏が代表取締役を務める未来創造企業だ。

チーム作りの要点を語り合う

働き方改革という命題の下、働き方の多様性を確保して、組織のパフォーマンスやイノベーション力の向上に結びつけようとする動きが、企業の間で活発化している。とはいえ、そのすべての取り組みが成果に結びついているわけではない。では、パフォーマンスの高い、イノベーティブな組織を作るには、どうするのが適切なのか──。

このテーマを話し合うイベント「多様な働き方をつなぐイノベーティブなチームのつくり方 ~HRテックを活用した組織文化の浸透~」が、プロノイア・グループ株式会社とUnipos株式会社の共催により、東京都内で催された。

イベントには、プロノイア・グループ代表取締役のピョートル・フェリクス・グジバチ氏と、デジタルドリブンな組織づくりを推進するGoogle Cloud Japanの小林直史氏、インターネット広告事業とHRテック事業を提供するFringe81代表取締役CEOの田中弦氏の3氏が顔をそろえ、これまでの経験を踏まえた活発な意見を交わした。

「重要なのはダイバーシティに感謝すること」(ピョートル氏)

イベントの冒頭部分、プロノイア・グループのピョートル氏が登壇した。

同氏は2001年から日本に在住し、モルガン・スタンレーやGoogleで働いてきた。Googleではアジアパシフィック地域の人材開発、およびグローバルの教育戦略など人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍してきた経験を持ち、現在はプロノイア・グループの代表として組織開発、マネジメント育成、ダイバーシティ推進などのコンサルティング、組織のエンゲージメントを可視化するHRテックの開発に取り組んでいる。

ピョートル氏は、価値観や考え方の違いに「感謝」することが、イノベーティブなチーム作りには欠かせないという。

「ダイバーシティには個人、組織、社会という3つのレベルがあります。個人について言えば、年齢、性別、国籍が同じでも、各人の思考は異なります。また組織についても、それぞれの文化や社風は、企業独自の世界観や行動様式によって異なってきます。当然のことながら社会にもダイバーシティが存在します。つまり、ダイバーシティはすでに存在するもので、それがあること自体が、組織のイノベーション力につながるわけではありません」と、同氏は語ると、次のように続けた。

「大切なのは、ダイバーシティを受け入れてそれに感謝すること。周囲の人たちの価値観・考え方を承認して感謝すると、人間関係は良くなります。これにより心理的な安全性が高まり、感情的な対立が減って建設的な意見の交換が増え、新しい価値がどんどん生まれるようになっていきます」

「組織力を支えるのはツールではなくカルチャー」(小林氏)

ピョートル氏に続いてイベントの演壇に立ったのは、Google Cloud Japanの小林氏だ。同氏はGoogleでChromeデバイスやG Suiteのセールスエンジニアを経験した後、Google Cloudの西日本エリアを担当するカスタマーエンジニアリードとして技術部門を統括。G SuiteやGoogle Cloud Platformの提案活動に従事しながら、Googleカルチャーによる企業文化の変革、データ分析に基づいた働き方改革を支援している。

「G Suiteは、Google社員が自社のグローバルコミュニケーションを実現するためにつくったツールです。しかし、Googleではツールそのものよりも、ツールを支える文化 ―― Googleカルチャーが重要だと考えています」(小林氏)。

小林氏によると、Googleカルチャーは「ミッション」「透明性」「声」の3つで構成されているという。Googleでは、ミッションやビジョンを共有して経営の透明性を高めるために、週に1度、「TGIF(Thanks Google It's Friday)」という全社ミーティングを開催してリーダーシップの生の声を伝えているという。

TGIFでは全世界全社員のボトムからの“声”をリアルタイムに集計し、経営トップが回答するという双方向でのコミュニケーションも図られている。さらに、情報の透明性を高めるために社内にある鮮度の良い情報を世界レベルで共有・検索できるようにし、また、よりコミュニケーションの透明性を高めるために会議のあり方を変えて移動時間の無駄をなくし、世界中どこからでも接続できるビデオ会議を採用して活発なコミュニケーションを実践しているのも、Googleのカルチャーだという。

「重要なのは組織内部で適切に情報アクセスできる仕組みを用意し、情報を民主化することです。Google社内で利用しているG Suiteというプラットフォームを皆さまにご提供するだけでなく、さまざまな施策を通じた業務変革へのサポートも行っています。例えば、国内大手製造業の企業では“ワークスタイルイノベーション”の実現に向けてG Suiteを採用。その定着を図るために開催した社内イべントやチェンジマネジメント(変化に対応したプロセスの構築)を活用して改革のお手伝いをしました」(小林氏)。

「社員同士のボーナス制度が組織力アップに効く」(田中氏)

次に、Fringe81代表取締役CEOの田中 弦氏が登壇した。同氏は、ソフトバンクのインターネット部門に在籍して「ブロードキャスト・コム(Yahoo!動画)」の立ち上げに携わったのち、ネットイヤーグループの創業に参画。ネットエイジグループ(現・UNITED)執行役員などを経験し、2005年にFringe81を創業した。そんな同社が開発したのが「ピアボーナス」という仕組みを取り入れたサービスだ。

「ピアボーナスとは、一緒に働く仲間同士が感謝・賞賛のメッセージとともにオープンに贈り合う少額の成果給のことです。私たちはそれを容易に実現する『Unipos』というWebサービスを提供しています」(田中氏)。

この仕組みはもともと田中氏が組織マネージメントに悩み、自社の課題を解決するために5年間にわたって改善を繰り返した社内制度をサービス化したものだという。この社内制度は「発見大賞」といって、一緒に働く仲間の知られざる貢献や頑張りを、段ボール箱に書いて投票するという他薦制度だった。

「Uniposはピアボーナスを通じてすべてのはたらく人にスポットライトを当て、社内に“最高の従業員体験を生む”ものです。従業員同士では互いに高く評価し合っていることでも、経営層やマネージャーに届いていない場合があります。そこにピアボーナスを介在させてオープンにすれば、非常に多くの情報を取れることが分かりました」(田中氏)。

Uniposは現在、200社以上の企業に採用され、2万人以上の利用者がいるという。

どう乗り切る!?世代間ギャップ

登壇者3人が、自身の考え方や自社の取り組みを紹介した後、「チーム作り」をテーマにトークセッションが行われた。

セッションの最初に投じられた質問は、「世代間ギャップが広がる中、どのように世代を超えたチームを作るか」である。

田中氏は、共通価値のある「おカネ」を媒介にヒエラルキーを取り除くと、世代を超えたチームが作れるのではないかと話す。
「日本企業の中には、世代間ギャップが確かにあります。なかでも、バブル世代のベテランと、バブル崩壊後の日本しか経験したことのない若い世代とのギャップは激しく、これを埋めるのは至難です。そこで、無理にギャップを埋めようとせず、それを跳び越える方法を考えます。その一つの方法が、どの世代にも共通した価値である“おカネ”を媒介にすることだと考えています。“おカネ”と感謝のメッセージという誰にとっても嬉しいものを送り合う、Uniposというサービスを開発してそのことに気が付きました。」(田中氏)。

さらに、ピョートル氏は、世代間ギャップのないチームづくりには、強いリーダーシップとペアワークが必要であると説く。
「世代を超えたフラットなチームを形成するには、可能なかぎり、早い段階で優秀な人にリーダーシップを渡すことです。もう一つ、効果が高い方法が、常に二人一組で仕事にあたるペアワークで、当社でもこれを取り入れています。ペアワークでは、二人が建設的な対立による議論を重ねながら仕事を進めるので、個人の独断やサボりがなくなり、プロジェクトのクオリティが高まるという効果が得られます」(ピョートル氏)。

企業はタレント事務所であるべき

トークセッションでは次に、「雇用形態が多様化する中、どうチームを作るか」チームでイノベーションを起こすために、どのような取り組みができるだろうか」という問いが投じられた。

このうち前者の問いかけに対して、田中氏は、現在の日本社会が抱える課題を挙げながらこう答えた。
「今日、多くの企業で働き方改革が進められていますが、改革が思うように進展しないという声もよく聞こえてきます。理由は、日本の働き方改革が人事制度とセットになっていて、改革対象が正規雇用の正社員に限られているためです。そういった敷居を設けず、すべての従業員を対象に制度を設計すれば、働き方改革が大きく前進するように思えます」

アンカーを引き受けたピョートル氏は、イノベーティブなチーム作りを目指す企業に向けて以下のようなアドバイスを贈り、話を締めくくる。
「イノベーティブなチーム作りに向けて、社員の能力を発揮させたければ、企業はタレント事務所であるべきです。要するに、個々の社員のタレントを発揮させ、さらに社員の成長を促すことのできる会社になる必要があるということです。そうすることで、多様な働き方、多様な人材を活かしたチーム作りが可能になり、そのチームがイノベーションを自ずと引き起こすようになるのです」