アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

マネージャーとチームリーダー

近年、現場のチームリーダーをほめたたえる一方で、中間管理職者(以下、単に「マネージャー」と呼ぶ)の不要論を唱える記事が目につく。また、管理されるのも、するのも嫌い、チームリーダーであり続けることを好む傾向も強まっているようだ。

確かに、マネージャーというポジションが時代遅れの職位になる可能性はある。しかし今のところ、チームリーダーも、マネージャーも、ともに存在価値のある職務であることは間違いない。

“コマンドインテント”のコンセプト

企業人が自分のリーダーシップの理想を思い描くとき、軍隊組織を参考にしようとはあまり考えないはずである。ところが意外なことに、軍隊組織と近年の企業組織のあり方は、非常に似通ってきている。

例えば、兵士たちのリーダーは、最終ゴールが明確に定義され、かつ、戦地の状況に応じた判断を、その場で下す権限を持つ。こうした権限分散、あるいは権限移譲のあり方は、“コマンドインテント”と呼ばれるが、これはビジネスの俊敏性を確保するために、現場で働くチームリーダー、あるいはチームのメンバーに意思決定の権限を与えるのとコンセプトは同じである(というよりも、コマンドインテントのコンセプトをビジネスシーンに応用したとも言える)。

また、軍隊がそうであるように、成長企業もまた、複数のチームを管理するマネージャーを組織の中に置いている。このマネージャーには“中位レベルの意思決定”をすみやかに下しつつ、配下のチームが経営ビジョンに反した行動をとらないよう管理する役割を担っている。

マネージャーとチームリーダーの違いとは

ベストセラー本『7 Habits of Highly Effective People(邦訳:完訳 7つの習慣 人格主義の回復/キングベアー出版)』の著者、スティーブン・R・コヴィ氏は、チームリーダーの役割をこんなふうに表現している。

まず、あなたがジャングルを探検するチームのメンバーであると想像してほしい。この場合、チームリーダーは、木々に登り、次に何が来るかを監視する役割を担う。そして、何かが来たときに自分のチームに即座に報告するのである。

このように、チームのリーダーは自身のグループに変化に備えさせる役割を担うが、チームの日々のオペレーションには直接的にタッチしない。言い換えれば、日々の業務管理は脇に置き、代りに将来を見通し、“ビッグピクチャー”を描くことに力を注ぐのである。もちろん、木々の上でビッグピクチャーを描いていれば、現場仕事をしているゆとりはない。ゆえに、日々の判断はメンバー各人に委ねる必要があるというわけだ。これも、軍隊におけるコマンドインテントのコンセプトと同じである。

他方、マネージャーは、チームを後方から支援する。ツールに磨きをかけて、配下の各チームに対する補給が正しく行われているかどうかを確認する。そして、チームが次の“川”をしっかりと渡ることができるよう、正確な情報をリーダーに伝え続けるのである。

枕を高くして眠るために

タスクを部下に一任できるかどうかは、有能なマネージャーになれるかどうかのキーポイントとされているが、それはチームリーダーについても同様に当てはまる。つまり、もし、あなたがチームリーダーになりたいのであれば、意思決定にかかわる自身の権限を部下に委譲する決断を下さなければならない。

権限移譲は勇気のいる決断で、メンバー各人の判断力を高めるために、スキルアップ/能力アップの支援も提供しなければならない。ただし、コマンドインテントの考え方を採用すれば、メンバーたちに安心して意思決定を委ねられるようになり、結果として、枕を高くして眠れるようになるかもしれない。さらに、メンバーへの権限移譲によって、自分のチームのメンバーが想像以上に賢明な判断が下せることに気づくはずである。

のちには、あなたも、木々の上から地上に下りて、ツールに磨きをかけたり、単調な仕事を繰り返したりしなければならないときがくる。そのときには、自分に課せられた職務を遂行すべきだ。それによって、チームを変化に備えさせることはできなくなるかもしれない。

ただし、木々から地上に下りたあなたの意志と、木々にいたときについた“汚れ”は、信頼を築くことにつながるのである。