アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』より。アトラシアンでModern Work Coachを務めるマーク・クルス(Mark Cruth)がチームのパフォーマンスを上げる方法について説く。

本稿の要約10秒で

  • アトラシアンの調査により、自分のチームの状態が健全であると考えるビジネスパーソンは2022年で全体の13%しかいないことが判明した
  • 一方で平凡なチームをハイパフォーマンスなチームへと変える魔法のような方法がいくつか存在する
  • チームのパフォーマンスを高めるうえで有効な実績のあるエクササイズを紹介する

チームパフォーマンスを高める魔法のような方策

私は10年以上の長きにわたり、多様な業界の、大小さまざまな規模のチームと仕事をし、かつ研究を重ねてきた。その経験を通じて、平凡なチームをハイパフォーマンスなチームへと変える魔法のような方法がいくつかあることに気がついた。

おそらく大多数のビジネスパーソンが、ハイパフォーマンスチームの一員でありたいと願っているはずである。ところが、現実は厳しく、チームの状況に関するアトラシアンの調査レポート「State of Teams」(参考文書 (英語))を見ると、ハイパフォーマンスチームの要件を満たせている健全なチームは2022年において全体の13%に過ぎず、前年(2021)の17%から減少してもいる。

ということで、チームをハイパフォーマンスな組織に変える方法について見ていくことにしたい。

方法1:パーパスの明確化で自律性を育む

この原理はシンプルである。チームは「自分たちが、なぜ存在するのか」「何を達成しようとしているか」のパーパスを理解することで、問題を解決し、目前の目標を達成するために自分たちを自らコントロールするようになる。

方法2:分権型の意思決定プロセスによってメンバーをエンパワーメントする

チームにおいて、自分たちの誰が、どのような決定を下すのかを明確にすることで、チームは単に権限を与えられたと感じるだけでなく、権限とそれに伴う説明責任を引き受けるようになる。

例えば、米国海軍特殊部隊(シールズ)は、ミッションがきわめて明確で、かつ指揮権が各チームに分散している。その効果に関して、元シールズのジョッコ・ウィリンク(Jocko Willink)氏とレイフ・バビン(Leif Babin)氏は共著書『Extreme Ownership(エクストリーム・オーナーシップ)」において、自身のミッションに対する確固たる信念の確立と指揮権の分散という2つの原理が、戦場における重要なリーダーシップの醸成につながると説いている。

原理3:相互信頼と心理的安全性の確保でチームの結束を強める

チームのメンバーがお互いを信頼し、安心して自身の問題や懸念を明らかにできれば、チーム内での個人と個人の絆(きずな)は強まっていく。つまり、チームのメンバー各人が、同僚を企業人としてではなく、人として見ることができるようになるわけだ。

私がチームの歴史上、非常に気に入っているチームの一つに「フォード トーラス(Ford Taurus)」を開発したチームがある。当時、彼らの会社(フォード・モーター)は崩壊の危機に瀕しており、リーダーたちは、トーラスをこれまでとは異なるアプローチで開発しなければならないと判断した。結果として、開発チームのチームワークをより強固する必要があると考え、チームにおける心理的安全性の確保に力を注いだのである。

原理4:物事の不確実性を受け入れる

何らかの問題に突き当たったとき、初めからベストな解決策を講じようと「分析麻痺」の状態に陥り、目的を達成できずに終わるチームがある。このような事態を回避するうえでは「自分たちには問題解決に必要なすべてのことを知りえない」という現実を受け入れることが重要である。そうすることで、利用可能なデータにもとづきながら、より速やかに意思決定を下し、行動できるようになる。もちろん、それによって問題が解決されないことがある(むしろ、解決されない可能性が高い)。ただし、その失敗から学び、学びにもとづいて施策を改善していくことが、チームの成長につながるのである。

ここで、私がこれまで所属してきたチームの中で、最も高いパフォーマンスを発揮したチームの話をしておきたい。

私はキャリアの初期、ボーイングで航空機「ボーイング787」のチームに所属し、そのデジタルメンテナンスマニュアルの設計に携わっていた。その仕事自体は計画どおりに完了できたが、ボーイング787が就航からわずか2年で電気系統のトラブルを引き起こした。その問題とは、電気系統の不具合で一部機体のリチウム電池が発火し、ボーイング787全機の就航が停止に追い込まれたというものだ。ボーイングのエンジニアはすぐに修正プログラムを導入したが、米国連邦航空局(FAA)はデジタルメンテナンスマニュアルが更新されるまで、同機の運航を再開させなかった。一方で、デジタルメンテナンスマニュアルの更新には、複雑なデジタル回路図の再描画が必要とされ、通常3〜6カ月の期間がかかるとされている。

ただし、会社としては一刻も早くボーイング787の就航を再開させなければ、多大な経済的損失を被ることになる。そこで私たちのチームは、マニュアル更新の期間を短縮すべく、仕事のやり方を変え、ボーイング社内のすべてのチームに協力を要請した。加えて、私たちは、自分たちの使命やパーパス、自律性に関して共通の理解を持っていた。その結果、マニュアル更新の仕事がハイスピードで進捗し、1カ月も経たないうちにボーイング787の就航を再開させることができたのである。

より良い働き方に向けたエクササイズ

アトラシアンにおける私のミッションの一つは、社内外のチームに対して、その潜在能力を最大限に引き出すための支援を提供することだ。このミッションを遂行するために、全米各地のチームのもとを訪れ、チーム内コラボレーションにおける問題点を突き止め、彼らの働き方を改善するうえで役に立つ一連のエクササイズのプランをカスタマイズして策定し、遂行を支援している。

それらのエクササイズは、先に触れた「パーパスの明確化」「権限の分散化」「心理的安全性と相互信頼の醸成」「不確実性の許容」などを実現するために設計されている。以下、私が支援を提供しているチームとよく行うエクササイズについて紹介する。

1. チームのヘルスチェック

アトラシアンの「Atlassian Team Playbook」にある「ヘルスモニター」を使ったエクササイズを行う。これによって、健康なチームによく見られる8つの特性にもとづきながら、あなたのチームのパフォーマンス(健康状態)がどういったレベルにあるかを評価することが可能になる。その評価を一通り終えたのちには、これから生かすべきチームの長所や、どこにチームの成長のチャンスがあるかを特定することが可能になる。

2. チームビジョン(チームのありたい姿)の創出

チームのパーパスを明確にするうえでは、Googleによる「ビジョンの設定」のエクササイズを行うのが有効だ。この演習はGoogleが作り上げたもので、チームが自分たちの仕事の「コアバリュー」「パーパス」「ミッション」「ストラテジー」を明確にして理解し、チームのビジョン(ありたい姿)に到達するための方法を決定することを目的としている。この演習を実践することで、チーム内の各人が成すべきことも明確になり、結束が強まる。

3.「デリゲーションポーカー」の実践

デリゲーションポーカー」とは、ヨーガン・アペロ(Jurgen Appelo)氏が各国で展開しているマネジメント運動「Management 3.0」で開発された権限移譲、あるいは権限の分散化に向けたツールである。このツールを使うことでチーム内の「誰が、何を、どの程度担当するか」を明確にすることができる。結果として、統制のとれたチームの自己組織化や自律的な意思決定が促進され、チームに対するメンバーのエンゲージメント(能動的な貢献意欲)を高めることが可能になる。ちなみに、私がチームでデリゲーションポーカーを実行すると、チームにおける意思決定のプロセスが暗黙の了解から明示的なものへと変化することがよくある。

4.「儀式」のリセット

Atlassian Team Playbookにある「日課のリセット」の演習を行うことで、時間を浪費する儀式的日課からチームを解放することが可能になる。この演習は、チームが会議などのコラボレーション、コミュニケーションのプロセスを見直して再評価し、より重要な仕事のためのスペースを確保するのに役立つ。

5. チーム改善セッションの開催

私はよく、チームにおける心理的安全性やメンバー同士の結束力を高める目的で「チーム改善」のセッションを催す。その実践に必要なものは、会議室、ないしはビデオ会議システムと、チームの改善に向けたメンバーの意欲だけである。セッションのファシリテーターはまず、チーム改善に向けた自分のアイデアを出し、そのアイデアに対する意見を参加者に募る。そして参加者には、必ず他者のアイデアを肯定したうえで、自分の意見を述べるようにしてもらう。要するに、他者のアイデアや意見に対して、まず「イエス(Yes)」と述べてから、自分の見解、アイデアを示すことを対話のルールにするというわけだ。こうしたセッションを繰り返し催すことで、チームの創造性、共感性、適応力を高めていくことが可能になる。

以上に示したエクササイズは、どれも相応の効果をさまざまなチームにもたらしてきたものだ。ハイパフォーマンスなチームづくりに向けた試みとして、ぜひ実践されたい。

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