アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。ライターのカット・ブーガード(Kat Boogaard)が、ナレッジワーカーの生産性を阻害する「パーキンソンの法則」について紹介する。

本稿の要約を10秒で

  • 「パーキンソンの法則」とは「仕事の量は、与えられた時間を満たすように拡大していく」という格言を指している。
  • この法則は「人は些細な事柄に貴重な時間を浪費しがちである」ということも示唆している。
  • この法則を打破する有効な一手は、プロジェクトをより大きな目標に関連づけることと、仕事のタイムラインを週単位ではなく日単位で作成することである。

「パーキンソンの法則」とは?

あるITハードウェアのメーカーは「製品の機能をより洗練させたい」との理由から、多くのファンが心待ちにしていた製品の発売を遅らせ、あるソフトウェアベンダーは、顧客に提供を約束していた機能のリリースを何度も延期にし、最終的にはその機能をお蔵入りにしてしまった。さらに、シドニーのオペラハウスの建設は、4年のはずの工期が14年へと引き伸ばされた。

なぜこのようなことが起こるのだろうか。なぜ、組織・チームの生産は低下し、仕事のスケジュールが遅れてしまうのだろうか──。そうした疑問を解き明かすうえでのカギが「パーキンソンの法則」である。

パーキンソンの法則を一口に言えば「Work expands to fill thetime available for its completion(仕事の量は、与えられた時間を満たすように拡大していく)」という古い格言を指している。この格言は、シリル・ノースコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson)氏が1955年に『エコノミスト』誌に寄稿したエッセイの中で初めて使われたものだ。そのエッセイで同氏は、ある人のきわめて非効率な働きぶりを次のように記している。

その人の職場におけるミッションは「ハガキの送付だけ」であり、一日における作業内容は、忙しく働くビジネスパーソンがその気になれば3分程度でほぼすべてを終えてしまうようなものであった。ところが、その人はいつも「ハガキを探すのに1時間」「眼鏡を探すのに30分」「メッセージを書くのに1時間30分」「郵便ポストに行くのに傘を持っていくかどうかを決めるために20分」といったかたちで時間を使い、ハガキの送付に一日を費やすのが通常であったようだ。理由は、この人が「怠け者」だからではない。日々の業務として、ハガキの送付以外の仕事がなかったためである。

このような事象が発生するのは決して古い話ではない。現代においても、例えば、ソフトウェアの開発チームが、実際は数時間程度で終えられるバグ修正に2週間ものときを費やしてしまうことが珍しくない。この問題の原因は、ほとんどの場合、チームの技術的能力の低さにはない。問題は、バグ修正のために与えられた時間が2週間だったことに起因している。

多くの開発チームは、バグ修正のために与えられた期間が2週間であれば、実際に要する時間が数時間であっても、2週間を使ってバグ修正を行おうとする。このとき、チームがどのようにして2週間のときを費やすのかと言えば、それはバグ修正の「範囲(スコープ)」を(無駄に)拡大させて、作業を増やし、複雑化させることである。これにより、本来的には数時間程度で終えられるはずの仕事が(その有効性が高められないまま)2週間を要する作業へと変容していく。そしてこれが、パーキンソンの法則と呼ばれるものなのである。

人はなぜ無駄な仕事で時間を埋めようとするのか

パーキンソンの法則には、上記のように「与えられた時間を埋めるために仕事を無駄に増やし、複雑化させようとする」といった人の特性のほかに「仕事を先延ばしにする」という人の特性も含まれている。

実際、私たちの多くは、仕事のスケジュールに相当の余裕があっても、なぜか締め切りギリギリになるまで着手を先延ばしにし、自らを追い込むようなことをしがちである。

例えば、アトラシアンでプログラムマネージャーを務めるAumarie Benipayoは、前職で所属していたアジャイル開発チーム(スクラムチーム)において、幾度も「仕事の先延ばし」を目の当たりにしてきたと話す。

前職のチームでは4週間スプリントを採用していたのですが、大抵の場合、締め切り直前にならないと、メンバーのスイッチが入らない状態が定常化していました

ちなみに「ヤーキーズ・ドットソンの法則(Yerkes-DodsonLaw)」によれば、私たちが仕事を処理するうえでは最適な覚醒レベルがあり、「締め切りが迫っている」ということが仕事への集中力を高めるトリガーになるようだ。

パーキンソンの「些事の法則」

パーキンソンの法則は、個人の非効率な働き方について語られる際によく使われるが、実際には、非生産性を内在させている組織・チームのほうが、法則に起因した行動パターンがより顕著に現れる。

例えば、パーキンソンの法則には「些事(些細なこと)の法則」と呼ばれるものがある。これは、組織・チーム内の人たちが、しばしば些細な事柄に過度の時間や注意を払うことを表している。

また、私たち人間には「ソーシャルローフィング(SocialLoafing:社会的手抜き)」と呼ばれる特性もあるようだ。これは、チームなどの集団で仕事をするときに、一人で仕事をするときよりも努力をしなくなる傾向が強まることを意味している。こうした人間の行動特性について、臨床心理学者で作家のNick Wignall氏は次のように説明している。

人は、集団の中で他の多くの人が自分と同じ責任を背負っていることがわかると、無意識のうちに主体性を低下させます。結果として、社会的責任感がグループ全体に薄く広く分散してしまうのです

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