ハイブリットワークの支持者は多いが……
周知のとおり、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行というパンデミックによって数多くのオフィスワーカーが在宅勤務を余儀なくされたが、この変化が人に与えた影響はさまざまだ。在宅勤務へのシフトで従来よりも快適な暮らしを手に入れた人もいれば、「仕事場で寝起きする苦痛を1年間味わい続けた」と感じている向きもいる。
また、2020年秋に実施されたある調査によると、米国人女性の4人に1人は在宅勤務を続ける中で離職を考えていたという。そして多くの人が「会社へのエンゲージメント」と「家族(子どもたち)へのエンゲージメント」をともに高いレベルで維持する取り組みに失敗したことを明らかにしながら、そのチャレンジは「最高の従業員にも、最高の親にもなれずに大きなストレスを抱え込む」というリスクがある一方で、そのリスクを背負ってまで挑む価値はないと主張していた。
このようにコロナ禍の長期化により、在宅勤務に対してネガティブな側面も多く指摘され始めた。そのため、コロナ後のニューノーマルな働き方として、在宅勤務一辺倒ではなく、オフィスワークと在宅勤務を柔軟に組み合わせられるハイブリッドワークモデルを望む声が増えているという。例えば、アトラシアンがLinkedInで行った調査によるとオフィスワーカーの62%(*1)が、ハイブリッドワークモデルで働くことを望み、32%(*1)は在宅勤務を、残る7%(*1)はオフィスワークに戻りたいとしたという。 また、Slack社による調査でも同様の傾向が見られ、ハイブリッドワークを望む回答者は全体の62%であったという。
一方、コンサルティングファームのデロイトが企業の上席リーダー層3,500人を対象に調査したところ、上席リーダーの61%が「労働の再構想」に注力していると答えたという。
ここで言う「労働の再構想」とは、「テクノロジーと人との新しいコンビネーションによって、まったく新しい、あるいはこれまでとは異なる労働成果を手にすること」を意味する。コロナ以前の同じ調査では「労働の再構想」に力を注いていると回答したリーダーは全体の29%に過ぎなかった。さらに、コロナ以前は「労働の最適化(=労働の生産性を向上させること)」「労働の再設計(=テクノロジーと人との新しいコンビネーションによって従来と同じ労働成果を得ること)」に注力する向きがともに32%いたが、コロナ後はそれらの比率がそれぞれ10%と27%に減っているという。こうした変化は非常に素晴らしいことではないだろうか。
ハイブリッドワークがうまく機能しない原因と対処法
就業者の多くがハイブリットワークモデルを支持するなか、多くの企業が同モデルの採用へと動き始めている。ただし、その取り組みはまさに未知への航海と言え、どの企業も失敗のリスクを背負っている。そしてリスクが顕在化したときには、長期的な痛手を被るおそれもある。
そうしたリスクを念頭に置きながら、私たちは今回、ハイブリッドワークモデルに関して、起こりうる失敗とその可能性を事前に予測するリスクマネジメント手法「プレモーテム(Premortem)」の演習を行った。以下、この演習を通じて割り出したハイブリッドワークを失敗への導く7つの道筋と失敗回避のアイデアを紹介する。