札幌市に2020年10月、地域をリードする起業家やエンジニアを養成しようと「G’s ACADEMY UNIT_SAPPORO」が開校した。札幌市に本社があるサツドラホールディングス(HD)のグループ会社シーラクンスが、「G’s ACADEMY」(ジーズアカデミー)を運営するデジタルハリウッドとともに立ち上げたものだ。

サツドラHDは1972年にサッポロドラッグストアーとして創業し、北海道内を中心に「サツドラ」ブランドで200店舗以上を展開。2014年に北海道の地域共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を導入したほか、プログラミングを中心とした教育事業なども手掛けている。

ドラッグストアがポイントカードサービスを運営する事例はあるものの、起業家やエンジニアを養成するのは、一見ビジネス的にはつながりのないようにも見える。しかし、同社では一連の事業を「地域コネクティッドビジネス」と定義し、新しいビジネスを展開。旧来のドラッグストアの枠にとどまらない独自の立ち位置を築くことによって、業界で存在感を示している。「北海道が抱える課題を解決する」という地域コネクティッドビジネスの狙いを、サツドラHDの富山浩樹社長に聞いた。

画像: 富山浩樹(とみやま・ひろき)  1976年生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長を経て2015年5月に代表取締役社長に就任。2016年8月にサツドラホールディングス株式会社を設立し、現在代表取締役社長兼CEO。北海道札幌市出身

富山浩樹(とみやま・ひろき)

1976年生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長を経て2015年5月に代表取締役社長に就任。2016年8月にサツドラホールディングス株式会社を設立し、現在代表取締役社長兼CEO。北海道札幌市出身

「地域の新しいOS」を作る

G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROが開設されたのは、札幌市東区に今年9月に完成したサツドラHDの新社屋だ。新社屋の1階はドラッグストア店舗。2階は「EZO HUB SAPPORO」というエリアで、会員制のシェアオフィスや知識のインプットの場として3000冊以上の書籍が並ぶ「BOOK LOUNGE」、共有型のオープンスペース「HUB SPACE」などがあり、G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROの受講生は「HUB SPACE」を無料で利用できる。

10月31日には第1期生20人が入学した。新規事業の立ち上げを目指す起業家、不動産業などの経営者、市役所の職員、大学の医学部生など幅広い人材を集めた。北海道にいながら東京や福岡のジーズアカデミーと同じ授業をリアルタイムに、かつ双方向で受講し、プログラミングを基礎から習得できる。卒業制作のプロトタイプとビジネスプランで、1社最大500万円の投資をサツドラHDから受けるチャンスもある。

サツドラHDは「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」というビジョンを掲げている。G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROの開設はその一環だと富山社長は説明する。サツドラが現状の立ち位置から「規模拡大」にフォーカスして業界のナンバー1を目指していくには高いハードルがある。そういう状況で自分たちの価値をどう出していくかを考えたときに、「地域のインフラ産業をチェーンストアが担う」ことをコンセプトとした戦略を取っていくことを考えたのだ。

「サツドラのビジョンを言い換えると、北海道地域の新しいOSのようなものを作っていくことです。ドラッグストアを大きな核にしながら、新たなビジネスを進めるためには、“場”が必要です。ジーズアカデミーを開設した新社屋は、インキュベーションとして機能させる場として立ち上げました」

画像: G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROが開設

G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROが開設

イノベーションを生み出す場づくりと、IT人材の確保

富山社長によると、この新社屋では2つの課題解決を考えているという。1つはスタートアップによるイノベーションを社会実装すること。5年前から企業コミュニティーを作る活動をしてきたものの、スタートアップと企業がコラボしようとしても、うまくいかないケースも少なくないという。

「ある程度の規模を持つ企業がスタートアップに投資をした場合、最初は良好な関係ができるけれども、途中から『前例がない』と言われたり『本業に還元がない』と言われたりして、なかなか稟議が通らないという話もよく聞きます。

でも、主体的に何かに取り組まなければ何も始まらない。僕らはさまざまな会社と連携を取りながらサツドラの中で生まれたクラウドPOSを会社として独立させたほか、小売店向けのAI(人工知能)カメラシステムをAIソリューションの会社と協業しています。

画像: サツドラHDは小売店向けのAIカメラシステムをAIソリューションの会社と協業している

サツドラHDは小売店向けのAIカメラシステムをAIソリューションの会社と協業している

エジソンの発明のようにゼロから生まれるものは、なかなかないですよね。1社の知見だけでは初めから面白いことを成し遂げるのは難しい。だからいろいろな人が交流できるインキュベーションオフィスを作りました。場を作ってただ貸すだけではなく、多様な人や企業がコラボレーションしていくことがこれからのイノベーションの種だと考えています」

もう1つの課題は北海道のIT人材不足を解消することだ。子会社のシーラクンスは、小中学校のプログラミング教育をはじめ、地域のICT教育を担う目的で18年に立ち上げた。その取り組みを知ったデジタルハリウッドSTUDIO札幌の森田宣広社長から声をかけられたという。

「北海道にIT人材が少ないことは、多くの方が課題と感じています。せっかく同じ地域にいるのにバラバラに人材育成をしても仕方がないので、『一緒にやっていこう』という話になり森田さんと意気投合したのが、ジーズアカデミー開設のきっかけです。新社屋ができるタイミングとも合致して、うまくつながることができました」

画像: G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROの受講生、竹内信二さん「現在サツドラホールディングス入社2年目で、店舗業務にあたっています。プログミングは全くの未経験ですが、サツドラの現場からの課題解決に加えて北海道に貢献したいという想いが強くあり、想いをプロダクトにつなげたいと思います」

G’s ACADEMY UNIT_SAPPOROの受講生、竹内信二さん「現在サツドラホールディングス入社2年目で、店舗業務にあたっています。プログミングは全くの未経験ですが、サツドラの現場からの課題解決に加えて北海道に貢献したいという想いが強くあり、想いをプロダクトにつなげたいと思います」

画像: 吉田陽香さん「旅行会社で給与計算事務をしています。業務の中で、RPAというAIのシステムを使い始めて、プログラミングの未来を感じました。プログラミングで、この世界に『楽しく楽(ラク)できるもの』を創り出したいと思っています」

吉田陽香さん「旅行会社で給与計算事務をしています。業務の中で、RPAというAIのシステムを使い始めて、プログラミングの未来を感じました。プログラミングで、この世界に『楽しく楽(ラク)できるもの』を創り出したいと思っています」

画像: 東山博計さん「高校卒業後、札幌市の市役所に勤務し、現在は南区の地域振興課でスポーツイベント等の企画・実施を行っています。G’s ACADEMYでは、『地域を明るくする』プロダクトをつくりたいと思っています。図書館に入り浸っている高齢者の方々やスーパー銭湯に集まって時間を過ごす地域の方々を、地域社会に参画させるプロダクトをつくります」

東山博計さん「高校卒業後、札幌市の市役所に勤務し、現在は南区の地域振興課でスポーツイベント等の企画・実施を行っています。G’s ACADEMYでは、『地域を明るくする』プロダクトをつくりたいと思っています。図書館に入り浸っている高齢者の方々やスーパー銭湯に集まって時間を過ごす地域の方々を、地域社会に参画させるプロダクトをつくります」

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