アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。メインライターのサラ・ゴフ・デュポン(Sarah Goff-Dupont)が、自分のプロジェクトアイデアを社内にアピールする8つのテクニックを紹介する。

はじめに:そうそう、コレだよ!

「そうだ!これだよ!こんなプロジェクトがやりたかったんだ!」──。

こんなふうに、自分の望むプロジェクトが推進できることになれば、そのプロジェクトはあなたのキャリアを決定づけるような挑戦の機会となり、あなたの周囲の環境をガラリと変えてしまう可能性がある。また、そのプロジェクトは、あなたのチームが輝かしい新しい5年間へと向かう転換点となるかもしれない。

ただし、どんなに素晴らしいプロジェクトであっても、その遂行が社内で承認されなければ着手はできない。例えば、過去に自分の想起したプロジェクトアイデアが承認されず、落ち込んだ経験はないだろうか。あるとすれば、同時期にあなたと同じ体験をした同僚が10人程度はいると考えたほうがいい。というのも、素晴らしい成果を上げたプロジェクトアイデアが一つあるとすれば、その背後で、お蔵入りになった、似たようなアイデアが10件程度はあるのが通常だからである。

ならば、承認されたプロジェクトアイデアと、承認されなかったものとの違いとは何なのだろうか──。その答えは単純で、プロジェクトアイデアを想起した人のセールスセンス、あるいはプレゼンテーション(プレゼン)能力の差である。つまり、自分のプロジェクトアイデアを周囲に売り込む能力が高いかどうかで、それが承認されるかどうかが決定づけられるというわけだ。ということで、以下では、プロジェクトオーナーが自分のアイデアの売り込みを成功させるための8つの戦略を紹介する。

戦略1:自分のアイデアを会社の大目標と結びつける

自分のプロジェクトアイデアについて周りの意見を聞いたり、アイデアのプレゼン資料を準備し始める前に、まずは自分の想起したアイデアが自社(ないしは自部門)の大目標の達成に貢献しうるかどうかを確認することが重要である。

例えば、所属する組織が、南米における市場シェアの拡大を大目標として掲げていたとする。一方で、自分のプロジェクトアイデアが、欧州における顧客の解約率を低減させる施策だったとしよう。この場合、プロジェクト遂行の承認をとりつけるのは至難と考えたほうがよい。

したがって、プロジェクトアイデアを想起する際には、自分の会社の役員たちが全社会議やプレス発表で、どんな話をしているかを改めて確認するのが大切である。仮に、役員から全社員宛に送られていたメールを斜め読みして捨ててきたのであれば、即刻、ゴミ箱フォルダからそれらを拾い集めて、内容を読み返してみていただきたい。それによって、素晴らしいプロジェクトの“種”が発見できるかもしれない。

また、自分のプロジェクトアイデアと、会社の大目標との間にズレがあったからといって、アイデアをすぐに破棄する必要はない。自分のプロジェクトアイデアを別角度から見なおし、会社の大目標に結びつけられないかどうかを念入りに検討する。同様に、自分のアイデアには改変の余地が一切残されていないと思わないほうが良い。アイデアのちょっとした変更や調整によって会社の大目標に合致した取り組みになる場合もあるのである。

戦略2:課題に対する周囲の共感を獲得する

あなたのプロジェクトアイデアが、何らかの課題を解決するためのソリューションであったとする。この場合、アイデアの起点である課題に対する周囲の共感をえることが重要となる。

アトラシアンの「Team Playbook」には、そのためのテクニック(英語)が紹介されているので、参考にされたい。

ちなみに、このテクニックの考え方は、4つの「W」──つまりは、「Who(誰)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「Where(どこ)」を軸に、課題の枠組みをしっかりと定めるというものである。具体的には以下のようなかたちである。

  • Who:誰が、その課題を抱えているのか。その人たちは、本当にその課題に直面して困っているのか。そのことを、あなたは証明できるのか。
  • What:その課題の本質とは何なのか。調査資料や後ろ盾となる証拠を持っているのか。
  • Why:なぜ、その課題を解決することに価値があるのか。その課題を解決することで、顧客、ないしは自分の会社にどのようなインパクト(プラスの効果)がもたらされるのか。
  • Where:その課題の在り処(ありか)はどこなのか。あなたやあなたのチームは、その課題を目の当たりにしたことがあるのか。

加えて、ソリューションのプレゼンを行う際には、ストーリー仕立てで課題が説明できるようにすると良い。具体的には、プレゼンを聞く側(=オーディエンス)が身近に感じる、あるいは関係する架空の人物を設定して、あなたが解決を目指す課題が、その人物にどのような負の影響を与えているかを語るのである。それによって、アイデアとなるソリューションをより魅力的に感じさせることができるのである。

戦略3:説得力があり、かつ簡潔なアイデアの要約を作る

「エレベーターピッチ(Elevator pitch)」という用語をご存知だろうか。これは要するに、会社の経営幹部など、毎日が忙しく、なかなかプレゼンの機会を設けることができない相手とエレベーターで居合わせた想定で、自分のアイデアを非常に短時間で伝えるという意味合いの言葉だ。これを成功させるには、説得力があり、かつ、簡潔にまとめられた「アイデアの要約」が必要とされ、その要約自体をエレベーターピッチと呼ぶこともある。

このエレベーターピッチを作成するためのテンプレートは以下のとおりである。

この[A]は、[B]を望む/[B]が必要な[C]に向けた[D]であり、それによって、[E]を提供できる。

 A=プロジェクトアイデア名、ないしはプロジェクトアイデアの種類
 B=ターゲット顧客/オーディエンスの願望やニーズ
 C=ターゲット顧客/オーディエンス
 D=プロジェクトアイデアのカテゴリー
 E=価値/ベネフィット

ここで表現すべきことは、自分のプロジェクトアイデアが、「誰の、どのようなニーズを、何によって満たし、どのようなベネフィットを生むのか」といった点に集約できる。例えば、上のテンプレートを使った本稿のプロジェクトアイデア(記事企画)の要約は下記のようになる。

この[ガイド(本稿)]は、[自身の想起した重要なプロジェクトアイデアの承認を得たい]と望む[全てのビジネスパーソン]に向けた[情報源]であり、それによって[承認獲得の成功に必要な戦略とテクニック]を提供できる。

こうした一文を作成したのちには、それを「ニュースの見出し」のように短文化すると、それをさまざまな用途に活用できる。

ここで留意したいのは、この“見出し”の作成時に、あなたのプロジェクトアイデアの価値を、著名な製品やサービスとの比較によって表現するのは避けることである。あなたのアイデアは、あくまでもあなたのものだ。したがって、他者のアイデアの上に、自分のアイデアに対する信頼・信用を積み上げるようなことはしてはならない。実際、会社の幹部たちは、「〇〇〇界のNetflixを創る!」といった類のプロジェクト提案には、もううんざりしているはずなのである。

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