アトラシアン本社の情報サイト『WORK LIFE』から新着コラム。アトラシアン「Confluence Cloud」のプロダクトマネージャー、パラティマ・アローラ(Pratima Arora)が、男性社会とされる技術チームでダイバーシティを推進する秘訣を紹介する。

優れたチームの共通項はダイバーシティ

ソフトウェアエンジニア(SE)としてキャリアをスタートさせた私は、アトラシアンが提供している企業向けWikiのクラウド版「Confluence Cloud」のプロダクトマネージャーに着任するまで、さまざまなチームで働いてきた。それらのチームのすべてがすばらしく、かつ、ある点で共通していた。それは、人材のダイバーシティ(多様性)が確保されていたことだ。どのチームのメンバーも、他のメンバーとは異なる人生経験と視点を有していたのである。

それゆえに、ダイバーシティは私にとって、あって当たり前の職場環境で、ダイバーシティをどう推進すればよいかも理解していた。そんな私が、自分のチームを持ったときに、ダイバーシティを優先させたのも自然な成り行きだったと言える。

私が、シニアプロダクトマネージャーとしてセールスフォースに入社したのは2008年のことである。当時の同社はまさに爆発的成長をするところで、3~4名程度の少人数でスタートを切った私のチームも、瞬く間に20名を超える大所帯へと拡大した。

そして現在、私はセールスフォースにいたころと同じような状況の中で、アトラシアンで働いている。招き入れられたときの状況もセールスフォースに入社した当時とよく似ている。また、入社直後に自らが採用したスタッフが、現在のチームの中心メンバーである点も、セールスフォース時代と同じである。

先月、ポッドキャスト「Seeking Wisdom」に出演し、ホストのマギー・クロウレイ(Maggie Crowley)氏と意見を交わす機会を得た。話のテーマは、いかにして労働力の多様性を維持してきたのか、というものだ。そのとき、私は自分が用いてきた4つの戦略的な手法を披露した。それらは非常に有効で、今日のすばらしいチームを形成するうえでも大いに役立っている。ということで、以下に、その4つの手法を紹介したい。

1. 求人情報の中立性を保つ

ダイバーシティの文化のまったくない職場で、ダイバーシティを即座に確立できることは稀である。大抵の場合、会社の文化を変えるという、とても時間のかかるプロセスとともにダイバーシティが確立されていく。

ただし、今すぐ始められる効果的な取り組みが一つある。それは、自社の求人情報に中立性が確保されているかどうかを点検し、必要に応じて修正を施すことである。

おそらく、どの会社のチームーダーも、性別や性的指向、あるいは人種によって特定の応募者を除外するようなジョブディスクリプション(職務記述書:募集するポジションの職務内容を詳しく説明した文書)を書こうとは思わないはずである。ところが、人間というのはなかなか複雑な生きモノで、無意識のうちに自分とは異なる人間に対して偏見を持ったり、排除したりしようする意識が働き、それが言葉づかいとなって現れてしまうことがある。

実際、そのことを証明する研究結果がある。それは、2011年にウォータールー大学とデューク大学の科学者グループが発表したものだ。

この研究は、男性優位の業界と女性優位の業界の双方に調査をかけ、それぞれの人材募集の言葉使いに、どのような違いがあるかを分析する試みである。その結果、ソフトウェアエンジニアリングなど、男性優位とされる業界においては、人材募集の文面に「competitive(競争力がある)」「dominate(支配する)」といったワードが多用される傾向が認められたという。

言うまでもなく、こうした言葉は、特定の人を遠ざけてしまいかねないものだ。ダイバーシティを志向するならば、人材募集の文面に使うべきワードではない。そのため、アトラシアンでは、人材募集やジョブディスクリプションの文面にこのような不適切で偏りのあるワードが使われるのを避けるべく、ワード選択の正しさを分析するソフトウェア「Textio」を用いている。これによって文章から偏りをなくし、特定の募集者に疎外感を与えないような文章作りを心がけている。

2. ダイバーシティでダイバーシティを呼び込む

人材の多様性を、身を以て証明できるリーダーがいる組織は、多様な人材を惹きつける力が強くなる。例えば、私はかつて、セールスフォースにおける数少ない女性のマネージャーだった。それゆえに、チームのメンバーには自然と女性が多く集まり、他のプロダクトチームよりも女性比率が圧倒的に高まった。

このようにダイバーシティがダイバーシティを呼び込むことは、調査によっても証明されている。例えば、グラスドア(Glassdoor)社の調査によると、3人に2人の求職者が、人材のダイバーシティを職場選択の重要なポイントにしている。

ヒトは誰でも、他者とは違う個性を持っており、その個性のせいで、組織に溶け込めないのではないか、あるいは、評価・昇格に関して不当な扱いを受けるのでないかという不安を抱く。それゆえに、多くの人は、評価・昇格に関して不条理な壁のない組織で働きたいと願い、個性的で優れた人材がダイバーシティ重視の企業へと流れていくのである。

仮に、あらゆるヒトの求人応募を歓迎する姿勢をすぐにでもアピールしたい場合には、面接に対応するスタッフを多様な人材に対して行うのも一手である。この方法は、有色人種のスタッフや女性スタッフが抱きがちな疎外感─例えば、「自分がチームに馴染めていると感じられない」といった疎外感を払拭するのに役に立つものである。

3. コグニティブダイバーシティの確保も忘れずに

人口統計学的な見地に立ったダイバーシティ─すなわち、性別、性的指向、人種、年齢、身体的能力に基づくダイバーシティが、優れたチーム作りに有効であることは、すでに確立された理論と言える。

ただし、ダイバーシティにはもう一つの側面がある。それは「コグニティブダイバーシティ(認知的多様性)」である。これは、物事の見方や考え方が異なる人材をバランス良く集めて、チームを組織することを意味している。

こうした思考の違いは、キャリアや生い立ち、人生経験、ヒトとしての個性、長所、短所といった要素の違いによってもたらされるものである。そして、このコグニティブダイバーシティを採用する際には、アトラシアンの製品担当副社長、ジョフ(Joff)が作成したチャートが役に立つ(下図参照)。

画像: 図:コグニティブダイバーシティのチャート

図:コグニティブダイバーシティのチャート

このチャートは、私たちの全員が「ゼネラルマネージャー(GM)」「アーティスト」「サイエンティスト」としての資質を持っていることを前提にしている。ジョフによれば、完璧なプロダクトマネージャー(PM)は、GMとアーチスト、サイエンティストの資質を完璧なバランスで持っているので、上記の三角形の中央に位置づけられるという。

もっとも、“完璧なPM”は世の中のどこにも存在しない(はずである)。すべてのPMは、それぞれが生来持つ資質と、経験で培ってきたスキルを頼りに、自分に課せられた役割をもがきながらこなしている。おそらく、上記3つの資質のどれかが十分であっても、どれかが足りず、3つを完璧なバランスで持っていることはまずありえない。

そこで重要になるのが、コグニティブダイバーシティを採用して、チームとしての資質のバランスを完璧に近いかたちで整える努力を払うことである。要するに、リーダーも含めたチームメイト同士で互いに足りない部分を補完し合うというわけである。

以前、特定のスキルを持った人材の募集に応募が集中してしまい、すばらしいスキルを持った候補者たちを、何人も落とさなければならない事態に陥った。このとき、人材選考に向けた資質の分析に相応の苦労を強いられたことをよく覚えている。

とはいえ、人材を雇用するときに最も重視すべきは、その人材がどのようなスキルや資格を持っているかではなく、自分のチームにフィットするかどうか、チームの足りない部分を補ってくれるかどうかである。優秀な人材を、優秀だと分かっていながら採用しないというのは簡単なことではない。ただし、傑出した実績や資格と同じぐらい、自分のチームにフィットするかどうかが重要なのである。

4. チームメイトに自分らしい自分でいてもらう

いったん、自分のチームを組織したならば、それを維持することが大切である。アトラシアンでは、従業員のコミュニティ(共同体)意識を育む一つの方法として、一人ひとりに自然体で働いてもらうこと、つまりは、日々の仕事の中で、ありのままの自分でいてもらうことを推奨している。

私たちは今、人生の多くの時間を仕事に費やしている。だらこそ、すべてのチームメイトに、チームへの帰属意識を維持してもらい、仕事の場を、自分の居場所であると感じてもらうことが大切なのである。

アトラシアンでは、「オープンワーク」の理念を掲げ、推進している。社内の「Confluence」のページには従業員の誰もがアクセスでき、法的に秘匿にすべき情報以外はすべてが開示される。新人もすぐに社内のConfluenceに招かれ、入社後最初の1〜2週間、自己紹介を兼ねたブログを投稿して、同僚たちが新しいチームメイトのことを知るきっかけを作る。

もちろん、新人だけではなく、他のすべての従業員たちも、Confluenceに対してブログを投稿し続けることを推奨されている。そうした投稿の数年来の傾向を見ると、トランスジェンダーに関する話題をはじめ、がんの闘病記録といった個人的な深い話題も多く投稿されている。こうしたオープンな情報共有によって、互いに支え合い、互いに祝う文化が醸成されていくのである。

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