アトラシアンには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

“脱”官僚制を急ぐ

私たちは、「Industry 4.0(第4次産業革命)」のただなかにある。企業は多種多様な業界のトレンドに影響を受け、日ごとにデジタル化の渦に巻き込まれつつある。このような時代では、組織のあり方を再設計し、世の中の変化に即応できる能力を身につけなければならず、そうすることの重要性はますます高まっている。

こうした流れに対応する唯一の、そして最も効果的な手法と言えるのが、従業員の働き方を抜本的に見直し、新しい考え方に基づいた仕事を始めさせることだ。そのためにも、組織は働く人とそのプラクティス、そして、チームの共同作業を実現するツールにフォーカスを当てる必要がある。また、組織の働き方を変えようとする際には、それが「効率的かどうか」ではなく、目標を達成するうえで「有効かどうか」に視点を置くことが大切だ。

ご承知のとおり、企業はとかく“官僚的”になりがちである。ただし、官僚型の組織が有効に機能していたのは、市場への参入障壁が高く、一つのビジネスモデルで一定の地位が確保できていたような時代、あるいは、スローなFAXを使い続けなければならなかったような古き時代の話だ。今日では、市場参入の障壁は極めて低く、プロダクトやビジネスモデルのライフサイクルは短い。企業の目前には新手の競合製品、サービス、競争相手が次から次へと現れる。ゆえに官僚的な思考や制度をすべて捨て去り、組織の俊敏性や変化への適応力を高めていかなければならないのである。

人とチームのフラットなネットワークを築く

企業が変化への即応力や適応力を手にするうえで不可欠なことは、官僚的な階層型の組織構造を打ち壊し、上司と部下の関係のないフラットなチームネットワークを形成することである。また、個々のチームの“サイロ化”を回避して、一つの目標に向けてすべてのチームの力が結集できるようにすることも大切だ。

このように考えるのは、筆者だけではないらしく、すでに多くの企業の経営陣が、伝統的な組織モデルに限界を感じ始めているようだ。コンサルティングファームであるデロイト社の調査によれば、米国の経営層のうち、伝統的な組織モデルが有効と考える向きは全体の14%にすぎないという。

「チーム オブ チーム」の組織モデル

おそらく、あなたの会社にも、組織/人の上下関係を示すチャートがあるはずである。ただし、それを眺めて組織のヒエラルキーを把握したところで、これからのビジネスには、何の役にも立たない。今後は、そうした組織のマップを、より柔軟で有効な「チーム中心型モデル」の開発に役立てるべきである。

アトラシアンでは、自分たちの会社を、複数のチームから成る一つのチームとしてとらえている。そして、アトラシアンというチームを形づくっているメンバー(チーム)たちが、会社の目標に従って絶えず変化し、また新しく組織されたりしている。

この組織モデル──つまりは、「チーム オブ チーム」の組織モデルを採用することで、チーム間の知見やプラクティスの共有化が進み、チーム間のつながりはより密接になり、コラボレーションの有効性が増す。また、各チームの透明性を高めて、互いの目標や状況、能力を相互に把握することで、プロジェクトごと、あるいは必要に応じてチーム横断型のチームを即座に組織できるようになり、組織全体として変化への即応力や適応力を増すことが可能になるのである。

このような組織モデルを採用するのは、官僚的な階層モデルに慣れ親しんできた大企業にとっては簡単なことではない。だが、変化への即応力を得るために「チーム オブ チーム」モデルを採用し、実践に乗り出している大手企業もある。一例が、オーストラリア最大の銀行であり、歴史も古いANZ Bank社だ。この銀行では、「Jira」や「Confluence」といったアトラシアンのツールを使いながら、フラットな組織作りに力を注ぎ、5万人の従業員の働き方や考え方を根本的に変革する取り組みを推進している。

チーム中心型における責任の所在

「チーム オブ チーム」の組織モデルは、責任の所在が不明確になるというリスクを内包している。そのリスクを回避する方法の一つは、チームのオープン性と透明性を高めて、個人とチームのゴールを組織全体で共有する文化を作り上げることである。

いくつかの企業では、その実現に向けて、チームにおける顧客獲得や顧客満足度、従業員の採用・定着といった重要な指標の進捗度を、ダッシュボードを通じ、組織全体でリアルタイムに共有する取り組みを推進している。

また、アトラシアンでは、チームや部門の目標設定のために「OKR(Objectives & Key Results :目標と成果)」モデルを採用している。ここでは、すべての部門とチームが、全社目標を達成するために、それぞれどのようなゴールを設定するかが重視される。
アトラシアンが、OKRモデルを採用してから何年か経過しているが、今のところ相応の成果が得られていると言っていい。運用の方法としては、各部門・各チームが、アトラシアンのConfluenceを用いながら、掲げた目標の達成度を月間サイクルで可視化して全社的に共有するというものである。

OKRモデルは、チームがフォーカスすべきポイントを明確にし、活動の効果を高いレベルで維持するうえでも有効だ。例えば、チームの仕事の進捗は、「生産物」ではなく、「成果」によって計測されるべきだが、OKRモデルを採用することで、その点を明確にすることができるのである。

チームの仕事は、ビジネス上の目標、あるいは成果に結びつけられない限り、意味を成さない。たとえ、多忙の中で多くを生産したとしても、それによって得られるモノ──例えば、市場に対するインパクトや顧客の成功など──が何もなければ、単にチームの「頑張り」を社内に示すだけで終わるのである。

世界は自動化へと向かう

それほど遠くない将来、AI(人工知能)とロボットが、私たちから多くの仕事を奪う可能性があるという。とはいえ、パニックに陥る必要はない。AIやロボットたちが人から奪う仕事の大多数は、私たちが古くから「機械的」と呼んできた作業にすぎないからだ。これを言い換えれば、AIやロボットたちは、「必要だが非生産的な仕事」を、私たちの代りにしてくれる実にありがたい存在なのである。彼らの働きによって、私たち人間は、より複雑で興味深い仕事に多くの時間を割けるようになる。結果として、チームのメンバーの増強なしに、仕事の効果を高めることが可能になるかもしれない。

もちろん、AIやロボットによる自動化の仕組みを導入したのちには、自動化によってもたされた時間的なゆとりを、人にしかできない価値創出のために有効に活用することが強く求められる。例えば、何らかのビジネスプランを策定するにしても、顧客に最も近い場所で働くチームメンバーのアイデアや洞察を取り込みながら、より深い戦略的な思考を元に、独創的なプランを創造することが必要とされるはずである。仮に、それができなければ、人がビジネスプラン策定にかかわる意味はなくなり、AIにすべてを委ねれば事足りてしまうようになるはずである。

このような時代の到来に備えて、チームの健全性を維持するための取り組みや投資に力を注ぐことを、チームリーダーの方々にはお勧めしたい。というのも、チームが健全に機能していなければ、進化したAIやロボットを超える発想や仕事をチームに期待できなくなる恐れがあるからである。そのような事態を回避するためにも、チームリーダーは、自分のチームとどのように働いているかを常に見つめ直し、そこに問題があれば変革の方針を描き、実行して、チームの健全性を高いレベルで保つことが大切である。

未来への備えを今すぐ整える

今日では、ビジネス上の意思決定の多くが、現場により近いところで行われようとしている。これは、米国企業に限って見られる変化かもしれないが、驚くべきことと言えるだろう。従来は、多くの企業でトップダウン型の意思決定、あるいは中央集権主義を「是」としてきた。ところが最近になって、ビジネス上の意思決定を各チームに委ねようとするところが増え始めているのである。

こうした権限委譲を推進するうえでは、チームや個々人の目標を、上層部を含む組織全体で共有化することが大切だ。また、組織の上層部やチームリーダーは、部下たちに「物事の進め方」を教えるよりも、「何をすべきか」を教え、その成果によって、自分たちに驚きを与えるよう指導することが大切である。また仮に、チームがサイロ状態にあるならば、その壁を打ち壊して、チームの透明性を高めることが肝心だ。また、それができれば、意思決定の権限が現場にあっても何も問題は起こらなくなる。

ビジネスにおける課題解決にあたるのは、最終的には、その問題発生の現場から最も近いところにいるチームや個人であり、その彼らに意思決定を委ねることは、ビジネススピードを高めるうえで理にかなった方法と言える。だからこそ、「チーム オブ チーム」の組織モデルを取り入れて、組織階層のあらゆるレベルで必要な意思決定が下せるようにしておくことが大切である。

変化の時代に対応するための組織改革の動きは、すでに多くの企業の間で活発化している。その流れに乗り遅れないためにも、未来への備えを今すぐ整えることが重要ではないだろうか。

This article is a sponsored article by
''.