『できるリーダーは部下のうつに立ち向かう』

著者   :亀田高志
出版社  :日経BP社
出版年月日:2013/6/20

画像: 【BOOKレビュー】チームの強化に役立ちそうな本──勝手にレビュー #006 『できるリーダーは部下のうつに立ち向かう』

ストーリー仕立てで読みやすい構成

うつ病に代表されるメンタルヘルス疾患が問題になっている。メンタルヘルス疾患には多くの誤解があるうえ、そもそも未解明な部分も多い。長期化しがちだし、再発性も高い。そのため、ビジネスの継続において大きなリスクとなっている。

メンタルヘルスの問題は、人を管理する立場にあれば避けて通れない。部下の不調に気付いたら、すぐに対処する必要がある。早期に対処すれば疾病が長期化するリスクを減らせるのは他の病気と同じだ。もちろん、自分自身が罹患する可能性も十分ある。

自分自身のメンタルヘルス疾患にはなかなか気付かないことも多いが、「何かおかしいな」と思った時に、産業医と相談したり、精神科にかかったりすることは恥ずかしいことではない。本書のタイトルには「できるリーダーは」とあるが、リーダー以外にも当てはまる。

本書は、メンタルヘルス疾患を25の架空事例として紹介するというストーリー仕立てで構成されている。各ストーリーは、最も重要な役割を持つ立場によって、次の5つに分類されている(カッコ内は章タイトル)。

  1. 産業医(産業医との連携)
  2. 人事担当者(人事担当者との連携プレー)
  3. 直属上司(不調の部下と向き合う)
  4. 家族(部下の家族との協力)
  5. 経営幹部(経営幹部に知らせよう)

どのメンタルヘルス疾患にもあらゆる立場の人が積極的に関わる必要があるため、分類自体にはそれほど大きな意味はない。また、同僚のサポートが必要なことも言うまでもないだろう。章立てにはないが、本文では同僚の役割についても言及されている。

実用的なマネジメントが示されている

取り上げている疾病事例は、近年話題の「新型うつ」に始まり、適応障害、統合失調症、アルコール依存症、摂食障害など多岐に渡る。実際には病気ではない「詐病」まで取り上げられているのも興味深い。

ストーリーの導入部は、いかにもありそうな話なので参考になる。本書で取り上げるすべての疾病がどの会社にも日常的に起きているわけではないが、1つや2つは思い当たるところがあるのではないだろうか。

本書で最も重要なパートは「まえがき」である。ここにメンタルな問題に対応する重要性や、基本的な考え方が集約されている。特に、以下の5つのキーワードは非常に重要である。本文では説明なしに使用されているので注意してほしい(ここで「社員」ではなく「部下」となっているのは、本書がリーダーを対象としているため)。

  • 事例性-職場サイドで発生する具体的な問題
  • 疾病性-メンタルヘルス疾患の正式な病名
  • 作業関連性-部下の不調の原因が職場にあるかどうか
  • 個人的事情-不調の部下のプライベートな事情
  • 落としどころ-不調の部下のリスクと職場の損失が許容範囲に収まること

メンタルヘルス疾患は治療に時間を要することが多い。「事例性」と「疾病性」を分けることで、治療効果が現れるまでの当面の対策を立てやすいだろう。実用的なマネジメントが示されていると言える。

すぐに反省する上司にリアリティはない

どのストーリーも導入部はよくできているが、残念ながら結末の解決策にはリアリティに欠ける部分が多い。人事部が適切な対応をとっていたり、家族の理解が簡単に得られたりする。あるいは、上司や同僚に理解があり過ぎる。さらには、メンタルヘルス疾患のきっかけとなった人(多くは上司)が、素直に反省している。

現実には、メンタルヘルス疾患に無理解な人事担当者はたくさんいるし、家族の協力が得られないことも多いだろう。本書では家族がストレスの原因になっている事例も登場しているが、素直に反省しており、これもリアリティがないと言えるかもしれない。

上司がすぐに反省することも実際はあまりないだろう。パワーハラスメントとストレッチ目標(成長を促すために少し難しく設定した課題)を混同している上司は多い。そもそもパワハラが日常化している職場では、同僚もそれが異常であることに気づかない。

危うい表現もあるが、内容は有益

ストーリーに登場する人物がステレオタイプであることも気になった。文学作品ではないのだから、人物像を単純化すること自体は問題ないのだが、労務管理上無視できない問題も含まれる。

若手の従業員を示す際に「ゆとり世代」という言葉が多用されていたり、「就職するまで『バカヤロー』と叱られたことのない若手もいる」という記述があり、こうした「ラベリング」や上司の暴言を許容するような表現が気になった。

さらに、うつ病の例では、「(同僚の)男性社員」という言葉が多用されているが、このストーリーに男女は関係ない。会話の中の言葉だとしても「他の男性社員」ではなく「他の社員」「同僚」で十分だろう。「男性」と書いてあることで、性別による差異があるのかと何度か読み返してしまった。

5年ほど前の出版であるためか、今読むと危うい表現も多いが、25のストーリー自体はリアルで役に立つ。メンタルヘルス疾患は簡単に解決するものではないし、解決には個人的な事情や会社固有の状況が大きく影響する。1冊のビジネス書にメンタルヘルス疾患の解決策のリアリティまで求めるのは現実的ではないので、本書の結末は一種の理想論として読むべきだろう。

理想がなければそれに近付くこともできない。本書の結末は、目指すべき目標として考えれば、参考になる。「こんなに簡単に解決するのか」と誤解さえしなければ、本書は有益と言える。部下を持つ管理職や、プロジェクトリーダーはもちろん、一般社員にも一読の価値はあるだろう。


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