日本の企業で働く「部下」たちの4割近くに「ダメ出し」を受けた日本の「上司」たち(本稿前編を参照)。その上司たちは、直属の部下をどう見ているのか。ITmediaビジネスオンラインの協力の下、アトラシアンは日本の上司たちに部下に対するホンネを直撃した。結果をご覧いただきたい。

チームのパフォーマンスに「不満」が4人に1人

ここに示す調査データは、本稿「前編」と同じく、ITmediaビジネスオンラインの協力の下、アトラシアン株式会社が実施したアンケート調査の結果である。調査は、2018年6月にオンラインアンケート形式で実施。ホンネを示してもらう目的で匿名制を敷いた。

前編では、本調査の結果として、日本の企業で働く部下たちが、直属の上司をどう評価しているかを示した。結果は全体の4割近い37.7%が上司に「不満(大いに不満、不満)」というもの。ならば、そんな上司たちは部下たちのパフォーマンスをどう評価しているのだろうか──。後編の今回は、その点を明らかにする。アンケートの有効回答者数は391名。前回と同様に、これらの回答者の基本属性については稿末の「参考:本アンケート回答者の基本属性」を参照いただくとして、気になる結果から見ていくことにしたい。

まずは、自分の率いるチームのパフォーマンスに対する満足度だ。上司391人の回答結果は下図のとおりである。

画像: チームのパフォーマンスに「不満」が4人に1人

ご覧のとおり、「満足(満足、大いに満足)」と「不満(満足、大いに満足)」がやや上回っているものの、日本の上司のおよそ4人に1人が、率いるチームのパフォーマンスに「不満」を感じていることが判明した。

この結果を単純化して言えば、日本のチームの4分の1は「普通より下」のパフォーマンスしか揮できていないと見なすこともできる。つまり、会社が4つのチームから構成されているとすれば、うち1つは「普通より下」のパフォーマンスで、残りの3チームのうち2つが「普通」のパフォーマンス、あとの1つが「普通より上」のパフォーマンスというのが日本の企業の平均的な姿ということになる。

そして、全体を平均するとパフォーマンスは「普通」。このように考えていくと、「それで本当にいいのだろうか」「そんなことで、厳しさを増す国際競争を勝ち抜けるのだろうか」という疑問が湧き上がってくるはずである。

上司の不満のありどころ

では、率いるチームのパフォーマンスに不満を抱く上司たちは、自分のチームについて、どういった点を「問題あり」と見ているのだろうか。

それを示すアンケート結果が図2である。

画像1: 上司の不満のありどころ

見てのとおり、「仕事に対する熱意・責任感の欠如」「ミッション、役割、ゴールに対する理解の浅さ」「行動に対する自律性の不足」の3点が、部下たちに不満に感じる大きなポイントのようだ。実のところ、これらの3点は、率いるチームに不満を抱いていない上司たちも、チームの大きな課題として指摘しているものでもある(図3)。

画像2: 上司の不満のありどころ

ここで注目すべきは、上司たちが、「自分のミッション、役割、ゴールに対する深い理解」を部下たちに求めている点だ。というのも、(本稿の前編で示したとおり)部下たちが上司に最も強く求めていることも「自分たちのミッション、役割、ゴールを明確に示してくれること」だったからである。

要するに、多くの部下たちが「自分の上司はミッションや役割、ゴールを明確に示してくれない」と嘆き、一方で、多くの上司たちは「ミッションや役割、ゴールに対する部下の理解が浅い」と嘆いているわけである。

果たして、これはどちらの問題なのだろうか。上司が、きちんとミッションや役割、ゴールを示しているにもかかわらず、部下たちが理解できずにいるのだろうか。それとも、ミッションや役割、ゴールを示しているというのは、上司の単なる思い込みにすぎないのだろうか。

いずれにせよ、このような結果は、上司と部下との意思疎通があまりうまくいっていないことの表れととらえることもできる。仮に、ミッションや役割、ゴールに対する部下たちの理解が浅いと考えるならば、部下に対して、改めてそれを説明する必要があり、また、自分のミッションや役割、ゴールが不明確と考える部下は、上司に積極的に説明を請う必要があるのではないだろうか。それをお互いが望んでいるのである。

若手社員と団塊ジュニアの関係は良好?

ところで、本稿の前編で団塊ジュニアに当たる40代上司は、部下から評価される比率が高いことを明らかにした。今回は、上司が満足感を感じる部下がどの年代なのかをチェックしてみた。結果は図4に示すとおりで、やはり、20代~30代前半の部員が多くを占めるチームが、上司の満足感を高める傾向にあることがわかる。

画像1: 若手社員と団塊ジュニアの関係は良好?

こうなると気になるのが、20代から30代前半の若手の部下たちが、上司に対して満足しているのかどうかである。それを調べた結果が、図5である。

画像2: 若手社員と団塊ジュニアの関係は良好?

この図が示すとおり、若手の部下たちの多くは上司に対して満足感を示している。背景には、彼らの上司の半数近くが、部下からの評価の高い団塊ジュニア世代──つまりは、40代上司であるという要因がある。実際、40代上司を持つ若手の部下たちは、60%強が上司について「満足」「大いに満足」と回答したのである。

以上の結果を総合すると、40代上司と若手部下(20代~30代前半)は比較的良好な関係を築いていると言えるかもしれない。

根強く見られる「最近の若いヤツらは…」の伝統

もっとも、日本の社会には、昭和の時代、あるいはもっと古くから、「最近の若いヤツらはなっとらん」という年配者の声があった。これはある意味で日本社会の伝統と言える。

そもそも、世代が変われば価値観が変化するのは当然で、とりわけ、今日のように変化の激しい時代では10年の世代ギャップがあれば、下の世代の考え方や価値観がほぼ理解できなくなる可能性が高い。結果として、古くからある「最近の若いヤツらは、うんぬん」というネガティブな判定を下しがちになる。

今回、そのことを確認する目的もあり、391人の上司たちに次のような設問を投じた。

「会社の次代を担う若手社員(20代~30代前半)について、どう評価していますか?」

結果は図6に示すとおりである。

画像1: 根強く見られる「最近の若いヤツらは…」の伝統

この図は、若手の部下に対する評価の上位10項目を示したものだが、ご覧のとおり、現代の上司たちも、若手たちを見る目はとても厳しい。

上司たちから見て、20代~30代前半の“今どきの若手”は、言われたことしかできず、出世欲・向上心に欠け、責任感も不足気味で、そのうえ、打たれ弱い、と映っているようだ。なかでも、下記の2点を批判する声の多さが目立つ。

・「言われたことしかできない傾向が総じて強い」
・「キャリアアップやスキルアップに対するどん欲さが総じて足りていない」

これらの批判については、当然のことなら、その逆の評価である「自律的に動ける能力が総じて高い」「キャリアアップ/スキルアップに対する意欲が総じて旺盛」との回答数の差がきわめて大きかった(図7)。

また、批判と肯定の回答数に極端な開きが見られたもう一つの評価軸は「打たれ強さ」である。図7を見ればわかるとおり、391人の上司たちのうち、70名が若手を「打たれ弱い」とする一方で、「打たれ強くて頼もしい」とした上司の数はわずかに6名のみだった。

画像2: 根強く見られる「最近の若いヤツらは…」の伝統

20代~30代前半の“今どきの若手”の中心を成すのは、いわゆる「ゆとり世代」や「さとり世代」。この世代は、自分の生活を大切にして、会社での立身出世に対して興味・関心が薄く、自分に対する批判に傷つきやすいと一般的に言われている。上記の結果は、それを裏付けるような内容となった。

それでも、「今どきの若手」のすべてがそうとは限らず、前出の図6に示すとおり、「仕事に対する意欲・責任感」「自律的に動ける能力」の高さを評価する声も決して少なくない。また、先に触れたとおり、20代~30代前半の部下で構成されたチームは、上司に満足感を与える可能性が高い組織でもある。

年配者が若手に「もの足りなさ」を感じるはいつの時代も同じだと考え、世代ごとの価値観の違いを理解しながら、若手の能力を最大限に活用する一手を考えることが大切ではないだろうか。

チームのパフォーマンスアップのために

上司たちにとって自分の率いるチームのパフォーマンを向上させることは大切であり、それができない上司は、上司としての存在理由がないとも言える。ならば、上司たちは、チームのパフォーマンス向上のために、何が必要だと考えているのだろうか。それを示す回答結果が図8である。

画像: チームのパフォーマンスアップのために

ご覧のとおり、圧倒的に多くの回答者が選んだのが、「部員の各人に、自分の役割、ミッション、ゴールをより深く理解させる」ということである。

繰り返すようだが、自分の役割、ミッション、ゴールを知ることは、部下たちも強く望んでいることである。この点に関する上司・部下の想いにすれ違いがないようにすることが、チームパフォーマンスを向上させるうえで、最も重要なことのようだ。

人は「社会の生きモノ」であり、自分が誰かに貢献している、あるいは、社会の中で役立っていると感じることで、幸福感を味わい、モチベーションを高めることができる。その意味で、会社やチームの中での自分の役割、ミッション、ゴール、責任が明確にわからなければ、働くことのモチベーションを維持することは難しいとも言える。

上の結果を見ると、日本の上司たちの多くが、すでにそれを認識し、部下たちの役割、ミッション、ゴールを明確にしようとしていることがわかる。この結果を見る限り、日本のチームのパフォーマンスがさらに向上する可能性は高いと言えるのではないだろうか。

参考:本アンケート回答者の基本属性(n=391)

画像1: 参考:本アンケート回答者の基本属性(n=391)
画像2: 参考:本アンケート回答者の基本属性(n=391)
画像3: 参考:本アンケート回答者の基本属性(n=391)
画像4: 参考:本アンケート回答者の基本属性(n=391)

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