アトラシアン ソフトウェアには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

年初目標──。達成度合いはどの程度?

あるときは、『仕事の効率化には、テレワークが有効ですよ』と勧められ、一方では、『ホワイトカラーの仕事は、早晩AI(人工知能)/ロボットに奪われる』などとメディアが騒ぎ立てる──。今日のワーカーが考えなければならない事柄は実に多岐にわたる。そんな中では、自分が追い求めるべきビジネス上のゴールが見えづらくなるのも当然だ。

それでも人は、年初に仕事上の個人目標を立てる。これは、万国共通、どこの国のビジネスパーソンにも共通した行いであろう(少なくとも、筆者の知りかぎりにおいては、どの国のビジネスパーソンもそうしている)。

たとえば1年の初めに、あるいは会社の年度初めに、過去1年間の自分を反省しつつ、『今年こそはこれをやろう』『あれを変えよう』と考える──。自己改革のチャンスは1年に1回なわけではないが、年の節目に自分の目標を定める慣習は決して悪いことではない。

そこで改めてお聞きしたい。あなたが年初に立てた目標はどの程度達成されているだろうか──。

おそらく読者諸氏の中には、『達成度合いは、あまり芳しくない』と感じておられる方が少なからずいるに違いない。仮に、そう感じているならならば、すぐに下記の5つの取り組みにフォーカスすることをお勧めする。

取り組み① 目標を定量化し、絞り込む

トレーニングジムに定期的に通っている方は、大抵の場合、血圧をどの程度まで下げる、あるいは、体重を何Kg減量するといった目標を立てているはずである。

ところが、年初に立てるビジネス上の個人目標は、多くの場合、定量化されていない。率直に言えば、ビジネス上の個人目標が定量化できない人は、目標を定めること自体に意味はないと考えたほうがいい。

例えば、マーケティングを担当している方の中には、年初に「今年1年、去年以上に多くのセールスリードを獲得し、会社の売上げに貢献するんだ」と、神様の前で誓う人がいるかもしれない。神様は寛容なので、それで許してくれるだろうが、実際のビジネスの世界では、そのような目標設定に意味はない。

ビジネスの世界で本来的に立てるべきゴールは、例えば、「クリエイティブキャンペーンを通じて収益を20%増やす」「6つの主要市場で広告キャンペーンを実行する」といった類のものである。そうした定量的な目標を定めたうえで、自分が果たすべきことに優先順位をつけ、最優先で達成すべき事柄に力を注ぐ──。そうすることが、目標の達成には不可欠な作業と言える。人ができることには限界がある。目標を適切に絞り込み、定量化し、その達成に力を傾けることが大切である。

取り組み② 四半期ごとに自分を顧みる

今日の企業は、四半期ごとに活動の成果が問われている。四半期ごとの収益はどうだったのか、その背後で何を行ってきたのかがステークホルダーから常に追求されるというわけだ。

この状況は、決していいことだとは思えない。ただし、個々のビジネスパーソンにとっては、四半期ごとに自分の行いを振り返り、どこがよくて、どこが悪かったかを反省する意義は決して小さくない。例えば、4半期の節目ごとに、自分が何を目指し、何に取り組んできたのか、さらには、その行いが、どのような結果につながったのかを、メモとして明文化する。それだけで、これからの自分がどうあるべきかが見えてくるのである。

取り組み③ スケジュールをリセットする

この行為は、新しい目標に突き進もうとした際に有効な手法だ。

仮に、あなたの目標がこれまでの仕事を滞りなくこなすことだけであれば、スケジュール(カレンダー)をすべてリセットしてしまうのは愚かしい行為だ。だが、新しいゴールに突き進むうえでは、自分の目標達成に向けて、自分の時間をどう使うのが適切なのかを「まっさら」な状態から考えることが大切である。そのためには、スケジュール(カレンダー)をいったんリセットし、改めて予定を埋めていくことが有効である。

また、自身の仕事に対する新しい視点、新しいアイデアを得たいと思うのであれば、仕事に対する自分の業務のあり方をリセットし、いったん、その業務フローから身を引くというのも一手である。こうすることで、客観的、かつ俯瞰的な視点で自分の仕事がとらえられるようになり、改革・改善の新しいアイデアが得られる可能性が高まる。

取り組み④ 成すべきことだけをする

目標を達成するうえでは、そのために何が必要で、何が不要かを明確にすることも大切だ。

実際、パフォーマンスが高い人、あるいは高いチームは、必ずそれができている。要するに、自分たちの目標から逆算して、今、すべきことの優先順位を決め、それに基づいて常に合理的な判断を下しているわけだ。例えば、目標の達成には、何が最も重要で、その理由とは何なのかを明らかにする。そして、単なる気晴らしとも言えるような「仕事のための仕事」から一切手を引いてしまう。それが大切である。

取り組み⑤ あなたに活力をもたらす人間関係に投資する

私たちの生活の中には、自分を奮い立たせてくれたり、いやしてくれたり、喜ばせてくれたりする人たちが存在する。仕事上の付き合いで言えば、自分のアイデアや失敗を、気兼ねなく話せて、意見が交換できる人たちが、それに当たる。

そうした人たちとの関係の維持・構築に、より多くのエネルギーを注ぎ込むこと、逆に、それ以外の人間関係の維持にあまり時間を取られないようにすること──。それが、目標を達成するためにも、自身の精神状態を健全に保つうえでも大切だ。

ビジネス上のゴールを目指すのは、スプリントではなく、マラソンである。失敗したと思ったことは、何度でもやり直せばいい。適切なペース配分を考えながら、ゴールに向かって走り続けることが肝心である。

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