アトラシアン ソフトウェアには、働き方改革のエキスパートが多くいる。その一人が、ワーク フューチャリストのドム・プライス(Dom Price)だ。彼は企業組織のリーダーに向けて、変革のためのメッセージをコラム形式で発信し続けている。この連載では、そのエッセンスをお伝えしていく。

組織改革を人任せにしない

「組織のパフォーマンスが一向に上向かない」
「ダメな社員が多くて困る」
── 米国の企業経営者の間から、時折、こうした愚痴が漏れ聞こえてくる。

組織の現状にこうした不満を抱く米国企業の経営者が犯しやすい過ちがある。それは、課題解決に向けた企業文化の変革を、外部のコンサルタントに委ねてしまうことだ。これは、米国の経営者特有の傾向で、他国の経営者は、そのような過ちを犯さないかもしれない。

ただし、いずれにせよ、企業文化の変革は経営者が自ら遂行すべきものであることに変わりはない。そして、企業文化の変革に着手する前に、次に示す3つの質問を必ず自身に投じることが大切である。

自問① ダメな人材を雇ったのか、それとも育てたのか?

この質問は、人材採用の仕方が悪いのか、それとも人材の育て方が悪いのかを確認するためのものだ。要は、あなたの会社が、ダメダメ社員の生産工場か否かを問うものと言える。

仮に、採用の仕方が悪く、ダメな人材、あるいは会社の戦力とは成りえない人材を雇用してしまったのであれば、最善策はその人材に会社を辞めてもらうことだ。

これは決して愉快な仕事ではなく、すぐに決着がつくようなプロセスでもない。だが、人生は長い。ダメな人材として組織の中で冷遇され続けるよりも、新しい可能性にかけたほうが、その人が幸せになれるチャンスが広がる。

また、その人材は、たまたま、あなたの会社の組織・チームにフィットしなかっただけなのかもしれない。したがって、ダメな人材を誤って雇用してしまったと判断した場合には、その人材に、自社とは異なる道を歩ませるのが正解と言える。そして、ダメな人材に辞めてもらうのと並行して、採用のプロセスを見直し、二度と不幸な人を作らないように心掛けることが肝心である。

 一方、「ダメな人材を雇用した」のではなく、「あなたの会社が人材をダメにしていていた」とすればどうだろうか。その際には、当然、経営者である自分にこう問いかける必要がある。

『自分は、果たして、会社のリーダーとして正しく機能していたのか』──。

そのうえで、リーダーとしての自身の役割を適切に定義しなおし、ダメな人材にしてまった社員を、高い可能性を持った人材として再出発させなければならない。このとき、まずは、その人材と直接対話し、会社のどこを気に入っていて、どこが気に入らないのか、何を目指しているかを明確にしておくことが大切である。

また、社員からの一層の信頼を得たいと思うのであれば、彼らが求める変革を小さく始めてみるのも一策だ。これにより、あなたと組織のリーダーたちは、より大きな変革の絵を自由に描けるようになる。そして、社内の各所から、革新的な取り組みがさまざまに湧き上がるようになるかもしれない。

自問② 過去の結果にとらわれていないか

スポーツゲームのスコアと同じく、企業の文化がどうあるかは、行いの結果にすぎない。もし、あなたが現状の文化に不満を感じているとすれば、それは、「負けゲームのスコア」を嘆いているのと同じことだ。そうした時間の無駄使いは直ちにやめて、次戦に向けたトレーニングを始めるべきである。

企業の文化は、人材、人材の価値、人材の育成など、多岐にわたる要素によって構成される。例えば、アトラシアンは採用のプロセスにおいて、必ず、人材の価値(バリュー)に関するインタビューを徹底して行い、適切なバリューセットを持った人材を採用することに力を注いでいる。

そして、いったん採用を決めた人材については、そのバリューを最大限に引き出すために、すべてのメンバーが前向きに行動しながら、それぞれが互いに認め合い、高め合うサイクルを形成している。

優れた組織文化は、社員同士が継続的に影響し合い、学び合い、改善し合うサイクルによって醸成されていく。そのための弛まぬ努力が、組織文化を正しい方向へ導き、それが1つの結果へとつながっていく。過ぎ去ったゲームのスコアを嘆いたところで、何も起きないし、始まらないのである。

自問③「自分たちのゴールとは何か」と考えていないか?

企業文化の変革に取り組むとき、陥りやすい落とし穴は、明確なゴールを定めてしまうこと──別の言い方をすれば、自分たちの文化の最終形をデザインしてしまうことである。

企業文化の形成は開発プロジェクトではない。それには納期もなければ、フィニッシュラインも存在しない。それはある意味で、自身の筋肉を鍛えるのに似ている。そして、筋肉のように、日々の鍛練を怠れば、すぐに衰えていくのである。

経営者はよく、社内をぐるりと見渡して、自社の文化にかかわる課題が解決されたシグナルを見出そうとする。ただし、文化醸成の取り組みに終わりはなく、解決のシグナルを探そうとすることに意味はない。改革が進んでいるかどうかを確認したければ、社員たちが、自律的に意思決定を下したり、誰かが学んだ教訓を共有したりしているかどうかをチェックすればよい。仮に、そうしていれば、あなたの会社の組織文化は着実に改善の道筋にあると見なすことができる。

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